表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/159

第一話

聖剣の始まりのお話


 遥か昔、大地の多くは魔族によって支配され、人間はその中で虐げられながらも生き続けてきた。


 そんな時だった。人間に神の聖遺物たる、聖剣が与えられた。


 聖剣を掲げたものは、自らを聖王と名乗った。同時期に、他の地方に住む女性に聖杯が与えられた。そのものは自らを聖女と名乗り、この地上にはびこる魔族に闘いを挑みました。


 それは、ずっと昔のこと。まだ、まだ昔のこと。

「……お前を追放する」

 静寂の中、惜別と共に発せられた言葉は祝福となり、地に降り注いだ。


「お前を……追放する」

 静恨の中発せられた言葉。天からの祝福は、注がれる器をもち、ようやくに天恵となりうるを得た。


「お前を追放する。」

 侮蔑と嘲笑をはらんだ静寂の中発せられた言葉。

 祝福と天恵は、やがて……。




「バンディーラ、お前は、フラジャイル旅団から追放する」


 団長の部屋は、私たちの部屋と違い、絵が飾られたり、本棚が置かれたりと、とても豪華な造りになっている。初めて入るその部屋の真ん中に立たされて、告げられたのが、追放の言葉だった。


「ええと、何の冗談なんですか?人間として。人数は、問題ないって聞いてましたけど?」


 私は、背中に背負った荷物を背負いなおしながら、フェリガン団長に問いかけた。その言葉に、団長の目が鈍く光る・・・ひえっ、こ、怖いよ。


「バンディーラ、君は、この半年何をしていた?」


 私は首をかしげながら、その言葉の意味を考えていた。


「ええと、ご飯食べたり、野営地の設営したり、寝てたりしてました」


「いや、違う、ダンジョンでのことだ」


 ああ、それかと気が付き、次に思ったことは、


『なんて答えよう』だった。もし、本当のことを言ったらきっと引かれるし、もし、それを見せろと言われたら当然困る。なので、私はいつもの通りに答えることにした。


「応援してました。がんばれー、ガンバレーって」


 ダンッ!!フェリガン団長が机を叩いた。つい私は「ひっ」っと声を漏らす。


「応援だ?馬鹿なことを言うな、お前のクラスはなんだ?」


「は、はい、聖女です」


「聖女が旗を振って応援しているだけの旅団がどこにある?」


 ここにあります。と一瞬応えそうになったが、そんなことを言ったら、きっと大変なことになると感じた私は、そっと視線をそらしながら、団長に応えることにした。


「聖女という、クラスは、いろいろありますから・・・まあ、怒らない方がいいと思いますよ」


「それだ」


 いきなり団長が立ち上がり、私に詰め寄ってくる。って、ちかい、近いです。旗が、顔に旗が当たります。


「聖女はいろいろあるが、回復や攻撃の力があるクラスではないのか?」


「ええと、回復とか光属性の攻撃なら、わたしよりも神官の方が強いです。私はそういう魔法の心得がないので」


「では、聖女とは、何をするクラスなのだ?バンディーラ?」


 そんな答えのないことを聞かれると困るんだけど、う~んと、考えている私を、にやにやと笑って見ているフラジャイル団長・・・そろそろ答えを教えてほしいんだけど、私は、仕方なく、教会で言われている定型句を答える。


「聖女とはしるべです」


「そうだ、聖女、聖者は導となる存在だ。そして、巡礼旅団では、聖都に至る導になる存在だ、バンディーラ。君は、その役目を果たせないのだよ。わかるかね?」


 わたしは、はぁっと、肩を丸めて、恍惚とした表情で話す団長を見ていた。


「その役目を果たすものは、我々の旅団の中にいて、そして、その真の聖女がこの間、夢で告げられたのだという『聖都に至れ』。その聖女は、私に自らの力を旅団のために使いたいが、聖女が2人になるのはいけないと言ってくれたのだ。まさにその通りだと思わないかね?」


 ようやく、鈍い私にも話が見えてきた。新しい聖女が目覚めた、だから、導が2つにならないように、私は出ていってほしいということだということが。


「ええと、そういうことですか?」


 その声に、団長は、満面の笑みで応えた。


「そういうことだ。きみの聖女としての活躍は、感謝しかないが、彼女は、真の聖女なのだ。真の聖女のために旅団の力は使われるべきだと思わないか?」


 早口に言われ、肩を持たれがくがくと揺さぶられる。


「ええと・・・つまり、私はどうしたらいいのですか?」


 最後に聞いた。今後のことを、その瞬間に、団長の顔色が、呆れたような表情を浮かべた。


「最初に言った通り、旅団に聖女は2人もいらない。他の旅団も聖者聖女はすでに足りている。聖女ならば、やることはわかっているだろう?この町で、暮らしていくことが、お前にとって良い話だと思わないか?」


 団長の言うことは正しい。親として、いらない子を放逐するというのは正しい。

 異義をはさむわけではない。私に、それに対する反論があるわけではない。

 でも、不思議と言葉は自然に出た。


「それは・・・・・・私を聖女から追放していただける。そういうことでいいんですよね?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ