第六話 アサシン、痕跡を追おう。
しばらく出てこないので、おかしいと思ったヴォンモは入国管理局の建物の衝立に囲まれた小部屋を見ると、来栖ミツルの姿がきれいさっぱり消えていた。
そこで待たされているブランク三十年の老人にたずねたら、医務室へ連れていかれていて、医務室には〈急用につき本日終了〉の札が下がっていた。
「酔っ払ったんだよ」
通りがかりのアサシンが教えた。
「酔っ払った?」
「しょっちゅうだよ」
「あの、ここに来ていた老人がどこに行ったか知りませんか?」
「あそこの小役人にきいてみてくれ。なんでも老人の抹殺命令を持っていったとかで――」
次の瞬間にはアサシン役人の心臓と喉笛にヴォンモとジャックのナイフが突き立った――のは、ギリギリで防げた。クレオが両手の短剣でふたりの斬撃を受けてしのいだからだ。
「きみたちも来栖ミツルのことになると、後先考えないね。クックック。きみ、大丈夫かい?」
「ええ」
命の危機にもかかわらず、役人は淡々としていた。役人というものは自分の担当する書類以外のことには無関心なものだし、そもそも徴税局の差し押さえ係にいたころにはこの手の殺人未遂が日常茶飯事だったのだ。
「オーナーがどこに行ったか、全部吐け。今度は殺す」
「ジャック。そういうふうにつっけんどんなきき方したら、入る情報も入らなくなる。ククッ。まあ、僕に任せてくれ。役人の扱いには自信がある」
役人の言い分を信用するなら、来栖ミツルはヨシュアとリサークと一緒にいる。
少女暗殺者用の店の前で、感動に打ち震えるほどの戦いがあったこと、老人がリボンと服を買い、リボンはリボンで包装し、服のほうは焼いてしまうことが分かる。
ヨシュアとリサークはお互い殺し合っている限り、来栖ミツルはまだ無事だ。
こういうとき、中世ヨーロッパ風異世界には公示人という便利な職業がある。
報せをあちこちに吹聴させ、広く知らしめる。
ざっと十人ほどの公示人を雇うと、彼らにこう言わせた。
「迷子のヴィンチェンゾ・クルスちゃん。迷子のヴィンチェンゾ・クルスちゃん。保護者がお待ちです。少女暗殺者専門店まで来てください」




