12th TARGET
【いつかの少女】
これが時間移動ですか……。
使徒王である、この私ですら気分を悪くするとは。
現に当の本人はかなりまいってるようですしね。
「時間の移動とはそんなにも苦しいものなのですか?」
「まあ……結構、ね?魔力の消費がすごいからそっちで気分が悪くなるのが大きいかな。」
魔力の消費……そういう意味では私と彼女は同胞なのかもしれないですね。
「では、奴が誕生する前に潰すとしましょう。」
「「「────目標ノ排除ヲ開始スル。」」」
なぜこいつらがここにいるのでしょう。
「朝宮 空、あなたが彼らをここへ連れてきた。なんて事はありえませんよね?」
「そんな余裕ないの、見てわかるでしょ。」
「それもそうでしたね。ならあなたはやつを消してきてください。私がこいつらの足止めをしましょう。」
どうやってここへ来たのか。
それは気になる所ではありますが、結局こいつらは消えるのです。関係なんてない。
「あっちも行けなさそうなんだけど……。」
そっちにもいましたか。
なんとなく、予想はしていましたがね。
いったいどこのどなたでしょう。。
こんな所へ……いいや、私たちの邪魔を目論んでいる、ということですか。
「話に聞いてたけど、本当に結構怖い顔してるんだね。僕ちびっちゃうとこだった。」
なんて言いながらも、ケタケタ笑い近付いてくる1人の少女がいました。
十中八九、彼女が黒幕でしょう。
「あなた、何者ですか?」
「あっはははー。名乗るほどの者じゃないんで、それはもったいぶらせてもらおっと!」
彼女はそう言って私の方へ人差し指を向けると、指先から電気が飛び出す。
それを簡単に回避しますが、私は内心すごく焦っています。
私の能力はこの環境下では非常に非戦闘向けなのです。
能力を使うことは可能です。
が、使用には大きな魔力の消費があるのでここで使うのは避けたいんです。
最悪の場合を想定して、ベストを尽くしたいのですが。
これは好ましくない。
朝宮 空さんも戦闘は出来ないでしょう。
この際ですから、この少女は放置します。
それでもって、私らのターゲットである彼のクローン達は肉弾戦でも勝てなくはありません。
なのでここは……最低限、許容範囲の魔力を使います。
「『骸兵……。』」
影から次々と白い兵士が現れる。
これが私の能力の一部です。
出来ることはこれだけではありませんがね。
これで数は同じ、少女は私が止め、骸兵にクローンは任せましょう。
「朝宮 空さん。任せますよ。最低限の戦闘は自分でどうにかしてください。」
「一応具合が悪いんですけどー……。人使いが荒いですね。べー。」
渋々ではあるが、しっかり働いてくれて助かるよ。
「さて、では君の相手は私がしよう。と、その前に今度こそ名乗ってもらえるかな?」
「いーや、だから答えない。って言いたいところだけどいいよ、教えたげるよ。」
少女は大きく深呼吸をしてから、大きく膨らむ胸部へ手を当て続ける。
「僕はイルミナ!天才発明家のイルミナちゃんだよ。」




