29話《叔母》
「ヤッホー!おっひさー!!」
そんなハイテンションな声が聞こえて、俺は作っていた昼飯の手を止めた。
家族揃って玄関に行けば、叔母さんがそこには立っている。
「いらっしゃい」
「姫沙羅おばさんだぁ」
母よりも年上なのに、会うたびに綺麗になってる気がする。若めの服装をしても、全く違和感がない。いいなぁ、こういう歳を取っても若いままっていうのは羨ましい。
「ん?すごいいい匂いがするけど、ちょうどお昼ご飯?」
「そう。おばさんも食べる?今日は香澄のリクエストで焼きそば作ってるところ」
「おー。じゃあご相伴に預かろうかな」
ニッと笑みを浮かべるおばさん。
俺たちはそのままリビングに行き、俺は昼飯作りを再開し、香澄とおばさんは楽しそうに話をしてた。
両親は休日だが仕事で、夕方くらいに帰ってくる。
俺は蓮の家に行くし、短い時間だけど香澄とおばさんの二人だけになってしまうのは申し訳なく思ってしまう。
「でね、お兄ちゃんの部屋にね」
「ホント、香澄は颯音のことが好きね」
「いやおばさん、そこは勝手に入ったらダメだって怒るとこだよ」
昼食ができて、二人の分を持っていくと、ちょうど俺の話をしていた。
笑って話をしていたから、少しは大人として怒ってほしかった。
「ごめんごめん。大体の、香澄のブラコンはもう治らないわよ」
「おばさん」
「それは俺もわかってるので、これ以上悪化させないで」
「二人ともひどい!」
香澄の言葉を聞き流しながら、テーブルに作った焼きそばを置く。
俺も自分の分を準備すると、三人一緒に仲良くお昼を食べる。
話題はもちろん、久々に会ったおばさんのこと。特に、彼女さんとの事。
「へぇー、仲良しだね」
「女子同士ってだけで、普通にカップルらしいことしてていいなぁ」
「可愛くて仕方ないからね」
幸せそうなおばさん。その表情を見ると、なんだかホッとする。
「で、二人はどうなのよ。最近」
「え!」
「んー、私はそういうのないな。同じ学校の男の子に興味ないし」
香澄はいつもの調子でそういうけど、俺は内心ドキドキしていた。頭の中に浮かんだのは、蓮のことだった。
「ん、どうしたの颯音」
「え、いや……その」
「…………」
どうしよう、言った方がいいのかな……でも、まだ両親にも話してないし、話すにしても心の準備が……
「お兄ちゃん、恋人できたんだよ」
そんな俺の心の格闘と裏腹に、ケロッとした顔で、とんでもないことを香澄が口にする。というかなんでお前がバラすんだよ。
「え、そうなの」
「いや、あの……」
「この後も、ご飯作りいくんだよ」
普通の会話と同じように、昼飯を食べながら淡々と話す香澄。だからなんでお前が普通に話してんだよ!!
「意外ね。香澄、許したの?」
「許したっていうか……その人だからって感じかな。他の人だったら全力で邪魔してた」
「さすがブラコン。へぇー。ねぇ颯音、どんな子なの?」
香澄に向けていた意識が、そのまま俺の方に向けられる。
俺はどう言っていいか分からず、あたふたとしていたけど、おばさんはじっと俺のことを見て、俺の言葉を待ってくれている。
そんな顔を見ると、俺の心の中でおばさんにはちゃんと言わないとと、不思議とそう思った。
「俺の恋人、男なんだ」




