誕生 Aパート
目が開けられないほどの光に包まれ、何も見えなくなった僕の視力が戻ると、さっきまでいた場所とは違う、教会の礼拝堂のようなところに立っていた。
「ここが転生先ってことかな?」
とりあえず礼拝堂の中をよく見てみようと思い、一歩踏み出すと、グニっとした何かを踏んだ。
「クッションか何か踏んだかな?ってセラムさん!」
「うう、ぐすっ!あのクソ女神めーー!うわーん!」
まだこの人、というか天使様は床で駄々をこねる子供みたいに泣いてたのか。
「セラムさん、いつまでも泣いていても仕方がないですよ、元気出してください。」
「うるさい!貴様に分かるのか!自分の聖域を失った引きこもりの気持ちが!」
厄介払いされた原因が段々と分かってきた気がする。セラムさんはまだ泣いてるしとりあえずこれからどうすれば良いんだろうか?
「あのー、すいません。教会にご用の方でしょうか?」
入り口の方から声がして振り返る修道服を着た女性が立っていた。
「いや、用というか、気がついたらここにいたというか。」
「お二人共この辺りの方じゃ無いですよね?もしかしてシルフィーア様が仰られていた使いの方ですか?」
「えっと、多分そうです。シルフィーア様にこの世界に転生させてもらったので。」
「良かったー、シルフィーア様、使いを送ると言われていたのにいつ、どこにかを言われなかったのでどうすれば良いか困ってたんですが、お会いできて良かったです。」
「あのクソ女神、相変わらず雑な仕事してますなー。」
いつのまにか泣き止んだセラムさんが隣に立っていた。
「大方自分の威厳をアピールするのに必死で肝心なこと言い忘れたんでしょ。」
「あのその羽のあるお姿はもしかして天使様ですか?」
修道服の女性に話しかけれた瞬間移動したのかと思うほどの速さでセラムさんが僕の背中に隠れた。
「しょ!そうですよ!我が名はセラム!天使ですよ!偉いんだから急に話しかけないでください!」
物凄い人見知りなんだなこの天使様。
「それは失礼しました!すいません!すいません!」
修道服の女性は物凄い勢いで頭を上げ下げしている、彼女の脳がシェイクになる前に止めなくては。
「この天使様物凄い人見知りなだけなんで気にしないでいいですよ」
「え?そうなんですか?天使様にも色々あるんですねー。」
色々とういか色物というか、とりあえず現地ガイドのような人ってこの人のことっぽいな。
「すみません、私ったら自己紹介がまだでしたね、私の名前はアリア、この教会でシスターをしています」
「僕は勇気です、六代勇気。」
「よろしくお願いします、ユウキさん。シルフィーア様からユウキさん達のこの世界での生活のお世話をするように仰せ使っています。」
「色々お世話になります。」
「まずはユウキさんの服と靴からですね。」
「え?」
言われて気が付いたけど僕の服は入院していた時のパジャマな上に、裸足だった。
「今持ってきますから少し待っていて下さい」
シスターが教会から出ていくとようやく僕の背中からセラムさんが出てきた。
「いくらなんでも人見知り過ぎません?というか僕には慣れたんですね。」
「もうあなたには色々恥ずかしいところ見られましたから。」
恥ずかしいところ見られてるっていう自覚はあったんだ。
「お待たせしましたー、お古で申し訳ないんですがこれをどうぞ。」
アリアさんが持ってきてくれたのはカソックだった。教会だからそれもそうなのか。
「着替えている間向こう向いてますね。」
「ありがとうございます。」
着替えていると視線を感じる。
「セラムさん、人の着替えガン見しないでもらえませんか。」
「いや〜、自分なかなかええ体しとるやんけ〜。」
セクハラ親父かこの天使様は。でも確かに生前に比べて体に筋肉がついてるし少し背も伸びているような気がする。
「転生させた時にあのクソ女神が肉体を弄ったんでしょ、さすがにヒョロヒョロのままで戦わせられないと思って。」
「まあ確かにあのままじゃ戦うどころか少し走っただけで倒れますからね。」
「着替え終わりましたか?」
「はい、大丈夫です。サイズもちょうど良いです」
「それは良かったです。ずっと立ち話もなんですし、家にいらしてください。この礼拝堂の隣ですから。」
「分かりました。」
僕たちが移動しようとしたとき、礼拝堂の扉が勢いよく開けられた。
「お姉ちゃん!大変!助けて!」
そう叫びながら3人の子供が飛び込んできた。
「一体何があったの?」
「砂浜で牛のお化けが暴れてるんだ!」
「セラムさん!それってもしかして!」
「もしかしなくてもゾア帝国の奴らですよ。」
「アリアさん砂浜ってどこですか?」
「この教会の近くです。ご案内します!みんなは礼拝堂に隠れてなさい。」
「うん。」
「お外には出たくないけど勇気くん僕がついていかないとプレアーブレードの使い方わかんないだろうから今回だけはついていってあげる!」
僕たちは礼拝堂を飛び出した。