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第一話

聖都のお話 


 やがて、聖王は彼方に魔族を追いやった。しかし、聖王の身体はボロボロで、すでに聖杯の癒しも届かなくなりつつあった。止む負えず、聖王は与えられた聖都にて、体を休めることにした。


 いつか帰ってくるかもしれない魔族への対抗をとして、聖杯の聖女とともに眠りにつくことにした。


 御旗の導きのままに。


 いつか、聖王は目覚めて、この地上に帰ってくるそう信じられています。

 せっかく、パーティメンバーがそろったけど、みんな今日一日いろんなことがありすぎて、少し疲れているようだった。「うん、こんな時は、パーティ結成の宴会しよう。」と提案したとき、みんなから、残念なものを見るような視線を集めてしまったのは内緒だ。


「でも、一理はあるわ」


 オリビアの声がなければ、私は残念な子扱いされて、みんなでバラバラに泊まることになってしまっただろうが、今日のところは、部屋を分けて、拠点に泊まることにした。ただ、その前に、お互いの自己紹介と親睦を兼ねて、食事会をするという私の意見も通ったのであった。


 日は南天を越えていたが、コミュニティの市場には、たくさんの野菜や果物が並べられていた。


 全員で動くのもなんだからということで、私はオリビアと一緒に、通りを歩いていた。よく食べている根菜とか葉物から、見たこともない果物まで、大きな棚に陳列されて売られていた。


「こんな風に置いていて痛まないのかしら?」


 オリビアがもっともな疑問を抱いたが、その果物を手に取って目の色を変えた。隣の柑橘にも手を伸ばし、驚いている。何を驚いているのだろうかと、私は首をかしげて不思議そうに見ていたが、いくつかの野菜と果物を手に持った。どうやら、買うものが決まったようだった。


「これ、もらえるかしら?」


 その声に、店主は、不機嫌そうな顔を崩さずに、価格を示した。オリビアは、その価格に驚いた表情を浮かべたが、慌てて、すぐにバッグから、お金を取り出し、店主に手渡した。隣の店で、大きめの籐でできた籠を買い、外に出て、集合場所に向かう。


 つくころには、すでに、ロアとロンディスが肉を、そして、マリベルとリスティルがパンを買って待っていた。ロアの持っている肉も大きな塊で、パンもさっき焼きあがったかのようにふっくらとしていた。


「今日は、いい買いものができました」


 マリベルが、リスティルと嬉しそうな笑みを浮かべた。街の中で、何か、イベントでもあったのかなと、私はすこし考えたが、何も思い浮かばなかった。


 みんなで買ったものを持ちながら拠点まで歩いている時だった。


「お、ロンディスにオリビアじゃねえか?」


「あら追放組が仲良くお散歩?生きやすくていいわね?」


 不意に後ろから声がかかった。後ろを振り向くと、見たことのない顔が二人いた。オリビアと、ロンディスを知っているということは、フラジャイル旅団の団員なのだろうが、一体誰なんだろう?

 しかし、オリビアとロンディスはその人物に心当たりがあったようで、少し苦々しい表情を浮かべている。


「団長子飼いのあなたたちが何の用?」


 オリビアの言葉の端々がとげとげしく感じる。団長の子供さんか。まあ、ならば仕方ないよね。オリビア子供嫌いそうだし。


「勘違いするなよ。いい話を持ってきたんだ。オリビアとロンディスを、フラジェイル旅団に戻ることを認めるってよ。ただし、サポーターとしてだがな」


「あら、よかったじゃない、こんなところで遊んでいるくらいに暇なんでしょう?」


 何だろう、もう、このままぼうっとしていると、お肉とか痛んじゃいます。悪意は敵です、はっきりわかります。


「言いたいことは、それだけか?」


「どうしたいのかわからないけど、そんなことで、動くことはないの、今日は、楽しい日だから、勝手にやらせてもらうわ」


 オリビアとロンディスは、相手の勢いに、一瞬黙り込んだようだったけど、あっという間に反論に転じた。それには、相手の片割れの女性が驚いているように見える。


「お前たち程度では、話にならん。さっさと出直せ」


 ロアが、落ち着いた声で、相手をあしらう様にいう。ロア、ダメですよ。子供にそんな言い方したら。子供の喧嘩に親が出てきたらいろいろとややこしくなります。


「あらあら、まあ、どうしたの?坊やと嬢ちゃん迷子になっちゃたの?」


 マリベルが微笑をもって、二人に語り掛けた。うん、マリベルは子供の扱いが得意みたいだ。うん、やっぱりこのパーティメンバーすごいや。私が、あらためて、そう思った時だった。


「ええと、あの、バンディーラ様。この場合どうしたら、いいですか?私も参加した方がいいですか?」


 リスティルが情けない声を上げた。あれ~?


「う~ん、リスティルは、子供とか苦手?」


「バンディーラ様のおっしゃっていることは、よくわかりませんが、わたしは、あまりこういう時には積極的に参加ないようにしています」」


 ふと、困惑に満ちたリスティルの表情が、近くにあった。そうだよね。


「もし、私が…」


 ふと見ると、オリビアとロンディスに、ロアとマリベルまで加わって、言い争いに発展していた。これならば、こちらは誰も気にしていないだろう。団長の子供の相手は、皆に任せて、私はリスティルの話を聞いてあげることにした。何気に道中、


「…リスティルは、もっと話すべきだよ。私とも、ファラとも、そして、ベルグランデ義姉さん?とも」


「わたし、バンディーラ様のこと…好きですけど、そんな仲になるつもりないですよ」


 その、笑みを浮かべながら発した冗談だとわかる声に、私は、うれしくなって、つい笑みをこぼしてしまった。そっと、リスティルの手を引いた。


「大丈夫。そんなつもりはないよ。先約があるから。でも…」


 その先の言葉は、吐くことができない。その言葉を吐けない誓約があったから。でももし、もし、この先に、その先の言葉があるのならば、あなたに教えてあげたいと思った。


 そのころには、小さな言い争いは、私たちの方に、軍配が上がったらしく、その絡んできた2人組はさっさと去っていった。しかし、何しに出てきたんだろう?不思議な2人だったな。


「さて、少し時間を持っていかれてしまった」


「全くだ、いい羊の肉が台無しになって今うところだった」


 ロンディスとロアが笑う。


「しかし、攻略戦をするつもりなのか。あっちは…」


「いいじゃない。あっちはあっちよ」


 オリビアとマリベルが、相手を嘲るような笑みを浮かべていた。


「あの、バンディーラ様」


「様はいらないわ。リスティル」


 私が差し出した手をリスティルが、握りしめた。


「行きましょう」


 ほんの刹那に、しばらくしてから私が発した言葉に、リスティルが応えた。


「…はい!」


 その声をきっかけに、私たちは、一緒になって、みんなの待つ方へ歩いていった。


「ところでみんな、いくらフラジャイル旅団団長の子供でも、ムキになったらいけないよ」


 私の発したその声に、全員が微妙な表情を浮かべた。

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