30話《彼だから》
「俺の恋人、男なんだ」
口から出た言葉。
今更ながら思うのは、どんな子と聞かれているのに、なぜか恋人が男であることを言ってしまった。
「あ、ごめん。どんな子なのかって質問なのに」
「ううん、いいよ別に……そっか、颯音の恋人は同性なんだ」
「別にその、恋愛対象が男ってわけじゃないんだ」
「わかってるよ。颯音は私とは違う。好きになったのが、男だったってことでしょ?」
にっこりと笑みを浮かべるおばさん。本当に、おばさんには叶わない。そして、本当に尊敬する。
さっきまでの緊張とか焦りとかはなくなり、少しだけ体が楽になった気がする。
「で、どんな子なの?」
「えっと、すげー頭がいいんだよ。それに顔がめちゃくちゃ良くて、かっこいいんだけど、笑ったりすると可愛くて……でも一番は、声がいい」
最後の部分は、一番の惚れた理由でもあるため、ちょっと力が入ってしまった。それを感じ取ったのか、おばさんは大笑いして、香澄は少しだけ蔑むような目を向けていた。
「あ、ごめん」
「いいって。まぁ颯音が好きになったんだからそうだろうなぁとは思ったけど」
「うん。でも、一緒に過ごすうちに、声だけじゃなくて、そいつそのものが好きになった」
そして、やっと昨日想いを伝えることができた。
まだ付き合ってとは言ってないけど、この後ちゃんというつもりだ。
食事を終えた後は、おばさんと一緒に洗い物。香澄はリビングのソファーでのんびりテレビを見てる。
「この後、恋人君のところに行くの?」
「うん。ご飯作りに行く」
「そっか。颯音はいいお婿さんになるね」
会話はいたって普通だ。おばさん自身も気を使ってるのか、あまり踏み入ったこととかは聞かなかった。あくまで、必要最小限。白線の一歩後ろの内容。
「いろいろ大変かもだけど、私は応援してるから」
「……うん」
「後、怖いかもしれないけど、有紗たちにも話すのよ」
その言葉に、少しだけどきっとした。
両親は蓮のことを気に入ってくれて入るけど、まさか息子が同性と付き合ってるとは思っていないだろう。
「大丈夫かな……」
「有紗たちなら大丈夫でしょ。私の例もあるし」
「……だと、いいな」
少しだけ、不安を抱きながら、気がついたら洗い物が終わっていた。




