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第七話 リスティル視点 上

リスティルの過去話になります

 第13侯爵 フォーディン家それは、わたしが産まれて育った家だった。わたしは、父親であるロッカスと、上に2人の兄姉、ジェファス兄さんとベルグランデ姉さんがいた。


 家族仲は、今となって考えれば、少し不思議な関係だったと思う。父と兄は、わたしに無関心に近い優しい存在だったが、姉は違った。マナーから、人間関係の築き方、そして、剣や銃を、厳しく指導した。あんまりにも厳しくて、よく、母親が存命だったころには、母親に泣きついたものだった。母は、確かにわたしを慰めてはくれたが、姉にあまり何かを言うような感じはなかった。そんな中、姉は、上位の侯爵家との縁談が持たれた。


 家族全員で喜んだものだったが、なぜか、母が少し厳しい顔をしているのに、その時は、不思議に思ったものだった。


 そのわずか、3か月後、母が病気で倒れ、そのまま亡くなったと聞かされた。死因に不審な点はないとして、調査はすぐ打ち切られ、家族内で葬儀が行われた。見れない死にざまだったとして、棺は空だった。思えば、その葬儀の後から、全てがおかしくなった。


 父と兄は、夜会に参加する回数が増え、明らかに、家を避けているようだった。姉は、嫁ぎ先と上手くいかず、家に戻ってきて、家に引きこもっているらしいが、時折、見たこともないメイドや執事が、家の中にいるようになった。中には、わたしの顔を知らない人も混ざっていて、部屋を聞かれたときには多少呆れたものだった。


 ただ、それは、わたしの変化もあって仕方なかったのだと今ならばわかる。わたしは、そのころには、家から出るために、銃士見習いになっていて、ドレスよりも銃士服を着ていることが多かったからだ。銃士服を着ていると、わたしは少年のようにしか見えなくて、時々父親や兄にも、わたしと気が付いてもらえなくて苦労した。ただ、時々出会う、姉さんには、いつも何故か、気付いてもらえていた。


 その後、わたしは、順調に試験をパスして、下級銃士になれた。軍属となったため、家から出ることが決まり、部屋でいろいろな準備をしている時だった。


 ノックの音に、わたしは作業を中断した。どうぞと促すと、ドアから入ってきたのは、ベルグランデ姉さんだった。


「おめでとう、リスティル。銃士になれたんですってね。よく頑張ったわ」


「ありがとう、ベルグランデ姉さま」


 姉さまは、微笑んでいた。そして、わたしを抱きしめた。わたしは、困惑しながら、その行為を受け入れた。


「この家に何がおきても、助けようとか、戻ってこようとか思ってはダメよ。私のことも忘れなさい」


 いつもの姉さまからは、聞くことができないような、冷たくそれでいて、決意と覚悟が混ざった声だった。


「でも、もしあなたに危機が迫ったら、私が助けてあげる。あなたは、たった一人の妹なんですから」


 肩を掴まれ、ベルグランデ姉さんが、その、澄んだ蒼い瞳を、私に向ける。私は、頷くしかできなかった。

 その言葉の意味を知ることができたのは、本当にずっと後のことだった。その翌日私は家を出た。


 


 そして、その事態に巻き込まれることになったのは、私が、銃士として、家から出て、早3年近くが過ぎようとしていた。


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