第七話 「二日目開始」
……僕はとても寝不足だ。昨日キズと別れて帰宅すると、すぐに昼飯を食い昼寝をした。しかし、昼寝から覚めると、調子にのってそのまま一晩まるまる遊んでしまった。
太陽が窓から差し込む。まばゆいばかりの光が僕の寝不足のまなこにさす、……痛いほどに。
一晩遊びながら考えていたが、一つ分かったことがある。
「キズ」、彼女は、めちゃくちゃ意地が悪いということだ。
こっちの世界に来た初日に、なにもああいった奴らを見せる必要はない、もっと和やかなスポットがあるだろう。それなのに、僕の心を折りに来る。
だから心に決めた、今日は、キズ抜きで探索してやろうと。
「でも、その前に一眠り」
僕はドサッとベッドに倒れこんだ。
しばらくして、僕は起きた。
おそらくキズの方から僕のところに来ることはないだろう、そう考えながら外出の準備を整える。そして外に出る。
空は青かった。とりあえず僕は、キズの家の方は避けて探索しようと思った。
キズの家とは逆方向に歩き出す。
「あ、おーい、ウツロー、一人で何やってるんだー?」
あの大きな声は……、僕は大体の見当がつくも一応振り返った。……やはり、軍人だ。
「おい、ウツロ、今日はキズと一緒じゃないのか?」
「あ、ああ、今日は一人で行ってみようかと思って……」
「そうか、一人で大丈夫か?」
「だって、俺も高校生だぜ。ガキじゃあるまいし」
「いや、誰かに会ったときとか、紹介しなきゃならないだろ?」
「別に一人や二人くらい無視したって……」
軍人は僕が言い終わらないうちに誤記を強めて割り込んだ。
「甘いよ、ウツロ。この世界じゃ、信頼が全てなんだ。それが無いとどんなに苦しいか分かるか? けんかでも起こしてみろ、新入りで信頼のないお前の肩を持つヤツなんて、俺やキズ、その程度だろ。相手方はそれなりに信頼をつくってるから、かなり分が悪い!」
「そんな数で通すやり方でいいのかよ!」
「この世界には法はないんだ。人を信じなきゃ、お前は救われないんだよ、ウツロ!」
なんでだよ、なんで、俺はいつも人を信じなきゃいけない状況に追い込まれるんだよ。
なんで、どんな行動を取るかも分からない他者に身をゆだねなきゃいけないんだよ。
「俺がついていく」
「え?」
「俺がついて行ってやるよ、ウツロ。キズの代わりに……」
「どうして、別にお前に得はないんだぜ?」
「得とか損じゃない。だって、昨日、会って握手したろ。だから仲間だろ、俺たち」
こんなに熱いヤツ、今まで会ったことがない。論理を超越した仲間意識。
そうか、これが、この世界で一番大切なもの。そうか、なんとなくだけど少し分かった気がする。
「ありがとう、軍人」
「別に礼はいらない。それより、そうと決まれば、とっとと歩こうぜ」
「オウ!」
軍人が歩き出す。僕は続く。
軍人の背中は、昨日見たときよりも、ちょっと大きく見えた。
すみません。都合により、しばらく休載させていただきます。
まことに申し訳ございません。