17話《幻影の立場》
聞き覚えのある声。ここ最近ずっと聴けていない、今一番聴きたい声……
俺はそっと物陰から声の方を覗き込んだ。
一つ下の階。屋上に続く階段の前に、蓮と女子生徒の姿があった。確か、前に雨の日に蓮と話してた女子だったよな……すげー睨まれてたよなぁ。
「えっと、えっと、ね……」
相当鈍いやつじゃなければ、あれがどういう状況かぐらいはすぐにわかる。
俺は除くのをやめたが、会話だけに耳を傾けた。だって、久々の蓮の声なんだから。
「私、ずっと海雨くんのことが好きだったの。それでね……えっと……わ、私と付き合ってください」
ありふれた告白の言葉。王道だなぁとか思いながら、二個目の弁当の残りを食べ進める。
「ごめん」
たった三文字。だけど、凄まじく心に突き刺さる悲しい言葉。きっと、女子の方の胸にも鋭く刺さっているだろうな。
「好きな人、いるの?」
「……うん」
その二文字は、俺の胸にも突き刺さった。香澄から聞いてはいたけど、実際に本人の口から言われるとかなりくる。
(やっぱりいるのか……)
「学校の、子」
「ごめん。好きな人のことは話せない」
「…………ホントに、いるの?」
女子生徒は諦めるつもりはないようだった。というよりは、さっきの蓮の発言に疑問を抱いている感じだった。ホント、女って怖いよな……。
「いるよ。どうして?」
「だって……好きな人のこと話せないって……それって、いないからじゃないの?」
「……相手のこともあるから話せないだけだよ。ひとつ聞くけど、さっきの質問に答えたとして君はどうするの?」
「え……」
「学校の人だって答えて、君はどうするの?僕は君とは付き合えない。じゃあ僕の好きなこが学校の人だと知った君はどうするの?」
「それは……」
「他に僕のことを好きな人に協力するの?」
畳み掛けるような蓮の言葉。こんなにも不機嫌な声音で話をしている蓮は初めてだ。苛立ちというか、とにかく相手に不快な感情を出しているのがわかる。
「終わりなら、僕はいくね」
一言そういうと、足音が遠くなっていく。どっちの足音だろうと思って、もう一度物陰からから告白現場を覗き込む。
その場に残ってるのは女子生徒だけ。うつむいて、スカートをぎゅっと握りしめて泣いていた。
その悲しみが、振られたことに対してなのか、蓮を怒らせてしまったことに対してたのかはわからない。
会話を聞いていて、まぁ同じ男としてあんな風に女子に言われたらイラつくのもわかる。ただ、思うのは言方とかはともかく、もしかしたらあの立ち位置に近い未来自分がいるんじゃないかと、少し怖くなる。
「あんまり、考えたくないな」
そう思いながら残っているお弁当を口に運んだ。
シチュボを聴く気分でもなかったし、お昼を食べ終わると、そのまま教室に戻ろうと思った。もちろん出る前に、あの女子生徒がいないかの確認をした。
廊下に生徒の姿はなかった。少しだけホッとして、そのまま教室に戻った。
その途中、例の女子生徒が他の女子生徒に慰めてる光景を見た。
「可哀想」なんて言ってるけど、内心は本当に彼女に同情してるのだろうかと、少し疑問に抱いた。なんていうか、俺の心が歪んでるのかもしれないけど、女子は結構怖いと聞くからな……これをチャンスと思ってる子も、少なくとも一人はいると思っている。
(あの女子、結構積極的だったからな)
あの告白をきっかけに、蓮に変な噂がたたなければいいなと、そう思っていた。




