11話《ワンシーン》
「颯音ー、帰ろうぜぇ」
HRが終わって、生徒たちがさっさと帰る中、俺も帰り支度をして昇降口に向かうことに。
「悪い、俺今日買い物しなきゃいけないんだわ」
「別にそんぐらい付き合うぞ」
「いや、傘ねぇーんだわ。で、今日は先約あるから悪いな」
「なんか、最近付き合い悪くね?特に昼休みとか、弁当二つ持って出て行くし……は!女か!」
「ちげーよ」
彼女だったらとっくにお前に自慢してるよ。なんて軽口を言いながら軽く手を降り、俺はそのまま昇降口へと向かう。
蓮からは《外にいる》というメッセージが届いており、下駄箱で靴に履き替えてそのまま外に出る。と、蓮の姿をすぐに見つけることができた。後ろ姿でもすぐにわかるな、あいつ。いつも通りな感じで声をかけようとしたが、俺より先に別のやつが蓮に声をかけた。
「海雨君、今帰り?」
「え……あぁうん」
「誰か待ってるの?もしよかったら、一緒に帰らない?」
うわぁ、こんな現場をリアルで目撃することになるとは思わなかった。
でもまぁ、蓮は顔がめちゃくちゃいいし、その上頭もいい。女子は放っておかないよなぁ。将来絶対有望だもん。
女子の方はまぁ可愛いって感じ。例えるなら小動物っぽい感じ。普通の男だったらまず、いいなぁとか思うタイプの女子だ。
ただ、あの女子には申し訳ないけど相手が悪い。
「ごめん、友達と帰る約束してるから」
「そう、なんだ……な、なら、その人が来るまでお話ししてていいかな?」
おぉ、諦めないなあの子。見た目に反して随分必死なご様子。どうしてもお近づきになりたいって感じが出てますなぁ。その気持ちはいいと思うぞ。でも、さすがに自分勝手で、相手のことを全く考えてないのはよろしくない。申し訳ないけど、夢のひと時はここで終わりだ。
「悪い蓮、待たせた」
俺は普段通りの口調で蓮のそばに駆け寄り、その女子と蓮を交互に見る。そう、さも今来たかのような態度をとって。
「あれ、もしかしてお邪魔だったか?」
「いや、大丈夫だよ。帰ろうか」
「悪いな。近くのコンビニまで頼むわ」
「うん、任された」
蓮が傘を開いている間、俺は側にいる女子生徒の方を見た。目があったけど、めちゃくちゃ睨まれた。まぁこの女子からしたら俺は邪魔者だろうな。でも残念、俺だって急いでるんだ。長時間、楽しい時間を提供してあげることはできない。
女子から視線を外した俺は、そのまま蓮の開いた傘に潜り込んで一緒に帰った。




