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Vox-ウォックス-  作者: 暁紅桜
14/40

14話《聴けなくなった声》

「あ、いた」


いつもの場所に行けば、れんはいた。

昨日のこともあったからいないかもとは思ったけど、まぁ結果オーライ。弁当が無駄にならなくてよかった。


「って、お前それ……」

「あ……えっと」


蓮の近くにはたくさんパンやおにぎりが置いてあった。


颯音はやと、来ないと思って……」

「それはこっちのセリフっつーの。ほら、他のは食わずにこっちを食え!」

「え、でも……」

「賞味期限が早いのはこっちなんだから、俺の弁当を優先的に食え」


強制的に弁当を蓮に渡し、床に置かれたパンやおにぎりを袋に戻していく。食べてしまった分はまぁ……仕方ない。


「……ありがとう」


小さな声でそう言いながら。蓮はいつものように弁当を口に運ぶ。ふわっと笑みを浮かべて「美味しい」と言ってくれて、俺はそれだけで十分だった。


「昨日は、ごめんね……」

「別に、気にしなくていいって。お前も、あんまり顔色良くなかったしな」


正直色々聞きたいけど、俺からその話を振ることは出来なかった。怖いというのもあるけど、踏み込んでいいことじゃない気がする。


「……昔好きだった人なんだ、彼」


そう思っていたのに、蓮は少し苦しげにそう言ってきた。別に無理して言わなくてもいいのに……そう思いながらも、俺は黙って蓮の話を聞いた。


「中学時代、好きだった人なんだ。優しくて……よく一緒にいてくれてね。で、僕は勇気を出して告白したんだ。だけど……」


——— は?なにそれ……男が好きとか気持ちわる


「そう言われちゃったんだ……そうだよね……なんて思って。彼とはそれっきり話さなくなった。幸いだったのは、彼がそのことを誰にも話さなかったことぐらいかな。いじめとかはなかったし」


過去を思い出すように、もう笑い話というように話してるけど、その時の傷はいまだに癒えてないのだろう……浮かべてる笑顔が苦しそうだし、声もいつもと違う。


「それからはもう誰かを好きにならないって決めて、溜まった欲はシチュボで発散してたんだ。だからね……だからね、蓮」


今にも泣き出しそうな声と顔で、蓮は俺の方をみる。


「明日からはもう、僕はここに来ないから」


あぁそうか。あいつの言っていた、”精々深く仲良くならないことだな”という言葉はそう言う事かと、俺は思った。

仲良くなれば、蓮が俺を好きになると、忠告、したんだろうな。


「なに泣いてんだよ」

「え……べ、別に泣いてなんか……」

「……香澄かすみがな、成績上がったって喜んでたんだ」

「え……」

「お礼が言いたいって、昨日連絡するの忘れてた」

「えっと、颯音……僕は……」

「お前が来なくても、俺はここに毎日来るからな」


こいつが俺を遠ざけたいのは、気のあったあいつの事があるからだ。こいつは今必死に俺を好きにならないようにしてる。

それまでわかってしまえば、俺もなんとなく自分の気持ちに気づいてしまう。だけどこの気持ちを口にすることは、蓮が望んでいない。


「とりあえず飯食おうぜ。腹が減ると午後の授業マジで死ぬんだよ」


なぁ蓮。俺はお前の声が好きだよ。

下心で、ずっとお前と一緒にいたいと思った。お前の声をもっとたくさん聞きたいって……声が目的だったけど、今は純粋にお前に会う事が目的になってる。

俺は……



———お前が好きだよ。



翌日、屋上の物陰に蓮の姿はなかった。


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