17.
お久しぶりです。
急行 千鳥です。
コロナのせいでつまらない日々、小説書くのもどうにもはかどりません。
(・・・その前から更新遅いのは指摘しないのが暗黙のルールです)
17.
C55-12に率いられた貸切列車は、アイシャ姉さん一行を乗せてサクセルン中央駅5番線を発車した。
「それで、なんで姉さんが運転台にいるの?」
「何よ。久々に会った弟と話をするために決まっているじゃない。」
「いや、普通運転台に一般人立ち入り禁止なんだけど」
「軍人だから一般人じゃないわ」
「いや、そういう話じゃなくてね?」
この姉は昔から変わらない。
がさつでお転婆で、ダンスよりも剣術と射撃のほうが得意だった。
弟、という立場でありながら“将来大丈夫だろうか”といつも思っていたのだが・・・。
俺が22歳だからアイシャ姉さんは27歳。それでいて陸軍中佐とは、相当なエリートコースを歩んでいるらしい。
「それで?なんで家出なんてしたの?」
「・・・答えたくない。」
「いいじゃん。教えてよ。」
アイシャ姉さんは昔と変わらず、肩に手を置いて俺の頬をつんつんしてくる。
「あーもう!運転中にベタベタするな!」
ほんとに昔から変わらない・・・。
「で?姉さんこそ結婚は?」
「・・・」
「あれ?姉さん?」
「・・・エト・・・ここはまだフルカ皇国内だから、私が剣を抜いても“治安維持”だよね?」
「すんませんでしたぁ!」
・・・と言いながら俺は加減弁をひいて少しでもフルカ皇国を少しでも早く出るべく加速した。
「ところで・・・今回仕立てたこの列車は何なの?まさかとは思うけど、姉さんの旅行や仕事で仕立てた列車じゃないよね?」
「表向きは、私のライーズ連邦、アダミーシン大帝市にある大使館に私が就任する、ということになっている。」
「いくら何でも無理筋過ぎない?言っては悪いけどせいぜい陸軍中佐程度に7両編成の貸切列車?俺の知っている限りせいぜい客車1~2両仕立てて定期列車に連結する程度だ。」
「あー、肩書はそっちじゃなくて、侯爵家のほう。」
「あ、そっちな。
んで、本当のところは?」
「・・・職務上・・・ちょっと・・・。」
「わかった。詳しくは聞かないけど、お偉いさんが乗っている感じ?」
「まぁ、そんなところ。」
フルカ皇国とマイネス諸侯連邦の国境
カタカ操車場
「ここで入国審査があるから数時間停車するよ。姉さんは今回“外交特権”の範疇になるから客車1両分の審査はないから、3号車の寝台貴賓室にいてくれ。入国審査官には3号車は外交特権だと伝えておくから。」
「了解した。
それにしても外交特権まで知っているとは。」
「外交関連の列車は初めてではないしね。
ほら、早く3号車に戻ってくれ。入国審査官には姉さんから挨拶してもらわないといけないんだから。」
「はいはい。弟も少し見ないうちに立派になったんだねぇ。」
姉さんが戻ったあと、今度はヨルクが運転台に来た。
「お疲れ様、ヨルク」
「坊ちゃまもお疲れ様です。
紅茶でもいかがですか?」
「さすが。
仮眠前にはもってこいだ。」
ヨルクは紅茶とソーセージ、ポテトなどの軽食を持ってきてくれた。
「んで、あまり詮索はしたくないが、実際の乗客はどんな感じだ?」
「おそらくは、フルカ皇国の皇族かと。しかも現皇帝と近しい方かと。」
「まじかよ。」
「3号車の前後のデッキには陸軍兵が立ち、厳重に警護しています。ネルや私が3号車を通る時も毎回その兵に許可を得なければ通れないほどです。
ですが私が見るに・・・あれは陸軍兵ではありませんな。おそらくは近衛兵でしょう。」
「近衛兵、か。」
「近衛兵は陸軍の部隊ではあるが陸軍の管轄ではなく、皇帝の直轄部隊。
私もかつて軍にいたことがございますが、なんといいますか・・・やはり“風”が違いますな。」
「“風”ねぇ」
「文化とでも言いますか。陸軍には陸軍の文化が、その中でも歩兵には歩兵の文化、工兵には工兵の文化、戦車兵には戦車兵の文化、補給兵には補給兵の文化があります。」
「なるほど。
俺も軍経験はあるけど・・・あれは貴族のお遊び程度だからな。」
「・・・まぁ、否定はしません。あれはあれで必要な学問です。ですが、私の経験したのは、その下の経験です。」
つまり、指揮官の下、兵士としての経験か・・・。
「少し、長く話過ぎましたな。仮眠をとられるとのこと。
長話はお邪魔でしょう。
失礼します。」
ヨルクは客車へ戻っていった。
C55-12の仮眠スペースに寝転がる。
すでに使い古した枕に頭を置いたつもりだったが、感触が違った。
やわらかい。
「やっぱりいくつになっても、エト坊ちゃまは変わりませんね。」
「!!?ネル!?」
「こういうときでもないと、坊ちゃまに触れられないでしょう?」
「あの・・・こっぱずかしいんだけど。」
「おとなしくしてなさい」
「はい・・・」
なぜにそこまで迫力顔・・・。
「あなたがいない間、結構寂しかったんだから。その分補充させなさい。」
「何を!?」
「なんでもいいでしょ。こうして膝枕とかで勝手に補充するから。」
「いや、はずかしい・・・」
「あの~、いちゃついているとこわりぃんだけど・・・出国審査なんやが・・・」
「・・・・」
俺はしばらく恥ずかしくてフリーズした。




