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国際公営鉄道(仮題)  作者: 急行 千鳥
ライーズ連邦編
21/23

20.

お待たせしました。急行千鳥です。

コロナも落ち着いたので、ようやく旅行再開です。

ただ、仕事が忙しくなってきました・・・。

20.

列車はマイネス諸国連邦を抜け、ライーズ連邦に入った。


金色の麦畑の中を横切るように疾走していく。

「まったく・・・ようやく飛ばせるぜ・・・。」

俺はC55-12の運転台で思わずぼやいた。


あの事件の後、逃げるように出発した俺たちだったが、正式に乗客となった、というには若干疑問が残る生意気娘アイリーナの態度は大きくなり、堂々と食堂車に居座ってはメニューにないあれば食べたい、ここは昔来たことがあるから停車してほしい、海が見たいからルートを変更してくれなどなど・・・。


そのたびに駅や信号場と調整し、関係各所と鉄道電話と連絡筒で調整する俺としては、たまったものではなかった。


ライーズ連邦

大帝本線

30番水路駅


ここで給水のため1時間ほど停車となった。

駅名がなんとも味気ないが、その命名元となった30番水路をはじめとする水路は、アダミーシン大帝市を支える大穀倉地帯に欠かせないものである。なんでも数代前の皇帝がアダミーシン大帝市周辺に広がる草原を大穀倉地帯にするため整備された高架水路で、駅から見ると地平線のかなたから石造りのアーチ橋のような水路橋が延々と続いているのだ。この水路が穀倉地帯にぽつぽつある村や畑作に利用されるのだ。


ボシューーー

隣の列車を見ると、C55-12より一回り大きい機関車が、これまた何十両も貨車をつないで停車していた。

C55-12と比べると、まるで縮尺の違うおもちゃを並べたようだ。


給水のためにやってきた若い駅員に聞いてみた。

「あれ、ずいぶんでかい機関車だが、ここらへんでは多いのか?」

「ああ、あんたは遠くから来たんだな。」

意味が分からず首をかしげると、駅員が説明してくれた。

「あの機関車はライーズ連邦とその周辺でだけ使われる大型機関車だ。たしか“FD20型”とか言ったかな。大半はライーズ連邦政府が直接所有しているが、たまに個人所有もある。だけど大型で出力もでかい分、走れる線区も限られていてな。その結果、ライーズ連邦周辺でだけ使われて、この機関車を初めて見る奴はよそ者ってわかるわけさ。」

そういうと駅員は炭水車に上って行って給水の準備に入った。


「なるほどなぁ・・・」

それにしても、やけに蒸気漏れが多いのは気のせいか・・・。


「コラー!列車に近づくなぁー!」

警笛をふきながら小太りの警官が列車に近づいていた連中を追い払う。


「今度は何です?無賃乗車?」

給水塔から給水ホースを引っ張りながら若い駅員が答えてくれた。

「いや、正確には無賃ではないんですがね。この国では国民が旅行するには“旅行券”が必要なんですよ。」

「旅行券?」

「たぶん、あなたの思っている旅行券とは違って、実態は“旅行許可証”といったところですね。一人当たり配給される枚数が決まっていて、裏取引も多いのだとか。

彼らはどこからか公営鉄道通貨を手に入れて切符を持っているので私ら駅員も取り締まりませんし、警官も公営鉄道施設内なのと“まだ”旅行前ということもあって脅すだけです。」

「・・・なんだかずいぶん微妙な時期に来た?」

「・・・ぜひともアダミーシン大帝駅に着いたら駅事務所に顔を出すことをお勧めします。」

駅員のこの発言を要約すると“いろいろやばいから大きな駅で情報収集したほうがいいよ”ということだ。


炭水車の水タンクと不安をいっぱいにして、C55-12は30番水路駅を後にした。




「アダミーシン大帝駅!アダミーシン大帝駅!ご乗車ぁありがとうございましたぁ!」

演劇のような口調で構内放送が鳴り響く。

列車はついに、アダミーシン大帝駅へ到着した。

「ようこそ。駐在武官殿。私、ライーズ連邦陸軍大佐、シュトヴァーネルと申します。」

「アイシャ・ミロネス。フルカ皇国陸軍中佐です。陸軍外事局の大佐殿がお出迎えとは、恐れ入ります。」

というようなやり取りを、俺は少し離れていたC55-12の運転台から眺めていた。

「うひゃ~、あの二人の間に火花が見える。」

「ほんとにね~」

いつの間にか運転台に来ていたネルとひそひそ話。

そして、一行が完全に駅を出たのを見届ける。


「ふぃ~」

やっと一息付けた。

依頼は“アイシャ姉さん一行をアダミーシン大帝駅まで送り届けること。”

一応の往復以来ではあるが、復路は客車の返却だ。


ホームを通ってヨルクも運転台にやってきた。

「お疲れさまでした。」

「ヨルクもお疲れ様。とりあえず一度留置線に入って一息つこう。」

しばらくしてようやくやってきたやる気のない信号係の誘導で、C55-12はアダミーシン大帝駅から少し離れた貨物駅わきの民間企業の留置線に落ち着いた。


「当留置線をご利用いただきありがとうございます。私、この留置線を経営しておりますアファナシェフスキーと申します。何かありましたら出入り口の事務所に私か妻が詰めておりますので何なりとお申し付けください。

ご入用でしたら観光案内から補給物品の手配まで承っております。」

留置したらやたら低姿勢なハゲおやじがあいさつに来た。

民間の留置線はピンキリが激しく、質が一定な公営鉄道の留置線のほうが安心である。今回は以前来たときによさそうな民間留置線を見つけていたのでそこにしてみた。


「C55-12オーナーのエトムントです。お世話になります。

とりあえず3日分よろしくお願いします。

あと、水と石炭を補給したのですが、お値段は?」

「水は無料サービスです。石炭は100リョウ/1tです。」

「え?」

思わず驚いた。

破格すぎる値段だ。

C55-12は炭水車におおよそ水17t、石炭12tを積載できる。

仮にすっからかんの状態から石炭を満タンにして、たった1700リョウ?

公営ならこの10倍、いや地域によっては100倍も珍しくはない。

「あ、高かったですかね・・・。これでもがんばって値下げを」

「いやいや、安さに驚いただけです。ずいぶん安いですね。」

「ええ、ライーズ連邦では石炭はよく出ますからね。アダミーシン大帝市近郊にも2か所炭鉱があって、ほかのところと比べて運賃もかからないので安く仕入れられるのですよ。」

「へぇ~。

あとは換金所はどこかな。」

「へ?換金ですか?」


換金所とは、公営鉄道通貨リョウを現地の通貨に両替するための換金所で、これも国際的に珍しくはない。


「お客さん・・・。お言葉ですが、換金しないほうがいいと思いますよ。」


どゆこと!?









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