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第一四話

 耳障りで大きな、金属音がその場に響いた。一跳びに私めがけて飛び込んできた獣の大鉈をロンディスが、その大楯で、受け止めた。それでも、ロンディスのブーツが一瞬地面にめり込み、少し引きずられる。


「この!ふざけないで!!」


 リスティルの魔導銃が、火を噴いたが、それをたやすく獣人は大鉈で受ける。ロンディスが、獣人にシールドバッシュするが、怯んだ様子すらない。うわぁ、前線の闘いだと私は、目の前で繰り広げられる戦いに目を輝かせていた。


「って、バンディーラ、危ないわよ」


 オリビアが、手を引くと、私の顔の横を血の付いた短剣が飛んでいき遠くの地面に刺さる。おお、本格的!!前衛の空気を堪能できてる。でも、その獣人を見ると、獣人の人、正気を取り戻しつつあるような気がした。


「詠唱を中断。新たに『バインド』の詠唱開始」


「ロンディス、狙い撃つから、上手くよけて」


「気安く言うな。ちっ、『狂戦士』か、全く、どこの旅団だ、こんな厄介なのを使っているのは?」


 3人が、一気に獣人の拘束に走るが、オリビアの中途半端な『バインド』は、期待した効果を発揮することなく、リスティルの狙撃は外れ、ロンディスは、その強靭な力に、一時膝をついてしまう。


 その間隙を縫って、獣人は私を見つけたようだ。嬉しそうに、口角を上げる。


「ようし、ここは、バンディーラ様の妙技を見せてあげるわ。そこの獣人、私のパーティーに入りなさい」


「バンディーラ様!?」


「様は、いらないわ!」


「くっ、こいつ、オリビア、バンディーラを連れて、逃げろ!!」


 何とか、ロンディスが、獣人を抑えようとしているが、獣人の力はすさまじく、あっという間に引きはがされる。再び、獣人が、私に向かいとびかかってきた。だれも止めることはできないだろう。


『いいかい、バンディーラ、獣性を開放した獣人を止めるのに、手を抜いたらいけないよ。その急所に、一発きついのをお見舞いするんだ』


 私は、旗を大鉈に向かい突き出した。


「こうやって!!」


 皆の悲鳴が、聞こえる。けど、もう、止まらなかった。旗は、たやすく、鉈を受け止める。一瞬驚いたような表情が、獣人に浮かぶ。…って、正気を取り戻しつつあるじゃない!!


「私より、頭が低くなったら!!申し出を受けたということで!!」


 体勢をわずかに崩した獣人に対して、肩を掴み、右膝で、獣人の股間を全力で蹴り上げる。一瞬獣人の腰が浮くが、、痛みすら吹き飛ばしているはずの獣人の顔が苦悶に染まる。


「そういう契約で!!」


 そのまま、硬直している素早く獣人の両肩を掴んで、獣人の腹をけり、振り子の原理で、私の全体重としなりを加えた左脛蹴りが再度獣人の股間に襲い掛かった。


「よろしく!!」


 獣人は、そのまま、股間を抑えてうずくまった。ちっ、全く、手こずらせてくれる。これで獣人も私のパーティに入ったわけ。


「ふぅ…うん?何みんな、変な表情をしているの?」


 オリビアは、うわぁと言った表情で、ロンディスは、苦痛に耐えているような表情を浮かべていた。


「バンディーラ様…」


「あ、様はいいからね」


「心配しました!やられちゃうんじゃないかって」


「聖王遺物のこの旗が、鉈くらい受け止められないわけがないでしょう!そして、私はこの獣人さんを助けたかったけど、言うことを聞かなさそうだったから、おばあ様…と言うか、師匠から言われたことをさっそく実行したの」


「お師匠様ですか?」


「そう、『事が終わったとき、相手より、頭が高い位置にあるということは、相手の生死与奪の権限を握ったに等しいってね。もし、相手にいうことを聞かせたいのならば、相手の頭より高い位置にあれ』てね」


「さ、さすが、バンディーラ様…」


「様はいいからね」


「のお師匠様です!」


 リスティルだけは、変わらずに、私を慰めてくれた。うう、ありがとうリスティル。オリビアは、微妙な表情をしているし、ロンディスは、獣人に多分痛み止めを飲ませたり、揺すってあげているようだった。


「ねえ、バンディーラ?あなたその体術、いつもは振るってなかったわよね?」


 オリビアが、不安そうげに問いかけた。


「それはそうです。聖女たるもの、相手にお願いするとき以外は、攻撃を控えることと師匠から厳しく言われています!」


「…でも、ずいぶん手慣れていたわね」


「ええ、向かってくる相手には、容赦無く、無慈悲、そして、徹底的に、相手の泣き所または、急所を狙えは、師匠の口癖です」

 

 それを聞いたオリビアが、さらに、微妙な表情を浮かべる。


『あれ?私、変なこと言ったかな?』


 その表情に、首を傾げた時だった。


「来るぞ!!」


 ロンディスの声が、皆を正気に戻した。ロンディスは、まだ、動けない獣人を背にすると、みんなより前に出る。


 獣人が出てきたダンジョンの入り口から、まず現れたのはゴブリンとコボルトの群れだった。その奥から、さらなる巨体が見え隠れしている。


「一度詠唱中断しているから、詠唱完了まで持たせて!!」


「わかった、持たせて見せる!!」


「みんなガンバレー!!」


「わたしに、もっと力が…沸いてくる!!バンディーラ様のために乱れ撃つ!!乱れ撃ちます!!」


 私たちにとって、初めての、ダンジョンでの戦いが始まった。


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