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01:国王陛下の嘆願

本日から本作を更新を再開したいと思います。まずは改めて前回の第一章完結まで見て頂き、ありがとうございます。

そして、第二章の連載を開始する前にお伝えしたい事がありますので前書きを書かせて頂いております。

本作は第二章から「ガールズラブ」のタグを含む内容が盛り込まれることが予定していますので、タグを追加させて頂きました。

第一章の完結の段階までは含む内容ではなかったのでつけていませんでしたが、第二章以降からこちらの要素が絡むので苦手な方はブラウザバックをお願い致します。

それでもよろしければ「転生令嬢カテナは異世界で憧れの刀匠を目指します! ~私の日本刀、女神に祝福されて大変なことになってませんか!?~」をこれからもよろしくお願い致します。


 私、カテナ・アイアンウィルは男爵家の娘として生まれた。

 成り上がり貴族と言われる実家だけれども、家族仲も良いし統治にも問題もない。そこそこ恵まれていて、幸運だったと胸を張って言える。

 そんな私には前世の記憶があった。日本という国で生まれ育った誰かの記憶。思い出した時の衝撃のせいか、虫食いのように抜けている記憶だけど私が転生者であることを自覚するのには十分だった。


 前世の記憶を思い出した私は、前世で憧れていた日本刀に魅せられてこの世界で作りたいと思ってしまった。その為に魔法の腕を磨き、素材の再現から何から何まで苦心して数年、無事に日本刀の第一作目を作り上げることに成功した。

 ……まさか、その日本刀が女神であるヴィズリル様に目をつけられて、彼女の神子に選ばれた挙げ句に日本刀が神器として認定されるとは夢にも思わなかったけど。


 神から直接、神子に認定されたこととか、神子の使命だとか、とにかく押し寄せる津波のような出来事に翻弄されていた私。

 そんな波瀾万丈の人生を送っていた私だけど、また私の歴史に大きな出来事が刻まれることとなった。


「……本当に心の底から感謝している、カテナ嬢」

「わ、わかりました! わかりましたから! ですから、どうか頭を上げてください、陛下に王妃様――ッ!!」


 私に深々と頭を下げているのは我が国の最高権力者、国王であらせられるイリディアム・グランアゲート陛下。

 その隣には王妃であり正妻であるクリスティア様が同じように頭を下げている。国のトップに揃って頭を下げられている状況に私は白目を剥いてしまいそうだった。


「君がいなければ息子の命は危なかった。ベリアスを救ってくれたことに留まらず、王家の顔を立ててくれた。これで感謝も許されないならば、私は自らを恥じることしか出来ない」

「本当にありがとう、カテナさん……あんな大怪我をしたベリアスを見たら血の気が引いてしまって……」


 イリディアム陛下は拳を固く握り締め、クリスティア様に至っては涙で目を滲ませていた。

 先日、私が通うブラットフォート貴族学院で行われた見学授業。その見学先でまさか魔族の襲撃を受けるという事件が起きた。


 その魔族に単身、立ち向かったベリアス殿下が重傷を負い、下手すれば命を落としかけた。表向き、ベリアス殿下が倒したことにはなっているけれど実際に倒したのは私だ。

 ベリアス殿下が瀕死になった相手をほぼ無傷で下したことがバレると面倒なことになると思ったからだ。


 だから私は引率役として同行していたラッセル様と口裏を合わせて、魔族討伐の功績をベリアス殿下に押し付けた。

 そして無事、見学先から戻って来て数日後。ラッセル様を通じて王城に呼び出されて今に至るという訳である。


「王家としてだけでなく、ベリアスの親としても君には感謝しかない。本来であれば報償を出してやらねばならない程だが……」

「い、いえ。私は出来ればあまり目立ちたくはないので……それにベリアス殿下には私の功績を背負って貰うことになりますから、それで私は十分です」


 表に出せない功績である以上、報償だなんて話にはならない。むしろ、なられても困ってしまう。

 私の返答に難しい表情をして黙り込んでいた陛下だったけれど、まるで意を決したかのように表情を切り替えた。


「……カテナ嬢。君に話がある」

「……はい? 話ですか?」

「あぁ、君には知ってもらいたいのだ。我が王家の秘密を」

「えっ」


 王家の秘密とかどう考えても面倒事ですよね、嫌ですけど!? って叫びそうになったけれど、これ断れそうな雰囲気じゃないよね?

 なんだか陛下は覚悟を決めたような表情をしているし、王妃様も穏やかな雰囲気から王族用なのか、表情を引き締めて凜とした佇まいに変わってるし。


「君にとっても悪い話ではないと思っている。むしろ、正しく知らなければならないだろう。カテナ嬢は少し自分の価値を軽く見過ぎているからな」

「は、はぁ……?」

「ベリアスが持っていた大剣を見たかね?」

「……見ましたけれど。それが何か?」

「あれは王家が保有している神々より授かった神器、その内の一振りとされている。しかし、それは偽りだ。あれは神器ではない」

「……どういう事です?」

「正確には神器に準ずる武具、私たちは準神器級などと呼んでいるが……つまり純正品ではないのだ」

「それは……」


 確かに秘密と言うだけはある。王家が保有している神器は、実は神器じゃなくて神器に準ずる武器だって言うのは驚きだ。

 同時に納得もした。正直、ベリアス殿下の大剣を見た時に微妙な違和感のようなものを覚えていた。多分、この違和感は神器でなくそれに準ずる物だったからなんだろう。


「この準神器級の武具は完成するまでに長い時間を要するのだ。どんなに早くても百年はかかる。人が一代で完成させられるものではない」

「百年……」

「しかし……カテナ嬢、君は違う。君は一代でどころか、純正品の神器を量産することが出来る。もう一度、その価値を再確認して欲しい。君が神器を量産出来るという事実が知られれば、君は表の世界で自由に生きていくことは難しいだろう」


 イリディアム陛下が言うことは尤もだ。魔族や魔物との戦いにおいて神器の有無は大きく戦局を左右する。数が増やせるなら誰もが求めるだろう。他の手段で量産も難しいとなれば、私が自由に生きられなくなるというのも納得だ。

 ……なんで、そういう大事なことを説明してくれないのかな!? ウチの女神様は!? 後で文句言ってやる!!


「だから、私は君の後ろ盾になりたいと思っている」

「へ?」

「君の自由を保障するため、王家は君に援助を申し出る」

「援助……ですか?」

「うむ。正直、君を守るだけなら一番確実なのは王家に入って貰うことではあるが、君は望まないだろう?」

「……はい」

「しかし、お抱えの職人として君を厚遇するにしてもカテナ嬢の作り出す武器は既存のものとは異なるものだ。製法も異なると言われれば無理強いも出来ない。正直言って、私たちも君への態度を決めかねていたのだ」

「でも、カテナさんは確執があったベリアスを救ってくれたわ。なら私たちは貴方に大恩を受けたことになる。この恩を返すには、貴方の自由を保障することでしか返せないと思ったの」


 クリスティア王妃様まで加わって私の援助を申し出ることを決めた経緯を語ってくれた。

 王族に入る訳でもなく、あくまで国が援助するという形で私の自由を保障してくれる。それは即座に返答してしまいたい程に魅力的だけれど、流石に即決出来ることではいと悩ましげな表情を浮かべてしまう。


「無論、ただでこちらも君を庇護することは出来ない。建前が必要になる」

「建前、ですか」

「あぁ。カテナ嬢、リルヒルテとは仲良くしてくれているようだね? 彼女から興味深い話を聞いたのだよ」

「興味深い話……とは?」

「リルヒルテは将来、王女たちの護衛につきたいという話は聞いていただろう? 彼女たちは護衛として相応しい武器の選択に長いこと迷っていたようなのだが、君の刀に随分と関心があると聞いた。これを上手く利用出来ないかと考えている」


 リルヒルテ様は私が王家に献上した日本刀を目にしたことがあり、それから私へと興味を持ってくれたという経緯がある。

 そのリルヒルテ様の名前を出して利用出来ないか、って言われると思い付くのは一つしかない。


「リルヒルテを君の護衛としてつけたいと思っている。表向きは君が生み出したカテナの性能試験のため、その扱い方を研究する一人として名を置くことになるだろう」

「つまりリルヒルテ様に刀を作って有用性を示させると?」

「そういう事だ。将来、王家や貴族の護衛として立つ際の武器候補の一つとして研究させるという名目でね。王家から直々に君に依頼をしたとなれば職人としての名目も立つ。……どうだろうか? 私から提案出来る最善の策だと思っているのだが」


 イリディアム陛下の提案ははっきり言って悪くない所か、諸手を挙げてでも歓迎すべきことだった。

 王家が後ろ盾として日本刀を作ることを支援してくれるし、私以外の日本刀の使い手を育てても良いということなのだから。

 でも、そこまで言われても遠慮と警戒が抜けきらない。


「……そんなにして貰っても良いんですか?」

「これは国王として為さなければならないことだと思っている。むしろ遅かった程だろう。ベリアスとの一件以来、君は王家を疎んでいたようだったからな。対応に悩んでいたのだよ、君と事を構えたい訳ではなかったからね。カテナ嬢もそうだろう?」

「いや、まぁ、それはその……」

「しかし、私は歩み寄りが必要だと考えている。カテナ嬢。君の生み出すものが多くの命を守ることに繋がるかも知れない。今更ではあるが、恥を忍んで頼みたい。どうか、その力を我々のために振るって欲しい。出来うる限りの支援を君に約束する。どうか我らと共に歩んではくれないだろうか?」


 イリディアム陛下が私に握手を求めるように手を差し出す。真剣に私を見つめる陛下の表情を見て、私は小さく息を吐き出す。

 ここまで熱心に言われて心が動かない程、私は薄情にはなれない。元から賛成に傾いていた心は、陛下の手を取ることで返答をした。


「この国は私にとっても祖国です。出来うる限りでよろしければ」

「……ありがとう、カテナ嬢」


    

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