18 牢獄に堕ちた魂
更新が遅れて申し訳ありませんでした!!
皆様のお優しいお言葉、大変感謝いたします!!
**二週目**
あー、ゲームの時はボタンぽちぽちしてただけだから、そんな思わなかったけど、お茶会ってめんどくさー。身分が下の者は、上の者に話しかけるなって言うけど、パイプ作る為にはそんなことも言ってらんないしー?
だいたいさー、このお茶会だって所詮腹の探り合いジャン? 何いい子ぶった感じでやってんのって話よねー!
果報は寝て待て? ばっかじゃないの? イケるときにガンガン行って、掴めるもん掴まなきゃさぁ、上へはいけないわけよ。そんなこともわかんないの? 貴族なんて馬鹿ばっかでしょ。やっかんで私にネチネチ言ってる暇があったら、自分もやればいいのにねー。ここに成功者の私がいるんだから、少し考えればわかるでしょ? なーにが、成り上がりだ、商人紛いだってのよ。お高く留まりすぎて手をこまねいてるアンタらの方がよーっぽどアホよ。しっかも? それでいて私とってか、家と縁を繋ぎたいとか馬鹿なのかしら、こいつら。全員メモって、後でゲームに支障でない程度でも、それなりの報復してやるんだから!
さっ、今日の目当てのカーミルはっと。
あ、いたいた。
ふふん。仕方なく婚約者と出席した感まんさーい。そんな嫌そうな顔して、冷たく相手して、あんな必死に相手している婚約者さんかーわいそっ! 私だったら殴ってさよならだわー。さすが聖人ぶった婚約者様! あんなくっそ面倒臭い奴の相手してあげるなんてね!
『ああ……天使……貴女は、そんなことを思いながら……』
さってと、奴隷売買と麻薬で荒稼ぎした金と、築いた人脈つかって潜り込んだお茶会。有効に使わなくっちゃね。今日はこの後バーナードとのイベントもあるし、めんどいカーミルはさっさと終わらせるに限るわー。
『うっうぅ……嫌だ……聞きたくない……天使が、天使が、我が国では禁じられてる奴隷の売買や、あの悪魔の粉で金を稼いでいたなんて……私はバーナードの前座扱いだなんて……嫌だ、嫌だ嫌だ……』
**三週目**
あーぁあ、バーナード泣いちゃってるー。あの戦争でお友達が死んだんだよね、かーわいそー。あはは。
さ、慰めてあげなくちゃね! その戦争起きた原因、私だけど。あっは♪
罪悪感? あるわけないじゃん。だってモブだよー? ヒロイン様の為に死ぬ存在にそんなこと思うわけないじゃん? あはは!
「すまない、みっともないところを見せてしまったな」
『こんな、こんな奴に、俺は弱さを見せたのか……こんな、俺の友人を奪ったやつに……』
「いいえ、気にしないでください。いくら国のためとはいえ、ご友人を失ったのです。そのことを嘆くことに、なんの恥がありましょうか?」
そのお友達を亡くした原因に泣きついているのは大恥よね~! ああ、恥ずかしい人!
『こんな、こんなクズに俺は……』
あーそれにしても、あの婚約者の女うっざかったわー。思い出しても腹立つー。どーせ何やったってバーナードの関心はひけないってのにさぁ、バーナード様の為にってしつこすぎんのよ! これはもう有罪よね、有罪!
ヒロイン様の邪魔をするとか、流石は悪役令嬢だわ。うっざ。密告の時に、開戦の罪なすりつけてやろっと。
『フェリシア……お前は……君は、こんな愚かな俺の為に動いていたんだな……何度も俺にたてついたのだって、俺の愚かな考えを正すためだったんだろうな……。フェリシア……すまない。こんな愚か者の婚約者をさせてしまって……。君に俺みたいな愚か者は相応しくなかったのに、ずっとずっと俺を見てくれていた……。フェリシア……フェリシア……君の声が、聴きたい……』
**四週目**
あーもうっ! うっとーしいわね、この双子! 私はアーロンと話したいのよ!
毎度毎度邪魔して!
でも、ここで嫌な顔したら好感度すぐさがるのよ、この二人! エスカリーテ様はそんなこと言わないって!
あーうっざ! うっざい!
エスカリーテ様は、エスカリーテ様はって!
馬鹿なの!?
当たり前でしょう!?
私はヒロイン様よ! 悪役令嬢と一緒にしないでくれない!?
「アーロン様は、貴方たちのように忠実な従者がいて、幸せ者ですね」
「そんな、ない、です」
『よく、言える……僕たちの事、鬱陶しいって思ってるのに』
『醜い、心……聞いていて、気持ち悪い』
「あら、謙遜なさる必要はないですわ。だって、アーロン様がああして、リラックスできるのも、貴方たちが居てくれるからに違いないですわ」
「あ、りが、と……ざいま、す」
よっし、テレ顔イベントクリア! これでこの双子は堕ちたわね。
もー、こいつもちょっと面倒なのよね。もっとハキハキ喋ってくんない? それと、ヒロイン様が来てるのに、なぁんでお茶しか出さないのよ! 気が利かないわね! 王宮御用達のスイーツくらい出しなさいよねー。
『普通、そんな、ない』
『常識、ない、クソ女』
**五週目**
ふっふふふっあははは!
ついにきたわ、密告イベント!
ほらほらほらぁ、早く言っちゃいなさいよ、アーロン様ぁ!
あの、聖女ぶったクソ女を見限っちゃいなさいよ!
アンタの好感度がすっかり私に傾いてんのはわかってんのよ! それにこれだけ証拠も作って持ってきてあげたんだから、勿体ぶってんじゃないわよ!
早くしなさい、ほんとーにグズなんだから!
『こんな……こんな醜い女を、私は清廉潔白だと……。エスカリーテ……ああ、エスカリーテ、君を裏切った私を許してくれ……』
「ああ、疑いようもない証拠だらけだ……一度持ち帰り、これらを精査する必要はあるが……。マリア、ありがとう。これほどの証拠を集めるのは苦労しただろう?」
「いいえ、アーロン様の、この国の為です。この国の貴族として、当然の行いです」
くっふふふ!
これで断罪イベントのフラグばっちりよ!
あの女は処刑場行きね!
ああ、顔がにやけそうになるわぁ……って駄目よ! ここは辛そうな表情をするの。本当はあのクソ女を信じてたんですぅってね!
……ぷっ! あはははは!
やっばい、マジウケる!
私のでっちあげの証拠を覗き込んで、口々に自分の婚約者をののしって、私に謝罪するなんて!
あははは!
これであのクソ女達は全員終わりね! いーい気味!
『エスカーリテ、すまない……こんな醜い女を信じたばかりに……。幼い日、私はこの国を守ると貴女に誓ったのに……』
**XX週目**
『ああ、こんなクズに……』
『天使のふりをしただけの醜い女……』
『生きる価値、無い、ゴミ』
『ゴミに、しつ、れい』
『エスカリーテ……君の声が聴きたい……君の笑顔が見たい……幸せだった、君と過ごした子供のころに、帰りたい……』
**XXX週目**
ねぇ……
いつまで繰り返すの……?
ねぇ……
どうして、皆あの女達に謝ってんの?
ねぇ……
私は、皆に愛されるヒロインでしょう? どうして、皆、酷い事言うの?
どうして私を嫌うの?
おかしいでしょ?
私は、ヒロインなのよ?
どうして?
どうして?
繰り返すたびに皆酷い事を言うの?
婚約者に謝罪するの?
婚約者に会いたいと願うの?
婚約者を好きだというの?
どうして?
私が、ヒロインなのよ?
あいつらは悪役令嬢でしょう?
私の引き立て役で、私にざまぁされるだけの存在で、死ぬだけのゴミでしょう?
どうして?
皆私を罵るの?
私を愛して貴方たち、幸せになったでしょう?
私が、貴方たちを幸せにしてあげたのよ?
ねぇ……
ねぇ……
ねぇ……
あと、何回、繰り返すの?
嫌よ……
私、前世とは違うのよ……
才能があって、友達もいて、誰もが私を認めて、私を愛して、そんな、人生を送るヒロインになったのよ……
こんなの、違う……
ヒロインが嫌われるなんておかしい……
ヒロインが罵られるなんておかしい……
ヒロインが何回も何回も殺されるなんて、おかしいでしょう!?
もういやっ!
嫌よ!
ヒロインなんて止める!
ねぇ!
もう、繰り返したくないの!
誰かっ!
誰か助けてよ!
**XXXXX週目**
ねぇ、まだ、終わらないの?
いつまで?
いつまでこうしてればいいの……?
手足は動かない。ずっと同じ、私の一生を見るだけ。目をそらすこともできない。
もう、誰も、私の事を言わない。
ずっと悪役令嬢たちに謝罪して、その素晴らしさを褒め称える。
イベントの感想一つない。
もう、ずっと、彼らのセリフが聞こえないほど、後悔と、謝罪と、懺悔と、感謝の言葉で埋め尽くされて……あのイベント、カーミルなんて言ってたかな……?
あ、バーナードが笑ってる。あれ、どんなイベントだった?
……双子がいる。
少し、困ったような顔。
何だろう? 私、何言ったんだったかな?
アーロン……。
『私』が好きな人。あれ? 私が好きなんだったかな……?
ねぇ、誰でもいい。
誰でもいいから、私を、見て。
何でもいいから、私に、声をかけて。
私の存在を無視しないで。
嫌……
どうして……?
『私』も私も、どうして皆に除け者にされるの?
無視されるの?
いないように扱われるの?
私たちの何が悪いの?
愛されたいと願って何が悪いの?
認められたい、と思って何が悪いの?
そのために努力しただけじゃない。
全てを手に入れたはずだったのに……。
お願い、誰か、私を見て。
私に話しかけて。
私を必要として。
アタシを、愛してよ……。
チョロ男はヒロインにも忘れられた。
明日はちゃんと更新します。
で、明日でラストです!
……多分><;