22.
22.
「皇帝のご帰還だ!」
「強大な帝国のためにー!!」
群衆が武器や農具を手に通りを駆け抜ける。
「群衆に告ぐ!今すぐ解散しなければ全員逮捕するぞぉお!!」
警察か軍かはわからないが、騎馬兵が騎馬隊の先頭で叫ぶ。
「帝国のためにー!」
「発砲許可が出た!全員発砲許可がでたぞフュ」
次の命令を発しようとした騎馬隊長はそれができなかった。
なぜなら、彼の目の前にいたのは騎馬隊で蹴散らせる群衆ではなく、完全武装の軍隊だったからだ。
騎馬隊長は自分の首に穴が開いたこともわからず、絶命した。
「親父!どうなっている!」
俺は留置線の事務所へ駆け込んだ。
“こちらは陸軍第3師団です!帝国民の皆様、我々第3師団は帝国民のために立ち上がりました!皇帝の血筋をひかれるアイリーナ・アブロシキン皇女の名のもと、立ち上がるのだ!連邦議会堂を確保するのだ!
再び偉大なる帝国を!
私はアイリーナ・アプロシキンです。長くフルカ皇国へ行っていましたが、おばあさまの国を助けるため、戻ってきました!
市民の皆様、あの笑って過ごせる帝国へもう一度戻るため、力を貸してください!”
アファナシェフスキー親父は呆然としながらラジオを聞いていた。
ラジオからは市民蜂起を呼びかける放送が繰り返されている。
「ああ、そうか・・・」
アファナシェフスキー親父はゆっくりと俺をみた。
「あんたたち、皇女様を連れ帰ってくれたのか・・・。」
アファナシェフスキー親父はゆっくりと膝をつき
「ありがとう・・・ありがとう・・・」と俺に向けて手を合わせ始めた。
俺はそれどころではない。
“はめられた!またはめられた!!
あの生意気少女、アプロシキン皇帝家の血を引いていたのか。
つまり、俺たちは・・・
革命の旗印を運んできてしまったのか!!”
C55-12へ走り込み、罐に石炭を矢継ぎ早にくべた。
蒸気機関車はすぐには発車できない。罐に少しだけ残ったとろ火を起こし、しっかり蒸気をため込まなければ動けないのだ。
車内電話でネルを呼び出す。
「ネル!緊急出発する!ヨルクは乗っているか!」
“いまそちらへ向かいました!”
ちょうどその時、ヨルクが運転台に入ってきた。
「ヨルク!準備でき次第発車するぞ!客車に戻ってろ!」
場内入換用の無線を取り、信号場を呼び出す。
「アダミーシン大帝駅信号場!こちらC55-12!緊急出発申請を行う!きこえるか!?」
「エト坊ちゃま」
「ヨルク車掌!客車に戻れ!聞こえなかったのか!?」
「エトムント機関士!!!」
ヨルクの初めて聞く大声に、俺は思わず振り返った。
「どうした・・・?ヨルク、今はそれどころではないのがわからないのか?
これは戦争ではない。紛争、いや、内乱だぞ?
公営鉄道の独立性が通用しない状態だぞ?」
先述の通り、公営鉄道は国家からの半独立性がある。
これは一種の脅迫で成り立っている。
国家が国際公営鉄道に下手に逆らえば、国内外の物流を担う鉄道に制限をかけられてしまい、大損害が出る。一方で国際公営鉄道もやりすぎれば、国家が無理やり鉄道を占領、運営をする可能性もある。よってどちらも強く出れずの力関係が続いている。
ところが今回はその例外だ。
特に内乱は、鉄道に被害が出ても“勝てば官軍負ければ賊軍”の方式で、「相手がやりました。国内犯罪です。法律にのっとって処罰しました。以上です。」で終わってしまう。
そして、どちらが勝つにせよ、この国はしばらく大混乱だ。治安の悪化で列車が襲われることも増えるし、軍隊の移動でダイヤはメチャクチャ、その軍隊の移動を阻止しようと敵対組織が線路や鉄橋を破壊することもある。
とにかくいち早く逃げるのが先決だ。
「エトムント機関士。出発は取りやめていただきたい。」
「ヨルク、何を言っているんだ?こんな危険な状況で。」
「この列車には、万が一の際にアイシャ様の脱出を支援していただきます。」
「馬鹿を言うな!できるわけないだろう!
万が一だと?その場合、ライーズ連邦は内乱を起こした重犯罪人を是が非でも捕まえに来るぞ!そんな状態で、国際公営鉄道の独立性なんて通用するわけないだろうが!
俺の立場はどうなる?今後、フルカ皇国側の人間として見られて、フルカ皇国と付き合いの悪い国で商売できると思っているのか!?
ヨルク車掌、これは機関士として、この列車を預かるものとしての命令だ。準備でき次第出発する。客車へ戻れ!」
“待たせたな。こちらアダミーシン大帝駅場内信号場だ。C55-12、応答せよ。”
「緊急出発を申請する。」
“承知した。込み合っているから準備ができたらまた呼び出す!”
パァン!
運転台に発砲音が響いた。
「エト坊ちゃま。お許しください。出発を・・・取りやめてください。」
ヨルクは拳銃を構えていた。




