第十二話
ちょっと短め。
特訓二日目。
十分に休息を取ったユーカは、一日目と同じで順調に魔物を撃退していく。一日目で、20だったレベルも今では24まで上がっている。
苦戦していた魔物にも、対処できるようになっている。
さすがに二日でレベル30になるのはきついかもしれない。
だが、せめて20後半代はいきたい。
せめて……30になれなくとも、近いレベルには。
「くぅ……今度は【ライゴラス】一体に、小さいのが三体……」
昼休憩まで後もう少しというところで、またもや苦戦しそうな組み合わせ。
ライゴラスはおそらく一日目よりもレベルは高くなっている。
そして、逆側で飛び交っている【イグリ】という鳥の魔物。力のライゴラス、素早さのイグリといったところだ。
魔機使いは、発動が早いのが売りだ。
そのため、単騎では対処が難しいイグリも素早く撃退できる。
(でも……ライゴラスは気性が激しい魔物。それを、うまく利用すれば)
最小限の魔力で倒せるだろう。
「さあ、どっからでもかかってこい!!」
と、マジフォンを構えた刹那。
正面の壁がウィーンっと音を響かせ開いた。
「え?」
いったいなにが? と首を傾げる。
「……え?」
二度の驚き。
思わずマジフォンを落としそうになってしまった。なぜなら、そこから現れたのは……ライゴラスの次に苦戦した魔物。
鋭き目が煌く双頭。
ライゴラスよりは一回り小さいものの隆々とした筋肉が見える四本の足。イグリにも匹敵する飛行能力を可能とする二翼。
西大陸の辺境の地で発見された魔物。
飛行能力を持ったことで、広範囲で狩りができるようになった。
「ちょ、ちょっと……ちょっとこんなの聞いてないよ!? なんで【キマイオ】も一緒にくるの!?」
一気に四体もの魔物を相手にする。
やる気があり、レベルが上がっていても、経験不足でもわかる。これはいくらなんでも……。
「無理無理!! さすがに激し過ぎるよー!!!」
一度に襲い掛かってきた魔物達の攻撃を転がるように回避。
しばらく、追いかけっこをすることになった。
★・・・・・
「ユーカ……!」
さすがにあれはやり過ぎじゃないのか? と思ったが、ここからでは手出しが出来ない。それに、ユーカとも約束をしている。
どんな苦難があろうとも特訓をやり遂げてみせる。だから、それまで見守っていてくださいと。
「数週間前のあの子だったら、ただ逃げるだけだったかもね」
「……ああ」
メアリスの言葉に、俺はモニターを見詰め力を抜いた。
一見すると、ただ逃げ回っているだけのように見える。だが、違う。逃げ回りながらも、どうやって倒そうか考えている顔だ。
「ジェイク。全ての職業は、レベルが25になれば職業がランクアップするのはわかるな?」
「もちろんだ。最初が25で、次が55。だが、魔機使いはランクアップすることはない」
「その通りだ。しかし、ユーカちゃんは俺が出会ってきたどの魔機使いとも違う部分が多い。もしも、もしもだが。魔機使いでランクアップができたとしたら?」
魔機使いのランクアップ……歴史を記された本を見ても、そんな事例は一度もない。
しかし、本当にもしもユーカが25になりランクアップをしたのであれば。
「あ、ユーカがイグリを三体撃退したよ!」
さっきの戦法はうまい。
ライゴラスの尻尾でイグリにダメージを与え、隙ができたところに魔法を放つ。気性の激しいライゴラスを利用したんだ。
「後は、ライゴラスとキマイオだけ……」
障害物に隠れながら、慎重に戦いを進めている。
「順調に行けば、どちらかを倒せばレベルアップすることができるかしら?」
「そうだね。24になったのが昨日。そこから何十体も魔物を倒してきたから……そろそろかな」
《……よし!!》
戦法は決まったようだ。
気合いを入れて飛び出す。
最初にユーカに気づいたのは、ライゴラスだ。そして、次にキマイオが反応する。
《よいしょっと!!》
「飛んだ!」
風の魔法を発動させ飛翔した。頭上を取られたライゴラス。キマイオは飛翔能力があるため翼を羽ばたかせ追いかける。
「おお!! パンツがみえ―――ふぐっ!?」
「ウォルツ様。真面目に見てください」
「よくやったわエレナ」
風圧と、高く飛翔したためにユーカのスカートの下が見えそうになった。
いや、見えてしまった。
ジェイクも見てしまったが、表には出さず真面目にユーカの戦いを応援している。ちなみに、ウォルツはエレナからクッションで潰されている。
《ようこそ! これで一対一だね!! そしてこのまま……》
重なった。
ライゴラスとキマイオが縦に。
そして、唱えるつもりだ。
今、ユーカが使える一番火力の高い魔法を。
《くらえ!! 《シルストーム》!!!》
吹き荒れる暴風。
巻き込んだ者を魔力により形成された刃にて切り裂く。本来ならば、中級魔法なのだがユーカの固有スキル【魔攻の王】の効果により上級魔法に匹敵する威力へと上がっている。
「よし!!」
一気に強敵を撃退したことで、ジェイクも思わずガッツポーズを取ってしまう。
《わっとと……ふう》
経験値を吸収しながら、地上に着地。
「これで……」
25にレベルが上がったはず。
ユーカ自身もステータスカードを確認してガッツポーズを取っている。
「ん? ユーカの様子が……」
《あ、あれ? なに、これ。なんだか……体が……》
ユーカの体が……発光している。
こんな現象は初めてだ。
ランクアップすると言っても、ステータスカードの職業欄が変化するだけ。体に何かしらの現象が起こるということはないのだ。
「これが、魔機使いによるランクアップの現象なのでしょうか?」
光は、ユーカを包み込み、一瞬のうちに弾ける。
そこから姿を現したユーカの姿は……見ている者達全てを驚愕させるものだった。
《な、なにこれええええっ!?》
モニター越しで自分の姿を確認し叫ぶユーカ。
興奮しているウォルツ。
ほほうっと、興味ありげな表情をするメアリス。
「あれが……ランクアップした魔機使い?」
「ふむ。これは、明日の大会かなり盛り上がるね!!」
そして、いつの間にか訪れていたハージェ。
ものすごい期待に満ちた目で、モニター越しからマジフォンで写真を撮っていた。確かに、あれは別の意味で盛り上がるかもしれない。




