21.
お久しぶりです。
続きが書けたので更新します。
今後の更新頻度は・・・・
21.
ライーズ連邦。
2年前の政変で、国内事情は大きく変わってしまっていた。
「2年前の政変で、国家社会主義が始まりました。
すべてを国が管理し、計画経済によってすべてを決めるこの政治方針によって、民間市場は崩壊しました。
すべての食べ物、日用品は配給券がないと買えません。
換金所で換金すれば配給券が手に入りますが、あまりお勧めはしません。
交換レートも悪いですし、配給券を使える場所は長蛇の列です。
そのくらいなら駅周辺で“リョウ”の使用が認められている店で買い物したほうが、はるかにお得です。」
アファナシェフスキー親父はため息をつきながら言った。
「つまり、市場相場管理主義ですか。」
ヨルクがつぶやくように言った。
「ああ、あれか。」
元々、市場相場管理主義は大恐慌に陥ったとある国がやむなく始めた政策で、多大なる犠牲を伴ったがいち早く経済が復活したとして一定の評価を得ていた政策だ。今でも取り入れている国は少なくはない。
「ということは、観光なんていうのは」
「できる場所もありますが、お勧めはしません。ただ、公営鉄道通貨リョウの力は絶大ですので、買い物だけ済ませて早めに出発されることをお勧めします。
うちで仲介して信頼できる業者をご紹介することもできますので・・・。」
その夜、俺、ヨルク、ネルの三人で食堂車に集まった。
「ここの主人と一緒に“信頼できる業者”のところへ行ってきましたが、品質はまぁまぁ、値段は恐ろしく安かったです。すでにいくつか買い付けきましたので、明日には納品されます。」
ヨルクが領収書の束を俺に渡す。簡単に目を通したが、計算するまでもなく安い。合計額なんて桁が違う。
「経験上、こういうきな臭い国は早く出るに限る。することもないしな。飯もまずいし。」
実はアファナシェフスキー親父にいくらかリョウを支払い、食事券を手に入れて「人民食堂」とやらに行ってみた。「人民食堂」とは国営の食堂とのことで、食事券があれば食事がとれる食堂である。どでかい寸動鍋で適当に煮込まれたよくわからない料理は、トマトの酸味が異常なほど強く、すっぱくて食べるのも苦労するほどであった。
食堂の帰り、路地裏を除けば社会システムからはみ出してしまった人がたまっていた。
この数が多ければ多いほど、その国はやばいのだ。
「私も早く出発することに賛成です。どうも監視されているみたいで・・・」
ネルが少しおびえたように言う。
「監視、ねぇ・・・。まぁ外交使節を乗せてきた列車だし、お世辞にもフルカ皇国とライーズ連邦は友好国ではないからね。監視はあるだろう。まぁ、変なことをしなければ大丈夫だよ。」
「・・・坊ちゃまがそういうなら、気にしないことにします。」
ネルはそう言ってくれたが、あまり居心地はよくなさそうだ。
「明日にでも駅へ行って帰路の申請をしてくる。だから今夜はゆっくり体を休めてくれ。」
翌日
ライーズ連邦
アダミーシン大帝駅
朝一番で行くと駅はたいてい込み合っているので、少しタイミングをずらして昼前に行ってみた。
狙い通り、機関士向けの駅窓口はすいていた。
「要件は?」
顔色の悪いお姉さんがぶっきらぼうに聞いてくる。
「客車回送の依頼を受けている。今日か明日、フルカ皇国方面まで。」
正確には依頼の復路だが、まぁ前半は省略していいだろう。
「営業はしますか?」
「回送だ。営業はしない。」
「承知しました。少しお待ちください。」
お姉さんがぶっきらぼうにダイヤ表を開くと、奥から声がかかった。
「ダイン君!少し向こうを手伝ってくれ!」
「ええ!?いま対応中・・・」
「いいから、僕が変わるから」
そういってカウンターの向こうはぶっきらぼうなお姉さんからお兄さんに変わった。
「ええと、フルカ皇国方面でしたっけ。ルートは指定ありますか?」
「大帝本線からマイネス諸国連邦を抜けるつもりだけど、ほかにいいルートでもあるのか?」
「いえ、そちらが王道ルートです。たまに、こちらのネス湖畔を通るルートを選択される方がいるので。」
「そんなルートがあるのか。」
手持ちの路線図には載っていなかったルートだ。
「ネス湖畔で木材伐採が始まりまして。新たに町が開拓されたんです。その結果できたルートですね。ただ、本線ほどしっかりした線路でもないですし、使う方は少数です。」
「ほぉ~。まぁいいや。王道ルートで。」
「承知しました。発車希望日はありますか?」
「今日か明日で。」
「でしたら明日午前2時に急行貨物のスジがあります。これでマイネス諸国連邦のバンダゾコまでダイヤを確保できますが、いかがでしょうか。」
「急行貨物?貨車を牽くつもりはないぞ。」
「ええ、最近使われていないスジですので、大丈夫です。」
「わかった。それにするよ。」
愛想のいいお兄さんに別れを告げ、俺は再度仮眠をとるためにC55-12へ帰った。
「エト!起きて!大変よ!」
ネルが激しく俺の体をゆすった。
「今度は何だぁ!?もう誰も乗ってないぞ!」
若干のデジャブを感じながら起きると、窓の外が明るくなっていた。
驚いて仮眠していた荷物車から外に出ると、
町は真っ赤に燃えていた。




