第二話
簡易な食事台の上には、たくさんの根菜と野菜のソテーが置かれて、その中央を彩る予定の、肉は、ロンディスと、ロアの手で捌かれ、焚火に燻されていた。
私も手伝いたかったが、完全にマリベルとオリビアの邪魔にしかならなかった。う~、ファラと一緒の時にはいろいろ作ったのに、料理の腕の見せ所がない!!と憤ったのを、リスティルが、銃士生活が長く、まともな料理が作れないから、教えてほしいと言ってきたので、さっそく、リスティルと、乾燥した薬草から、苦みと野趣あふれるソースの作り方をレクチャーしていた。
「できたよ!!」
「こっちも完成だ」
その二組に負けないように、私たちも、最期の追い込みを見せていた。
「ほら、ここで、焦げないように、吹かさないように、弱火でコトコトとして、」
「あ、バンディーラ様、ソースが重くなってきました」
それを聞いた私は、ソースの確認をする。香辛料の匂いとまろやかなコクが自慢だ。ただ、後味については、万人受けするとは言えない。それは、食べたリスティルの表情が全てを物語っていた。「おい…し…い。ような気がします」の言葉を吐きながら浮かべた表情は、忘れることができないかもしれない。結局みんなで食べて、好みでつけることにした。
「さて、今日は、パーティ結成を祝って宴をします。拍手~!」
私の声を合図にして、宴が始まった。中央に大きく切り分けられた焼かれた羊の肉が、盛り付けられ、周りにソテーされた根菜と、パンが食卓を彩っていた。拍手の音もまばらに宴が始まった。周りでは、さっそく自己紹介が始まっていた私も負けじと、リスティルに自己紹介をする。
「わたしね」
「バンディーラ様でしょう。私リスティルです」
一瞬で終わってしまう。まあ、残念。全く、付き合いが長くなると大変だね。言葉を交わすのもほんの少しでよくなってしまうから。
「あの、…私を、今日まで助けていただいてありがとうございます…マリベルが教えてくれたんですが…明日…私…」
リスティルが、言いにくそうに顔を伏せる。
「うん、さっき聞こえていたから知っているよ。お義姉さん、今大変なんだって?」
「ええ、本当は奴隷の身なのに…バンディーラ様に優しくしていただいて…これから、頑張っていきたかったのに…」
マリベルとの会話をまとめると、リスティルが、旅団として、聖域の街に出発した後に、リスティルの実家、フォーディン家の偽証とかがばれてしまって、よりによって、それを、リスティルのお姉さん、ベルグランデ・フィリア・フォーディンに擦り付けて、その両親と兄は、亡命をしてしまったらしい。そのため、リスティルのお姉さんは、国軍に捕らえられて、今は処刑を待つ身だと言われている。
もし、その罪の釈明するには、リスティルが、証言台に立つ必要があるが、その裁判に間に合うかどうかは微妙な線だった。
「本当は…バンディーラ様と聖都に向かいたいのです…でも、こんな…」
「うん、リスティルが、納得いくまで、私は応援しているから。大丈夫だよ。」
私は、リスティルの頭を撫でてあげる。リスティルは一瞬驚いたような表情を浮かべたが、それを受け入れてくれたようだ。
「きっと、必ず戻ってきます。ですが、明日の朝には皆に気付かれないように、出立するつもりです」
「うん。リスティルが、成し遂げることは私が保証するよ。でも、この話は私とマリベルだけにしてね」
「はい。バンディーラ様」
「様は、いらないわ、リスティル」
私たちは、自己紹介のメンバーを入れ替えようとしたその時だった。
「お、やってるやってる!おーい、バンディーラ…」




