05 閑話2 神様の独り言2
ふむ、こんなものだろうか?
愛した、と思っていた女の本性を知った愚か者を眺める。
我は咎人達の中で、こやつだけは何があっても許す気はなかった。そう、愛し子が嘆願したとしても、だ。他の者はまぁ、愛し子がとりなせば考えんでもないがな。
こやつは我の中で最大の大罪人よ。
我が愛し子に想いを寄せられておりながら違う女に走り、あげく我が愛し子をこれでもかというほど傷つけた。
転生の輪にも返さず、魂の牢獄で、その魂が消滅する瞬間まで苦しめば良い。
愛し子のもとに戻ると、そっと頬を撫でた。
まだ愛し子は眠っている。
いくら我が加護を与えたからとはいえ、愛し子は人の魂。この神の居住では存在を許されないもの。
少しずつ我が神気を与え、慣らしていかねばな。
大丈夫。
愛し子が目覚める頃には多分、少しは、問題はないはずだ。うむ、多分。
それにしても……ここは白いな。
今までは何とも思っていなかったが、もし愛し子が目覚めて、ただの真っ白い空間にいるとわかったら嫌がるのではないのか?
どうすればよい?
何が好きかわからぬまま、あれこれ飾り立ててもよいものか。
むぅ、別な国に加護を与えておった愛の神はなんと言っておったか?
確か、そうだ、花だ、花。
いやしかし、花はあの愚か者がさんざん愛し子に贈っておったな。あの愚か者を彷彿させそうで嫌だな。
花は却下だ。
ではなんだ?
花以外では何が良いと言っておったか?
そうだ、キラキラした宝石も良いと言っておったな!
では、これではどうだ?
手を軽く振れば、白い空間のあちこちに宝石が生える。
ただの石だけではつまらぬ。それに、人が造れる程度では愛し子は人の世の事を思い出し、悲しむかもしれぬ。
どれ、宝石の木や花を咲かせよう。
そうだ、宝石の森、流れる小川。神のゆりかごで目覚めて見るには、美しい風景ではないか。
うむ、さっそく愛し子のためにつくるとしよう。
ああ、愛し子よ。
早く目覚めておくれ。
そなたには劣るだろうが、美しい景色を用意して待っておるぞ。
思ったより神様がポンコツになりつつある気がする……。