13 閑話6 教えて神様
「はいはい、デュー様! 食べた物ってどこにいってるんですか? 私、トイレ行ってないんですけど」
「体内に取り込まれておる。愛し子……ユリよ。そなたは魂だけの存在。排泄はない。飲食物はあくまでも我の力の塊。この空間に慣れるよう、そなたの体内に取り込まれている」
すっかり目が覚めたらしい愛し子は、元気に問いかけるようになった。
うーむ……。随分と頑強だな?
我はこのように頑強になるように創ったか? いや、創ったかもな。この世界に来ることができるように創っているのだから。
「なんか、吸収率100%って太りそうー。これが幸せ太りってやつ!?」
よくわからないことを言いながら、にこにこしている。
そもそも、魂が太るわけない……いや、あの顔はわかっておりながら言っておるな。
何故そのような無意味なことをしているのかはわからぬが、まぁ、可愛いから良いか。
「はいはい、デュー様! 私、地球の日本での記憶があるんですけど、世界っていっぱいあるんですか?」
「無論。世界は無限にある。神が管理する世界もあれば、神がいない世界。神が管理を放り出した世界。神が覇権を争う世界。……『ユリ』の世界は神がいない世界だな。人が自らの力で生きる世界だ」
何やら目がきらきらと輝いておるな。
とても楽しそうだ。
「はいはい、デュー様! えっと、愛し子って何か不思議な力をもっているんですか? この世界には、人間に魔法みたいな不思議な力はなかったと思います」
「ないわけではない。我の領域にはそのような者を創らなかっただけで、他の神の領地には居る。ただ、我は主だけが特別故、主にだけ我が力を割いてある。故に、主には我の力が一部、自由に使える。まぁ、使われたのは前回が初めてで、歴代の愛し子は、ただ人であり続けた」
今でも不思議だ。
何故愛し子たちは我が力を欲さないのか。
愛し子自身にも力を与えたのに、けしてその力を使わない。思えば、今までだって力を使えば助かることは多々あった。それなのに。
人の身で奇跡を起こすことに抵抗があるのなら、と我自身に助けを求めるように促しても応じない。
うむ、それでいえばこの愛し子は変わっておるな。転生前に力を使い、死ぬ前に我の力を欲する。初めと終わりに人ならざる力を求めた。
「はいはい、デュー様! 今私にも不思議な力が使えますか?」
「否。だがそこから出て動き回れるようになれば使えるだろう」
「ふぁーお! デュー様、デュー様! 私、使ってみたいです!」
「うむ。では、よく食べ、よく眠れ。そうして我の力を少しでも早く、その身になじませよ。そこから出られるようになったら、我が力の使い方を教えよう」
「ふぁーお! 何それ! 何のイベント!? 確実に親密イベントでしょう! バックハグで耳元で優しく囁かれたーい! それとも世の女の子たちはそんな非現実恋愛イベントこなしてきゃっきゃうふふな関係なってるのか!? うらやまけしからん!」
頬を上気させ、両手で挟み、身をよじらせる愛し子。
うむ……。よくわからんが、とりあえず喜んでいるようだ。
よきかな、よきかな。
少しずつだが、愛し子の中からアレらの存在が消えつつあるようだ。まるで下であった事など、初めからなかったかのように。
先への希望と期待が胸中を占めているようでなにより。
過去を忘れよ。先へと進め。我が愛し子よ。
そなたに似合うは幸せだ。
どうしよう。
エスカリーテ(仮)さんもポンコツになってきた……