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国際公営鉄道(仮題)  作者: 急行 千鳥
急行2166編
6/23

5.

5.


クリスティン。見た目は15歳くらいか?金髪美人だが今は髪をまとめて俺が貸した“鉄道制服”を着て、円筒型のケピ帽の制帽をかぶっている。一見して、中性的な見た目になり、男女の判断がつかない。

一方で妹、ミーシャのほうは完全に町娘風な服装になっている。だが、手入れされてつやつやな金髪がなんともアンバランスだ。ちなみに、見た目年齢はおそらく11歳くらい。


そんな二人の手を引いて貨物駅を通り抜けた後、ふと思った。

すんげぇ目立ってたな。俺。


そう思うと少し恥ずかしくなって俺は二人の手を離した。

「とりあえず時間ないから、行きつけの食堂に入るぞ。」

しばらくここら辺を縄張りにしていた俺は、こういうでかい駅にはたいてい行きつけの宿と食堂を作っていた。

残念ながら、目の前でお上品にソーセージをナイフで切り分けながら食べている姉妹のおかげで二度とこれそうにないがな!


「はぁ~・・・」

思わずため息が出た。

ソーセージを切り分け小口でちまちま食べている姉妹の前で、切り分けもせずそのまま食べた俺は時間を持て余した。

そういえば入口に新聞があったな、と思って席を立つと、姉妹が慌てる。

「新聞を取ってくるだけだ。落ち着いて食ってろ。」


入口まで行って新聞を手に取る。


「我がフランツ軍、オスト中央部ゼーリッヒを占領!」

「軍司令部“オスト降伏まで秒読み!”」

そうか・・・。ここは姉妹にとっては敵国内だったな。



俺は新聞を戻して席に戻った。

「その・・・新聞はどうされたのですか?」

「ほかの人に取られてた。」

俺はそう言ってコーヒーをすすった。


発車まであと30分。

食事を済ませた俺らは貨物駅に戻った。

貨物駅には待合室があり、貨物利用の人たちでごった返している。


姉妹は現在、お手洗い中だ。いや、貴族風に言えば“化粧室”・・・いや、お花摘み??


・・・根っから庶民の俺には全くわからん。

「・・・にしてもおせぇな。」

ふともう一度時計を見ると、発車25分前だ。


女はトイレが長いとは言うが、遅くねぇか?

すでに15分は経っているぞ?


まさか・・・


俺は気になってトイレのほうへ行った。



「いや、ちょっとだけだって。」

「連絡先だけでいいからさ。」

「どこの所属よ?機関車は?」

「いえ・・・その・・・」


俺は予想通りの展開に頭を抱えた。

流れ者も多くいる機関士ども。ガラの悪い奴もそれなりにいる。

あれはどっかの見習機関士だろう。見事に姉妹は絡まれていた。


「はい!ちょっと失礼!

もうすぐ発車だが、何やってんだ?」

俺は語気を強めて言った。

「なんだお前?」

ガラの悪い若造が俺につっかかる。

「お前こそなんだ?それともうちの貨物の発車遅延報告書にお前の名前を書かれたいか?

所属と氏名は?正式に抗議してやるから。」

「チッ」

俺に突っかかってきた見習機関士はほかの2名に引っ張られるようにして去っていった。


俺はそのまま姉妹を引っ張ってC55-12へ押し込む。

「・・・ありがとうございました。」

姉が小さい声で言った。

「お姉ちゃんは悪くない!悪いのは私です!ごめんなさい!」

突然妹が大声で言ったので、俺は驚いて思わず石炭をこぼした。ふと我に返り、すくったままの石炭を適当に罐に投げ込む。

こういわれると、俺もこれ以上悪態もつけない。


「フーッ」

俺はため息をつくと、姉妹にカードを二つ差し出した。

姉妹は不思議そうな顔をしながら、それを受け取る。

「身分証だ。」

「え・・・?」「身分証・・・?」

姉妹はきょとんとしている。

「とりあえず、姉はC55-12付き車掌、妹は機関士見習い兼運転補助員ってことにしておいた。よってこれである程度鉄道が身分を保証してくれるし、“一企業として”C55-12があんたら姉妹の身分を保証する。」


これは、賭けだ。

いや、すでに勝手に賭けは始まっている。


途中、敵国内でこの姉妹の身柄が拘束されれば、俺は共犯として下手すれば死罪。鉄道も、明確な犯罪行為をかばいきれないだろう。どころか、見捨てるだろう。すでに扱いは捨て駒であることはわかっている。

つまり、俺は最低でも姉妹を敵国内から連れ出さなければ負けだ。


一瞬のごまかしにすぎないだろうが、身分証を発行しておいた。ほぼ、気休めだ。

詳しく調査されれば、姉妹の正体くらいバレるだろう。



「ありがとうございます。このご恩は一生忘れません!」

姉が目に涙を浮かべて感謝する。

「お前らがつかまろうもんなら、俺の明日はないからな・・・」

「・・・すいません。」


その時だった。

「クリスティン皇女殿下ですね?


フランツ皇国憲兵隊です。」

































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