14 悪役ヒロイン2
短いです。
3,000文字ないです。
苦しい……苦しい……
渇く……
誰か……
誰か助けてよ……
どれだけ願っても誰も来ない。
どうしてよ……どうして、こんなことになってるの……?
私、何もしてない。
私は悪くないのに……。
どうして?
どうしてどうしてどうして?
ふっ……あはっあはははははははは……きっとこれは悪い夢。きっと今私はお城のベッドに寝ているの。目が覚めたらアーロンが傍にいて、私は王子妃になるの。それでそれで、将来は王妃様になって、イケメンたちに囲まれて幸せになるの。
『気狂いのふりは止めよ』
突然の声。
あれだけ願っても誰も来てくれなかったのに。
誰よ、貴方。
見たことのない顔。
知らない。
『我はこの国の守護神だった者。そして今、この国を滅ぼす者だ』
何それ?
何よそれ。
私が苦しいのはアンタのせいだっての?
何よ。
ああ、ヒロインの私がかまってあげなかったから拗ねてるの? でも残念。私にかまわれたいのなら、最低でもハリウッドスターか、2・5次元って言われるような美形になって出直してきてよ。
神様だとか関係ないし?
モブキャラで、モブ顔とか私興味ないの。
私は、ヒロイン。
クソな女を蹴落として、イケメンに愛されるための存在なのよ。
『なるほど。お前の死後の罰が決まった。今生を繰り返しながら、お前に侍った男どもが、お前の醜さに気づき、嫌っていく心情を永遠に聞かせてやろう』
はぁ?
何言ってんの?
今生を繰り返す?
あっははははは!
良いわよ! その度に、あのクソ女を没落させられるんでしょう? むしろご褒美じゃない! それに、男どもは毎回私に愛を囁くの! 最高よ!
『考えが足りないどうしようもない愚か者なのか、ありえないほどの楽天家なのか、判断に苦しむな』
深い溜息。
はん? 何よ。
アンタ、私がそんなこと堪えると本気で思ってるの? 馬鹿じゃないの? 私はねぇ、男に傅かれるのも好きだけど、そんなことよりはるかに好きなことがあるのよ。聖人ぶったり、頭良さげにしたり、天然ぶったりするクソ女をざまぁするのが好きなのよ。
ふふふっ次はどうしてやろうかしら?
何度だってあの女どもから攻略者達を奪ってやるわ。
次はどんな罪を被せてやろうかしら?
あっは! 最高じゃないの!
……何よ? 何でそんな馬鹿にした目をしてるのよ!
冷たい視線に、思わず睨み返す。
『今生を繰り返すだけ、と言っただろう? お前は思考できても何一つ変えることができない。お前たちは魂の牢獄に入るのだからな。ただひたすら同じ人生を繰り返し、その時思っていたことを周りの者達に延々聞かれる』
は!?
どういうことよ!?
何言ってんのか全然わかんないですけど!?
思わず立ち上がる。
『何、安心しろ。周りも口で言う反応は変わらない。ただ、お前にも相手の心の声が聞こえる。いや、むしろ口で言っている言葉よりも、心の声の方がはっきり聞こえるな。お前は、何もすることができないまま、ただ嫌われるだけの人生を延々と繰り返す。そうだな、既にあやつらのなかには愛し子や、己の婚約者だった者へ後悔と謝罪を繰り返している者もいた。繰り返したとき、初めからお前を嫌っている者もいるだろう』
はぁ……?
はぁああああ!?
何ですって!?
どういうことよ!?
どういうことなのよ!?
アイツら、私の事が好きなんでしょ!? あのクソ女たちのことなんて毛嫌いしていたじゃない!!
後悔してるって!?
謝罪してるって!?
どういうことなのよ!?
はぁああああ!?
許されると思ってんの!?
ゲームのキャラごときが、ヒロイン様に愛されてるんだから、満足してなさいよ!!
ふざけんじゃないわよ!!
『筆頭は愛し子の婚約者だった王太子だな』
あぁあああろんんんっ!!!
クソが! クソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがぁああああっ!!!
アイツがッ! あのっ私をっ疑ったクズがぁああああっ!
『良かったな。繰り返せば、そのうちお前も人の心を理解できるだろう。まぁ、理解したところで、魂が消滅するまで繰り返すから、次の生はないがな』
ふざけんなっ!!!
ああああああああああああああ!!!
くそっくそっくそっくそぉおおおおおっ!!!
『元気そうで何よりだ』
なんでっなんで掴めないのよ!!
このっ化け物がっ!!!
怒りに目の前が真っ赤になっていく。
掴みかかろうと伸ばした手はすり抜ける。
あああああああっ!!! 化け物がっ化け物がぁあああっ!!
化け物のくせに、私に何かしていいと思ってんの!?
私はヒロインよ!? 愛されるための存在よ!!
『ああ、うっかり忘れておったわ。お前に与える罰はそれだけじゃない』
はぁあああ!?
つーか、さっきから何言ってんの!!
なんで私が罰を受けないといけないのよ!!
ヒロインにそんなことして良いと思ってんの!?
バカなの!?
『なぁに、大したことではない。お前がこの事態を引き起こした元凶で、どうしてそんなことをしたのか、他の生存者たちにも教えてやっただけよ。まぁその結果、各々手に色々な物をもって、こちらに向かっているのだがな』
は!?
な、なんですって!?
『ああ、安心せよ。気が狂う事もなければ、死ぬこともない。お前たちの死ぬ日は、神である我が決めた。その日まで、何があっても、気が狂う事も、死ぬこともない。それにお前は我が愛し子を傷つけたからな。お前には祝福を与えよう。今日この時から、死ぬその瞬間まで、どんな傷も瞬時に癒える。どうだ? 嬉しかろう?』
ヒッ!?
な、何言ってんのよ!?
ふっふざけんじゃないわよ!!
そんなの祝福じゃないじゃない!! ただの呪いじゃないの!!
頭おかしいんじゃないの!?
『どうした? 自分は誰かを追いつめて殺しておきながら、自分は嫌なのか?』
あ、当たり前でしょう!?
なんで私が!!
私はヒロインなのよ!?
皆に愛されるの!
アイツは、あの女達は悪役令嬢! 嫌われて殺されるだけの存在なの!
『愚か者が!!!!』
びりびりと空気が震えた。
カッと目がどうにかなりそうな光が溢れた。
何、何、何、なんなの!? なんなのよ!!!
『神である我の愛し子を傷つけておきながら、なんという不遜! お前が手を出した相手がどのような者なのか、消滅するその時まで、身をもって知るが良い!!』
何よ、何よ、何よ!!! 知らないわよ、そんな設定!!!
そんな設定があるなら言っておきなさいよ!!
言わなかったそっちが悪いんじゃないの!!!
私のせいじゃない!!
私は悪くない!!
全部全部アンタ達が悪いのよ!!
愛し子って何よ! 神様って何よ!! 後から現れておきながら、何言ってんのよ! 最初から言っとけば良いじゃないの!!
それに、私が悪いんじゃないわよ!! あの女を裏切ったアイツらが悪いんじゃない!!
何で私ばっかりこんなメにあってんのよ!!
私は悪くない!!
私のせいじゃない!!
男の消えた牢で、私は訴える。誰も聞かないのに。
入れ替わるようにやってきた沢山の人。
牢から引きずり出された。
皆の目が、怖い。
なんなのよっ!
わ、私は、私はヒロインよ!!
私は、皆に愛されてるの!
愛、されてるのよっ!!
やめてっやめてよっいやっいやぁあああああああああああああああああああああああああああああっ!!