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10 傲慢な王

短いです。

3,000文字いかないです。


 何故だ!?

 何故国が滅びるのだ!?

 この国は、神に愛された、神の加護を受けた国ではなかったのか!?

 神は、この国の守護神は何をしておるのだ!?



『愚かな事よ。我が愛し子に無体な真似をしておきながら、我が加護があると思うたか』

 光が集結し、一人の男を象る。



 何だ!?

 何が起きておる!?

 何故、儂の部屋に、許可なく人がいる!?

 ええい! 誰ぞ! 誰ぞおらんか! 狼藉ものじゃ!

 ここをどこだと思っておる! この儂の、この国で最も偉い国王である儂の部屋だぞ!

『ほぉ? 神よりも王の方が上だとほざくか。良い度胸だが、要らぬ度胸よな』

 くく、と低い笑い声。

 不快そうな声。


 な、なんだと?

 神?

 誰が?

 お主が、か?

 神、だと!?

 この国の守護神か!?

 ええい! 今頃現れよってからに!

 見よ、この惨状を! 守護神などと名乗るならば、何故このようなことになっておる! 貴様が守護神としての役割をこなしておらんかったせいだ! 全て貴様のせいだ! 今すぐどうにかせい!

『愚かしい。流石はあの愚か者の親、と言ったところか。木端ごときが我に口をきくな』

「ぎゃぁっ」

 突然上から何かに押さえつけられる。

 見えない何かはどんどんと重さを増し、儂は苦しさに声を上げようとするも、声が出ない。


 何が、何がおきておる?

 儂の身に、何がおきておる!?

 それに、何故だ?

 どうして誰もこの部屋にやってこない?

 儂が、王である、この国で一番偉い、王である儂が、このようなめに遭っているというのに、何故、誰も助けに来ぬのだ!?


『愚かさもここまでくれば賞賛に値するな』

「ぎゃぁあああっ」

 突然、肩に光の剣が突き刺さった。


 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!


 力の限り叫ぶも、誰も助けに来ない。


 何故だ!

 何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ!

 儂が、この王が、痛みを感じることがあって良いと思っているのか!?

 近衛は何をしておる! こういう時に仕事をせぬとは、何事か!?


『お前以外は理解しているのだ。神と所詮人でしかない王、どちらが敬うべき存在か、どちらが従うべきか』

 何故だ!

 神など、名ばかりで何もしておらなんだ! それに対し儂は、産まれた時から国の為に在った。常に国の事を考え、国がよりよくなるように動いてきた。どう考えても、儂の方が敬われるべきだろうが!

 大事の時にふらりと出てきて、役に立たんことをほざく者を、誰が敬う!

『愚か者が』

「ぎゃぁああああっ!」


 光の剣が四肢を貫く。


 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!

 あああああ!

 痛い痛い痛い痛い痛い!

 あああああああああああ!!!


『ああ、うるさいな。どれ、今だけ少しばかり痛みを消してやろう』

 男が手を振ると、突き抜けるような痛みが和らぐ。

 何とか思考が戻ってきた。

『そもそもお前たちなど、我の心一つよ。生きるも死ぬも、全てが我が手の内。大体お前たち木端は、我が許すからこそ我が領域で生きることができる。我が恩恵を受ける事が出来る』

 な、な、何を言っておる!

 この国は、儂の国じゃ! 何故誰かの許可がいるのだ!

『この国は、あくまでも我の領域。そして、愛し子が恙無く暮らすためだけに、お前たちが生きることを許可した』

「で、では、なぜこの国を滅ぼすのだ! 言っていることが違うではないか!」

『愛し子を殺しておきながら何を言っている。愛し子がいないのなら、必要がない。滅ぼしても問題はないだろう?』

 何を言っているのだ、と不思議そうに声を上げる男。


 な、何を言っているのだ、この男は……?

 神は、この国を守護しているのだろう?

 何故、愛し子とかいう人間一人と国を秤にかけている?

 一人と一国では重さが違うだろう? 愛し子がいようがいまいが、国は生きていける。けれど、国がなければ愛し子とやらは生きていけなかろう?

『だが、愛し子が生きていくのはこの国でなくても良かろう?』




 は……?




 な、何を……?




『もう一度言うぞ。我は、愛し子が恙無く生きていくために、国が存在することを許可している。つまりな? 愛し子が恙無く生きていけぬ国など要らぬのだよ。そもそも、神の守護を望むのなら、神の唯一の願いである、愛し子が恙無く生きていくための国を造れ、というものを叶えるべきではないか? 我が守護し、力を貸すのはそれ以上でも以下でもない』

 そ、んな……。

 そんな、勝手な……。

 そんな勝手なことが、許される、と……?

 一国が、ただ一人のため、だと……?

 その一人が、王である儂ではなく、愛し子などという、得体の知れないモノのためだと……?

 そんな、そんな理不尽が、許されるのか……?

 では、王は、儂は、何のために国を治めていたのだ……。

 儂は、道化だとでも言うのか……?

『そのとおりよ。お前たち木端など、我が愛し子のための道化。それ以外の存在価値はない。その道化が我が愛し子に手を出したのだ。許されるわけ、なかろう?』

 男が笑う。

 それはそれは優しい笑顔で。

 まるで、慈悲深い神のような。

『そもそも、お前ごときが、我を勝手と言う事自体が間違っておるのだ。ここは我の領域。お前たちはそこに我の厚意で住まわせてもらっているだけの存在。その程度の存在で、我にたてついて、追い出されないわけがなかろう?』

 な、ならば、命まで奪う必要、なかろうが!

 他国へ追い出せば良い!

 何故このような無体な真似をしたというのだ!

『お前たちが我が愛し子を殺したのだ。我が仕返しにお前たちを殺してとやかく言われる覚えはないな。全てはお前たちの行いの結果よ。それにな、神罰が与えられた者は、他国の神に拒絶される。他国に入ると同時に消し飛ぶ。どちらにせよ、死ぬしかない』



 は……?




 ……は……?




 何故……?

 何故、何故、何故?

 何故、たかだか罪人一人、殺して……?

 他国に入る事さえできない?

 どういう、ことだ?

『まぁ、もう語りかけることさえ面倒だな。お前に、我がこれ以上語りかける価値などない。守護神に見限られた王として最期を迎えると良い』

 い、嫌だ!

 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!

 やめてくれ! やめてくれ!

 見捨てないでくれ!

 最後の愚王など、嫌だ!

 儂が悪いんじゃない!

 あの者達を処刑したのは、息子のアーロンだ!

 悪いのはアーロンではないか!

 何故、何故、何故、何故、何故、何故、儂が愚王にならなければならない!

 儂じゃない! 儂は悪くない!


 床に、光の剣で縫い付けられたまま必死に懇願するも、男は何も答えない。それどころか、最早興味の欠片もないかのように背を向け、消えた。

 男が消えると同時に、四肢を貫いていた光の剣が消える。

「ぎゃぁあああああああああああ!!!!」

 突然痛みが襲ってきた。


 痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!


 バタンと音をたてて扉が開く。

 誰かが入ってきたのだが、それどころではない。

 ただただ痛みに転がりまわった。


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