第三話
「おーい、バンディーラ」
懐かしい声に、視線を向かわせると、そこには、四人の同類人影が見えた。
「あ、みんな!久しぶり!」
「もう、心配しましたわ。わかっていても心配はしています」
「ふん、いるとわかってたが、あまり、期待を裏切らないでくれ」
本当に久しぶりに見る顔だった。とはいっても、私たちの単位で言えば、つい昨日のような気持だが。
「うん?巡礼服?あなたたちはどこの旅団の人なの?」
こっちに気が付いたオリビアが、訝し気に近づいてくる。次はオリビアと自己紹介をするつもりだったから、ちょうどよかったけど。ふと周りを見ると、皆が興味深そうに、私たちを見つめていた。
「これらは、ロイエス旅団です。アンは、副隊長です。今回は、皆さんとのお近づきの印に、来ました」
その言葉にうん?っとオリビアは首をひねった。私は、聞きなれている言葉なので大して驚きもせずに、みんなに紹介する。
「私たちは、生まれが一緒なの。だから、みんな知り合いなのよね」
その言葉に、オリビアは納得いかないような表情を浮かべたが、次の言葉は飲み込んだようだった。
「で、さっきお近づきの印とか言っていたけど何か持ってきたの?」
「ええ、こちらを」
アンが、手招きすると、フレが大きなボトルともって現れた。中身はきっとあれかな?
「こちらが、今回のお印です。きっと、今日必要だと思って、持ってまいりました」
ああ、やっぱりと、私が、思っていると、背中につんつんとした感触を感じた。後ろにいたのは、フラとベルだった。しゃべるなという様に、唇に人差し指を当てている。その光景が存外に面白くて、私もまねをしていた。
「わかった。では、ありがたくいただくとしよう」
意外なことに、次に声を出したのはロアだった。ロアは、そのボトルを手に取ると、テーブルに置きなおした、不思議そうに首をかしげているけど、それは、そんなものだ。
「そういえば、一つ、足りないみたいだけど?足りない子は、どうしたの?」
私は、ふと気になって、聞いてみた。それを聞いたアンが、私をみて、微妙な顔を見せる。あ、これ聞いてはいけなかったかなと思ったが、
「あのね、バンディーラのこと待ってるけど、疲れて寝ちゃったの。寝る子は夢で逢えるって、そう言ってたから、このことは、バンディーラのつけね」
フラが、そういうと、微笑んだ。その微笑みを見て、少しホッとする。そう思い、ふとフラの顔に目をやると、口がわずかに動いている。『あとで覚えておけ』…ひぃ。
意外なところで、身の危険を感じてしまった。本当に口は災いの元だね。
その後、アンはロンディスや、オリビアと話をしていたけど、特に興味もなかったので、聞かなかった。短い滞在だったけど、4人は、簡単に挨拶をすると、そのまま帰っていった。
「何だったんだろうな?バンディーラ、同郷の人間として何か知らないのか?」
「同郷の意味が分からないけど、たぶん、ただ単なる顔見せじゃない?」
「顔見せ?ロイエス旅団は、あまりアクティブな旅団じゃないと聞いているが。」
うん、ラーングもロイエスも終わった旅団だから、大して活動的になる必要はないんだよね。まあ、そんなことは私にはあまり関係もないから、言わないけどね。
「うん、また近いうちに会えるよっていうことじゃないかな?知らないけど」
私はそういうと、再び、自己紹介と、食事の輪の中に帰っていった。後ろからロンディスが訝し気に見ているのは知っていたが、今の私には、これ以上、返す言葉もなかった。




