第九話
いつもより短いです。
明日は、ちょっと長めになるかも。
グリードゥアの中央に位置する場所には魔法使い達のための闘技場がある。
本来闘技場とは、剣や槍、斧、拳など物理的な攻撃をする戦士達が己の強さを示す場。魔法使いも出てはいいことにはなっているが、やはり魔法は出が遅いため接近されれば対処するのが難しい。
だからこそ創設された。
魔法使い達だけの闘技場が。
魔法使い達の聖地と呼ばれるグリードゥアにまずはひとつ。まだひとつだが、二つ、三つとそれぞれの大陸や国などにどんどん増やしていきたいと魔法使い達は前向きなのだ。
そして、今二日後の大会へ向け運営は大忙し。
なにせ、今大会は魔機使いのみの大会。
今までは魔法使い、魔機使いの混合だったが。今回初めての魔機使いだけ。魔機使いは、魔機が生まれてから追加された特殊な職。
マジフォンを有することで、本来遅めの魔法詠唱を破棄。レベルではなく、金を使うことでスキルを購入。
人々は最初不思議に思っていた。
魔機の誕生。
マジフォンの誕生。
魔機使いの……誕生。
まるで、新時代を築き上げるために新たなものが次々に誕生していった。本来、職やレベル、スキルシステムは神により創られしもの。
だから、魔機使いという職も神が魔機を生み出したのを天から見て、生み出したものだとすぐに受け入れた。
受け入れたが……それでも謎が多い。
謎多き職だからこそ、確かめたいことがある。そのための魔機使いだけの大会なのだ。
「それにしても、なぜ今更こんな大会を開いたのでしょうか?」
「んー?」
メガネをかけた少女が資料を整理しながら、ぼそりと呟く。
彼女も魔法使いの一人で、魔法闘技場の運営の一人。
共に資料を整理している気だるそうな表情をしている女性が反応する。
「だってそうじゃないですか。魔機使いはもう何十年も前から存在しています。そして、魔法闘技場も、建設されて二十年近く……確かに、謎多き職だとは思いますけど。別に分けなくてもいいと私は思っています」
彼女の意見に、女性は真っ赤な長い髪の毛を乱暴に掻きながら資料を置き語っていく。
「他の魔法使い達も同じ意見を言っていたっけなー。けどさー。面白そうじゃん?」
「お、面白そう?」
女性の言葉に、少女は呆気に取られてしまう。
「今までは、そこまで触れなかった謎の職。その職の謎を解明しようと、大会を開いて研究する。あたしからしたら、考えただけでうずうずしてきちゃうけどなー」
「そんな、ものなんですかね?」
「そういうもんさねー。うんしょっと」
椅子から腰を上げ、その場で背を伸ばす。
羽織っている白衣のポケットから棒つきの飴を取り出し口に入れたまま歩き出した。
「どこへいかれるんですか?」
まだ資料が全て片付いていない。
共に始めたが、女性はサボリサボリでやっていたため、少女の倍以上残っている。
「今ね、ちょーっと面白いことをやっているみたいだから、観察にいってくるんだよー」
「ええ!? こ、この資料の山はどうするんですか!?」
「代わりにやっててよー。後で、お昼奢るからさー」
「ま、待ってください! ハージェ先輩ー!!」
大量の資料を後輩に任せて、どこかへと言ってしまう女性。
名をハージェ=ロードリア。
魔法研究の研究員にして、レベル80代の魔法使いが一人である。
★・・・・・
「あ、あれがライゴラス……」
順調に魔物を倒し、経験値も得ていったユーカの前に姿を現した魔物。
今までの魔物が下っ端のように思えてしまうほどのオーラを放っている。
資料でも見ていたが、この魔物がもう登場とは……とマジフォンを握り締める力も自然と強まる。
「でも、負けない!!」
襲い掛かられる前に、こちらから動く。
距離を取ってはダメだ。
背を向けてしまえば、ライゴラスは迷いなく襲い掛かってくる。そして、ライゴラスの特徴は鉤爪のような牙と鞭のような二本の尻尾。
正面で戦えば、牙と爪の餌食。
背後に回りこんでも、尻尾で反撃を受ける。
だからこそ、ライゴラスと戦う時は……。
「ここ!」
攻めていくユーカを捉えんとばかりに、丸太のように太い腕を振り下ろしてくる。それをギリギリのところで回避。
飛び込んだのは、ライゴラスの真横。
尻尾の届かない範囲。
その巨体では、すぐに反応できないところ。
「《フレア》!!」
ライゴラスに辺り、爆発を起す。
撃退は……できていない。
ダメージはあるようだが、やはり今までの魔物とは違う。
「グルルルル……!」
「やっぱり、フレアじゃダメか」
予想はしていたが、この魔物相手には初級魔法一発では撃退が無理のようだ。
「特訓が始まってまだ三十分も経っていないけど……仕方ないよね」
一撃を受け、明らかに怒っているライゴラスと睨み合いながらユーカは、魔力を練り上げる。
「言っちゃおう。中級魔法を!」
このライゴラスを倒して、休憩時間まで魔力を温存できる相手が出てくることを願って。