表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Vox-ウォックス-  作者: 暁紅桜
18/40

18話《久しぶり》

放課後、俺はそのままSクラスの教室に足を運んだ。

正直緊張しかない。絶対にこないクラスだからだ。れんと知り合って、一回ぐらいは教科書を借りに行くかと思ったけど、案外俺も真面目みたいで、一度も忘れ物をしたことはなかった。


「あのさ」


教室の出入り口にいる、Sクラスの生徒に声をかける。

楽しく雑談していた時に俺が話しかけてしまい、俺の方を見ながらめちゃくちゃ不機嫌そうに「なに」と言われた。


海雨かいういるか?」

「……海雨、なんか呼ばれてる」


教室に向かってSクラスのやつが声をかける。呼ばれた蓮はこっちに向いて、俺と目があった。

軽く手を上げれば、体を少しビクッと震わせた。うわぁ、反応があからさまだな。

だけど、蓮は逃げなかった。教科書とかを鞄に入れると、俺のそばまで来た。


「……帰ろうぜ」

「……うん」


俺はそのまま教室を離れる。一瞬横目でクラスメイトたちの様子を伺うと、随分意外そうな表情をしていた。

ホントこいつ、普段どんな感じなんだよ。


帰路はお互い無口だった。蓮が無口なのはわかるけど、俺まで無口になっちゃダメでしょ。

何か話さないとと軽く唸りながら、とりあえず謝罪を一言。


「悪いな、急に……」

「あ、いや大丈夫。ちょっとびっくりして」


久しぶりに見る蓮の苦笑。あぁ本当に落ち着く。これが、数日前は当たり前だったんだよな。


「あのさ蓮、今週の休みなんだけどな」

「う、うん……」

「……紫音しおんさんに、飯作りに来てくれって言われてんだよ」

「え、父さんに?」

「そう。で、土曜日に家に行くから」


嘘とほぼ強引。紫音さんには後で話を合わせてもらうように連絡しておかないと。

蓮は申し訳なさそうな顔をするけど、逆にこっちが申し訳ない。すごく胸が痛い……。


「それとさ……」

「ん?」

「もう少し、話がしたいと思って……」


たじろもどろ。後半が徐々に小さくなっていく。後、顔を見るのが怖くて若干うつむき気味になった。


「俺らさ、色々話すけどあんまりプライベートな話とかしたことないだろ?だから、そのさ……」


何だろう、いつもみたいに上手く話せない。ちゃんと言えばいいのに、如何してか胸がざわついて口が上手く回らない。


颯音はやとはさ……」

「え……」

「いや、何でもない」


何かを言いかけて、それをぐっと堪えた。あぁこういうところか。ふと、俺はそう思った。


「土曜日、楽しみにしてる」

「おう。楽しみにしてろよ」


追求はしなかった。今ここで聞くことじゃない。土曜日、喧嘩をしてもいいからちゃんと全部話そう。そして、全部聞こう。そう思った。


「んじゃあまたな」

「うん、また」


今はこうやって、何気ない言葉が口にできるだけで満足だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ