第十二話 ラケッティア、結成ガールズ・ギャング。
ペスカディーリャ通りに倉庫兼選挙対策本部を借りて、〈命の水〉の箱を山と積み上げると、泡沫候補たちのときめく公約が耳に入ってくる。
刑罰は火あぶりに統一とか、毎月八日と十八日は全裸の日とするとか、国際的なヌーディスト・ビーチ・シンジケートを立ち上げるとか。
どうせ破られるなら面白おかしい公約のほうがいいという末期的選挙観が選挙制度確立以前に存在することの是非はさておき、おれたちも選挙ギャングを結成する必要がでてきた。
「選挙ギャング結成ーっ!」
「わーわーわーなのです」
とはいえ、この選挙はガールズたちのみで行うことが決定しているので、選挙ギャングは四名で固定化。
「大丈夫? ちゃんと票の取りまとめとかできる?」
「知ってるよ。道行く人に剣突きつけてヨシュアかリサークに投票しろって脅かせばいいんでしょ?」
「なんだ、よく分かってるじゃん」
「どーんと任せてよ!」
「わたし、もうちょっと複雑なものだと思ってたけど」
「基本的には銀貨か鉛弾かの二択」
「アレンカも! アレンカもなにかしたいのです!」
「じゃあ、他の立候補者のまわりに竜巻つくって」
「オーケーなのです!」
「……わたしも」
「じゃあ、ジルヴァは投票用紙を刷る印刷所を見つけてくれ」
「……了解」
「じゃあ、今日もすくすくすこやかに選挙違反していこう!」
「おーっ!」
――†――†――†――
「……で、なんでわたしだけ残されたワケ?」
選挙ギャング未出陣のツィーヌがぶうたれる。
「そりゃおれの身の安全のために」
というのも、ヨシュアとリサークがお互いの脚を引っかけようとしながら、こちらへツカツカ歩いてくる。ツィーヌがいなかったら、おれ、間違いなくレイプされるもん。
「しょうがないわねえ。じゃあ、センキョサンボーってことで残ってあげる」
「また面白い言葉知ってるね」
ヨシュアとリサークは自分たちで公約を考えたらしい。
曰く――、
一日三十回愛していると言う。
寝るときは必ず膝枕。
嫁姑戦争が勃発したら無条件で嫁側に参戦。
いつでも好きなとき好きな場所でぎゅっと抱きしめる。
「うん。まあ、いいんじゃない?」
「ちょっと、マスター! 本気!?」
ヨシュアとリサークは喜び勇んで、街宣に出かけた。
「あーあ、どうなっても知らないわよ」
「ツィーヌ、あの公約には主語がない。おれとは限らないだろ? 少女たちはころりと騙される」
「まあ、最低限のガードはしてあげる」
「ありがとうございます」




