序章
空は黒く、空気は重たい。突然、火の光が空を照らし、爆発音が聴こえた。それと同時に赤色の鎧を着た戦士たちは青色の鎧を着た戦士たちに向かって突進する。束の間、戦場は死と生の分かれ側となった。
一戦の後、死体が彼方此方に横たわり、あたり一面でカラスだけが元気よく鳴いていた。
「将軍様、前線からの速報です!前線を攻め落とされました。食糧庫も奪われました。」
そう報告する兵士の前に立っていたのは凛々しい目つきをしていた白髪の将軍ジョールだった。その年にそぐわない威厳たる声で
「食料をもって、前線へ移動しょう。」
と手下の者に命じた。ジョール将軍は大部隊を率いて前線へ向かうと、ただ焼け野原だけが残り、そこには白い霧が立ち、視界を濁していた。傭兵であろう一人が不気味に思って、こう聞く。「この煙のようなものは何なのだろう?」
するとそばにいた別の兵士が声を潜めて答えた。
「デーズ(死の穢れ)だよ。お前は元城の住人だからわからなかったのだな。言っとくけど、あんまり吸わない方がいいぜ。」
それを聞き、その傭兵は恐怖を感じ、初めて知るその言葉をそれ以上聞くつもりにいられなくなって黙り込んだ。
ジョール将軍は眉をひどく寄せて、「敵はまだ周りにうろついているだろう。持久戦だ。」そう言うと掛け声が軍隊の中で響き、大部隊は前線に残った。
死の静寂の中で五十過ぎの老婦が現れた。赤ん坊を抱き、俊敏に死体を通り抜くと、その赤ん坊は突然泣き出した。「罪のことよ。我が主、お護りください。」一言呟くと、老婦は暗闇の中で消えた。