7.
この度転勤しまして。
これからボチボチと更新頻度を・・・・・
上げていく・・・・
つもり!!
7.
C55-12はぐんぐん速度を上げていった。
ポポポポポボォーーーーーー!!!
短笛数回、その後長笛。
つまりは非常汽笛を鳴らして、
国境の駅、マユン峠駅で緊急停車させられた。
「動くな!フランツ皇国軍憲兵隊だ!」
「同じく国境警備隊だ!全乗務員は身分証を用意して待機せよ!」
強制的に通過線から旅客ホームへ入線させられ、あっという間に列車の周りはフランツ皇国軍で取り囲まれた。
「国境警備隊少佐、グラムだ。代表は?」
「C55-12、機関士のエトムントです。」
「エトムント機関士。臨検させてもらうぞ。仕業表と身分証、それと事業登録証を用意してくれ。」
「あーはいはい。この遅れ分は保証していただけるのでしょうね?」
「もちろん。
何もなければ公営鉄道には私から連絡しよう。」
グラム少佐は自信たっぷりにそう言った。
しぶしぶ仕業表やろくに見せることのない事業登録証、機関車の車検証などなどを見せていると、後続列車に追い抜かれた。
「ん?
遅れを気にしているのか?」
グラム少佐が俺に尋ねる。
「まぁね。あの列車よりも先に走れたのに、この後しばらくはあの列車の後ろをちんたら走らないといけないんだから。恨み言の一つでも言わせてよ。」
「ふん。まぁいい。
ところで、いくつか質問させてもらってもいいか。」
「どうぞ。」
「君は個人事業者だね。ほかに従業員は?」
「いえ。私一人です。」
「では、万が一この列車から誰かが見つかった場合は、すべて無賃乗車なんだね?」
「そうですね。
私は一切関知していません。」
「そうかね。」
グラム少佐は微笑んだ。
こいつ、確実に“この列車にあの姉妹が乗っていると思ってやがる”
2時間後・・・
「少佐・・・」
グラム少佐の部下思しき将校が当惑しきった表情で声をかけた。
そう、“この列車”からはまったく違法な点は見つからなかったのだ。
最初は協力的だったマユン峠駅もだんだんイラついている。
「グラム少佐。そろそろ次の列車が入線するのだが。この列車を早く発車させていただけないだろうか。」
マユン峠駅長がイラつきのあまり火のついていない煙草をかじっている。
「く、クソッ!貴様ぁ!
クリスティン皇女殿下をどこにやった!?」
グラム少佐が俺の胸ぐらをつかむ。
「だから知りませんよ!
こんな貨物列車に皇女なんて乗っているわけないでしょう!」
マユン峠駅長が味方の今、俺も強気だ。
「グラム少佐!!これ以上は待てぬ!
鉄道管理局へ連絡して正式に抗議させてもらう!!」
ついにマユン峠駅長がホームの鉄道電話を手に取った。
「・・・中尉。部隊を退かせろ。私は司令部に戻る。」
「ハッ!」
こうして、実に2時間以上遅れて、ようやくC55-12はマユン峠駅を発車し、フランツ皇国の国境を越えた。
クライス共和国ハスティナ県
ハスティナ貨物ターミナル
急行2166列車はどうにか遅れを取り戻し、数分遅れでハスティナに到着した。
「よぉ」
ハスティナ貨物駅の駅事務室。
ハンチング帽をかぶった年配の男が声をかけてきた。
その瞬間、俺は背筋をピンと伸ばし、30度お辞儀で敬礼。
「お疲れ様です!オーヌシ師匠!」
「フン!」
気に食わなさそうに鼻を鳴らした後、銜えていたコーンパイプを丸ごと灰皿に突っ込んだ。
「お前、なにやらとんでもないことをやっていたそうだな。」
「さ、さて・・・何のことやら・・・」
「フン。まぁいい。あのお姫さんどもは無事にレッチュベルグ方面へ向かう急行に乗り換えていたぜ。」
「さすが・・・よくご存じで・・・」
「そうさ、お前が途中駅で自分の列車からお姫さんを降ろして、本来通過の急行列車を駅に無理やり停車させて乗り込ませたことも知っている。」
「ゔ・・・・」
「馬鹿タレめ。
誰にはめられた?
ほぉ~・・・公営鉄道がねぇ・・・・」
オーヌシ師匠
俺の両親の知り合いであり、俺の師匠。鉄道についてはこの人に教わったといってもいい。
「よし、飯行くぞ。
ちと詳しい話聞かせぇや。」
「ハッ!」
俺は今日会った軍人の誰よりも上手に敬礼して、オーヌシ師匠について行ったのであった。