第二十四話 選挙戦、肉弾戦のスケッチ。
ロス・サイディ通りの票を棍棒で取りまとめしようとしたフレデリーチョ陣営のパンチョ・ナヴァルという男がウミガメのパイで有名なドンツ料理店に入った途端、銃声がして、よろめきながら、外に出て、潮のにおいがする泥に頭から突っ込んで倒れた。
それとほぼ同時刻、ヨシュア&リサーク陣営の酒場に火薬入りのパン生地が放り込まれて爆発してて、店の持ち主の五体が爆ぜた。
酒場の持ち主の弟がすぐに報復し、下手人の口に火薬入りのパン生地を突っ込んで、火をつけた。
エル・ヴェラーコの頭目であるムシュー・グレミオンが対立組織エル・ジェリコの酒場をまた燃やし、逃げ出した客たちに無差別に銃撃やクロスボウを撃った。
さらに蟹漁師ドランチョの山椒魚焼酎密造所として町外れの倉庫を来栖ミツルと見に行ったとき、ふたりの騎馬の男がピストルを乱射して逃げ、そのうちひとりがリサークの放ったスローイング・ダガーで眉間を貫かれ絶命した。
来栖ミツルは今夜中に徹底した報復が必要と考え、アレンカをヨッ、大統領!と持ち上げて、なんとかつくらせたシーフード・スパゲッティ爆弾を仕掛けることにした。
稼ぎが少ないと峰打ちでいたぶられた三番目と八番目の妻の密告でムシュー・グレミオンの行きつけのド・クッラ料理店のことを知ると、早速スパゲッティ爆弾を仕掛けて、ちょっと自信が戻ったアレンカ自身が給仕した。ムシュー・グレミオンはこれでおもちゃでも買え、と言って、アレンカに小銭を握らせ、粉末チーズを念入りにかけ、物質Dを念入りに仕込んだフォークをスパゲッティに突っ込んだ。スパゲッティ魔法工学の連鎖反応がEからYまでを早口で唱え、爆発物Zとなった。
地元警吏の検死報告ではムシュー・グレミオンの顔と両手はきれいに吹き飛んでいた。
抗争はエル・ヴェラーコからカンパニー本体への攻撃に向かい、〈提督〉は軍用ガレオンに主要な士官を呼び、若くして重役に抜擢された航海大尉が、ぽっと出に地元マフィアなどカンパニーの敵ではないと豪語し、みながそうだそうだとはやした。
早速、私兵を率いて上陸し、エル・ジェリコの幹部宅を焼き討ちし、ペスカディーリャ通りの選挙対策本部を襲い、銃弾を三発撃ち込んだ。
航海大尉はその夜、ラ・ペッラ通りのサルヴァドル料理店で勝利も近いと酒盛りをし、ちょっと小便をしてくると言って、席を外して、二度と戻ってこなかった……。




