9.
出向して別の企業に勤め始めました。
出向元より出向先のほうが天職だと感じ始めている今日この頃。
9.
プシュゥゥゥ・・・
「どはぁ~~」
C55-12と俺は同時にため息(ため蒸気)をついた。
「なめてたわ~。通勤ラッシュ・・・」
ただでさえ減便気味の通勤列車。そこに人が殺到するのは当たり前であった。
が、
「ぜって~乗車率200%いってたよ、あれ」
デッキにも人があふれかえり、客車の屋根、ついには最後尾の客車の連結器の上にまで人が乗っていた。
「車掌の女の子は丁寧だったけど、二度とやりたくねぇ・・・」
駆け寄ってきた庫内手の小僧にチップを渡し、C55-12の管理を任せ、俺は身一つでホテルを目指して歩き始めた。
時刻は22時過ぎ。
終列車まではまだ時間がある。
ホテルまで歩いていける距離ではあるが、歩きたくない。
都市交通鉄道に乗っていくか・・・。
そう思って1番線に行った時だった。
「やめて!!」
すでに人が少なく静かな駅構内に女性の大声が響いた。
1番線、俺から100m先、女性ともみあっている黒服黒メガネ2名、指揮官らしき黒服1名。
「協力願えますか?」
後ろからやってきた若い駅員。手には長棒。駅員が治安維持活動時に使用するための物だ。
「もう少ししたら当直助役が増援を連れてきます。それまででもお願いします。」
「あとで報酬はもらいますよ!」
しぶしぶ俺も構えるが・・・
丸腰なんですけど!!
「貴様ら!邪魔するなら鉄道職員とて容赦しないぞ!」
黒服指揮官が叫ぶ。
「うるせぇ!うちの職員に何してやがる!」
職員!?
確かによく見れば襲われている女性、公営鉄道の制服着てるぞ!
黒服が何かつぶやく。
「うわぁあああ!!!」
その数秒後、背後の改札口から駅員の悲鳴が聞こえた。
思わず振り向くと、黒服が大量発生していた。
「な、なんじゃこりゃーーー!!!」
俺も悲鳴を上げる。
「ぜ、全員入場券買っているんだろうなぁああ!?」
若駅員君!?今そこ!?
俺たちは走り出した。
走り出さざるを得なかった。
だって背後から100人以上黒服来てんだもん!
「俺がこのまま突っ込んで隙を作ります。その間に機関士さんは職員を頼みます!」
「マジかよ・・・」
あーもー泣きたい!!
「鉄道公安法第8条に基づき治安取り締まりを執行す」
バキ!
「るぅぅぅぅ・・・・」
若駅員君、突撃するも黒服リーダーのけり一発で吹き飛ぶ。
オィイイイイイイイ!!
そのすきに黒服リーダーの脇を抜け、職員を担ぎ上げる。
っていうか職員抑えていた黒服弱!!
若駅員君もだけど!
そのまま線路を無断横断し、俺はC55-12まで逃げ帰った。
「何者なんだよあいつら・・・」
全力疾走でC55-12まで逃げ帰り、無意識に抱えていたものを機関室へ放り込んだ。機関車の運転台は高い位置にあり、ステップを登らないとならない。よって“抱えていたもの”を先に機関室へ置かなければ入れないのだ。
「キャッ」
キャ?
何の声だ?
ここで冷静に振り返る。
そういえば“抱えていたもの”って・・・
「助けでくださったことにはお礼を言いますが、何も投げ込まなくても・・・」
「あ、ごめん・・・いつもの癖で・・・」
助けた職員さんだった・・・。
ゥウウウウウウウウウウウウウー
機関区内に警報が鳴り始めた。
「侵入者!機関区に侵入者ありーーー!」
庫内手が叫びまわる。
公営鉄道公安官が飛び出してくる。
ただでさえ薄暗い機関区構内。黒服との乱戦は混乱状態となった。
「さて、大人しく発車してもらいましょうかね。」
後頭部に何かを押し付けられた。
この筒っぽいもの。
確実に、銃だろう。
そっと支線を横に移すと、助けた職員も別の人物がショットガンを向けている。
「できれば殺しはしたくないんだ。公営鉄道関係者を殺すと面倒だからね。
だけど我々は、必要とあらば殺すよ。」
男とも女とも判別つきにくい声で俺の後ろの黒服が言った。
「・・・しかし進路が・・・。どの線路に入るかわからんぞ。」
「大丈夫だ。信号所は抑えてある。君はこのまま走らせればいい。」
俺はおとなしく運転席につき、蒸気を上げ始めた。
最近のマイブーム;麦飯




