14th TARGET
【そして新しい始まり】
「私の事を知っている、だと?」
「そうそう。まあ正確には?知っている、ではなく調べたんだけどね。」
イルミナはそんな事をきょとんとした顔のまま告げる。
いったいどうやって調べたのだ。
いや、察しは付くか……、私の情報を得られるところなど1箇所だけだ。
「お前の目的はなんだ。」
「そんな事も聞くの?まあ、教えてあげるけどさ。この世界を終わらす、ナナシさんと一緒にね。」
そういえばこいつはなぜそこまでナナシに執着するのか、これも不可解な点ではある。
愛しているから、と言われたらそこまでだが。
こいつとナナシの過ごした時間など実に短く無意味に等しい。
それなのになぜそんな相手を愛すのだ。
仮にも自分を殺した相手だぞ。
こいつは確実に一度殺され、何らかの方法で生き返っている。
もしかすると、殺される事までわかった上でナナシへ近付いたのか。
「もしかして、僕がナナシさんに近付いたのが不満ですか?多分予想している通り僕は殺されるのわかってましたよ。」
「!?わかっていて尚、やつに近付いたというのか。いや、待て。それ以前にお前は私だけを調べたはずだ。どうやってナナシに辿り着いた。」
私とナナシには基本的に関係性がない。
それにやつが私を調べあげたのはナナシに出会う前だろう。
そうなるとその時点では私はナナシへの関与すら考えていなかった。
なのになぜこいつは私を調べると同時にナナシの事まで知っていたのか。
「答えは簡単だよ?」
「簡単……だと?」
「じゃ、ちょっと別の場所でお話しようか。」
そう言うとイルミナは指を鳴らし全てのクローンを消した。
それと同時に俺は別の空間へと連れていかれたのだ。
「それで何から話そっか。まず僕とナナシさんの正体かな?」
「正体だと?」
イルミナはクスッと笑うと口に人差し指当て続ける。
「そう、正体。まず、僕の正体は単純に吸血鬼じゃないよ。僕は人間、それもあの研究所にある空間移動装置を作ったのは僕。」
「な!?じゃあ、お前は元からナナシを知っていた、のか?」
イルミナは首を横に振る
「いいや、知らないよ。むしろ、ナナシの事は顔くらいしか知らなかった。僕が知ってたのはその前の部分だからね。ようするに僕の好きな人はナナシというより元の存在。北見 龍也だよ。」
この女は今なんと言った。
北見、そう言ったのか?
「北見 龍也は北見 翔也の従兄弟です、けどそんな彼がどうして存在を認識されていないのか。それは彼が使徒だからです!」
「待て、サイボーグとは言え人間の形をした使徒なんてものは使徒王になるんだぞ、そんなわけが────。」
「あるんだよねー、これが。獣人の世界にいるでしょ?半使徒の人間がさ、カラクリは違うけどナナシもそうなの。半使徒ってやつ。ただ簡単な話だよ。」
半使徒なんてのが二体もいてたまるか。
そもそもバランスで考えれば黒夢 紫月。
奴ですらイレギュラーな存在に当たる。
だが、やつは宝具により使徒化を抑えているから目を瞑っている。
だが、ナナシに関しては別だ。
奴は宝具なんて……。
「僕の機械だよ。彼の核は時間を止められてるの。だから死んで使徒化はしてるんだけど、核が止まってる以上、体の使徒化も止まってるってカラクリだよ。」
「お前は本当に人間の踏み入れていい線を超えたことをしてくれているな。」
そう言い、威圧をすると。
再びイルミナはクスッと笑い、私を小馬鹿にするかのように答える。
「それは褒めてくれてるの?」
×××
「あっちゃぁ。ダメだったっぽいね、逃げられちゃったよ。やっぱこの過去は変えられないのかもしれないね。」




