03 閑話1 神様の独り言
荒れ狂う水に飲まれる地上の様子。
僅かな興味もなく、我は視線を外した。その先には、眠る愛し子。
なんと愛らしい姿か。
白い肌は白磁のようになめらかで、流れるような紫銀の髪はきらきらと輝いている。今は閉ざされたままの目。髪と同じ色をした長い睫毛が影を落としているが、目を開けば宝石のような青い目。小さな唇は瑞々しい桃のよう。
うむ。
我が一生懸命作った甲斐があるな。
愛し子の器はこの世の美が詰め込まれるようにしてある。
ああ、早く目を覚まし、あのカナリアよりも美しい声で我の名を呼んでほしい。
目が覚めてしばらくは、我と共に過ごしてもらおう。
我は今、愛し子を傷つけたもの全てを浄化するために献身的に働いていることだし、少しくらいは我と共にあってくれても良いはずだ。
そのあとはまた、愛し子の望みを叶えるとしよう。
地上に帰りたいというのであれば、地上に転生させ、また我の加護を与えればよい。
今度は愛し子を傷つけないよう、愛し子が好きなものであふれかえった場所にしよう。
愛し子は何が好きだろうか?
以前見た、人間が好んでいたような、毛皮のある生き物があふれた世界? それとも、水に住まう生き物だろうか?
雪は好きだろうか? それとも暑い日が出る砂が良いか? 木々が溢れる方が良いのか?
ずっと見ていたが、食べ物で甘いものは好きなようだ。では、辛いものはどうだろう? 苦いものは?
熱いものと冷たいものならどちらが好きだろう?
我は人の心を読むことができるのに、愛し子だけは読めぬ。全くふがいない事よ。どうでもよい者の事は全て理解ができるというのに、唯一である愛し子だけは理解できぬとはな。
沢山、愛し子と話すこととしよう。
愛し子の事を知りたいし、愛し子に我を知ってほしい。
やることは多そうだが、時間は無限にある。
これからが楽しみだな。
ああ、しかし、しばらくは人のようなものは要らぬな。アレは愛し子を傷つける。とてもではないが、愛し子には近づけたくはない。愛し子がどうしても、と言うまでは我が領域には侵入できぬようにしておこう。その代わり、愛し子がさみしがらぬよう、その他の命は沢山作ろう。
ふふふ、きっと愛し子も喜んでくれるだろう。