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第六話

 グリードゥアを移動すること、十分。

 ジェイクの予想通り、ウォルツの屋敷は高い場所にあった。とはいえ、険しい坂道などはなく、途中からは転移魔法陣で一気に移動したのだ。


「ここが俺の屋敷だ! どうだ!! 爽快だろう!!」

「……ジェイク。正直に言いなさい」

「なんだ?」

「メアの屋敷のほうがすごかったでしょ?」

「……そうだな」

「え!?」


 確かに、目の前にある屋敷はかなりの大きさだ。

 しかしながら、メアが住んでいる屋敷に比べれば、そこまでのものではない。ウォルツが住んでいる屋敷は、一言で言えば、よくある屋敷だ。


 それに比べてメアが住んでいた屋敷は、要塞。

 大きさも、二倍ぐらい違う。

 もし、メアの屋敷を最初に見ていなければ、驚いていただろうが。


「うーん、そう言われるとあっちのほうがすごいかなー」

「ね、ネロちゃんまで!?」

「メアさんのところは窓なかったもんね」

「窓がないんですか!?」


 ユーカの言葉に、エレナも思わず驚きの声を上げてしまう。正確には、外からは窓がないように見えているだけで窓はしっかりとある。

 あの屋敷は、メアにより魔改造されている。

 この屋敷に、何かあの屋敷を越えるあっと驚く仕掛けがない限り、ジェイク達の心は簡単には動かないだろう。


「メアさんって、あの魔機技師の?」

「ええそうよ。まあ、あの人の話は今はいいのよ。ウォルツも、固まっていないで早く中に案内してくれないかしら?」


 ハッと我に返ったウォルツ。

 エレナと共に、屋敷の中へと先に入っていく。中に入ると、すぐ目に入ったのは……おそらくウォルツの肖像画だろう。

 ものすごい決め顔でポーズを決め、椅子に座っている。


 黒い髪の毛だが、金色も混ざっているという変わった毛の色をしている。

 肌色がほとんどない燕尾服のようなものを身に纏い、マントを羽織っている。


「相変わらず、趣味悪いわね」

「何を言う! 俺の屋敷なのだ! 俺の肖像画を飾って何が悪い!!」

「それにしても、入ってすぐはないでしょ」

「これがウォルツなんだ。へぇ、なんだか大人って雰囲気あるね」

「騙されちゃダメよ。どうかっこつけていても中身は変態なんだから」


 屋敷に入るなり、メイド達は失礼しますと言って屋敷の奥へと姿を消していった。エレナとセレナはまだ残っている。

 他のメイド達は、ジェイク達を持て成すため、準備をしにいったのだろう。


「ふ、ふっ。慣れれば、メアリスの言葉もどうってことはない。さあ! 先ほどの話の続きをするために客室へ向かおう!!」

「畏まりました。では、ジェイク=オルフィスご一行様。私についてきてください」


 先ほどの話とは、魔法闘技場のことについてだろう。

 ウォルツから提案されたのは、大会に出るためレベル上げをする特訓。ウォルツが考えた特訓を受けるか受けないか。

 だが、大会は二日後という。

 いったいどれほどの特訓を重ねるというのだろうか。


 屋敷の右側へと進み広々とした客室にエレナ、セレナ以外が着席し話し合いが始まる。真ん中の席には……いや、真ん中のテーブルにはウォルツが座っている。

 姿の都合上、椅子に座ると周りから見えなくなってしまう。

 行儀が悪いことではあるが、これは仕方ないことなのだ。


「さて、ユーカちゃん。さっきの続きだけど、どうだ? 俺の特訓を受けるというのは」

「あのー、受けるにしてもどのような特訓なんでしょうか? 大会は、二日後なんですよね? その二日で、どれほど強くなれるとか具体的なことを教えて頂けないでしょうか?」


 うむ、もっともな意見だなと頷くとエレナが端末を操作しモニターを用意する。

 そこに現れたのは、色んな数値。

 例えば15から20。

 例えば30から38と表示されている。


「これは?」

「実際、俺の特訓を受けて二日でレベルがどれだけ上がったかのグラフだ」

「すごいね。二日でレベルが8も上がるのは」


 この辺りの魔物のレベルはここまで来る時にざっと確認した。一番高いレベルで28だ。15ならば、頑張れば二日で20まで上がることはできるだろうが……30代からは難しいかもしれない。


「こいつらは今では更にレベルを上げ世界に旅立っている。そして、これが俺の特訓内容だ!」


 ぴっと端末のボタンを押すと画面が切り替わる。


「これって……魔物?」

「でも、この辺りでは見ない魔物だね」


 映っているのは、明らかにレベルが違う魔物の姿。

 が、ジェイクは知っている。

 世界中を旅して、数々の魔物と戦ってきたジェイクは、画面に映っている魔物のことを。だからこそ、言わなくちゃならなかった。


「ウォルツ。この魔物達は、西大陸に生息しているはずだが? レベルも、最低でも35はあるはずだ」

「35!?」

「その通りだ。俺の特訓は、特訓施設に転移させ、その魔物達と戦わせるというものだ」

「ちなみに、特訓施設は色んな場所に設置されているんですよ!」


 なるほど。

 転移魔法により、レベルに見合った特訓施設に転移させレベル上げをするということだろう。色んな場所に施設を建設するということは、かなりの金と時間を使っているのは明白。


「す、すごいですね。じゃあ、私も特訓を受けることになったらこんな強そうな魔物達と戦うんですね……」

「君がどれぐらいレベルを上げたいか。その選択による。今モニターに映しているのは、ジェイクも言ったが最低でもレベル35までのところだ」


 ユーカのレベルは20。最低でも魔物レベルは高くて25までがギリギリだろう。

 が、それはジェイクの中でのもの。

 特訓を受けるのはユーカ。

 ユーカがどれくらい強くなりたいのか。ウォルツはそれで施設を選択すると言っている。ユーカの目指すところによっては……。


「ユーカは」

「え?」

「ユーカは、大会で勝ちたい? 世界で一枚のスキルチップが欲しい?」

「……」


 ユーカは考えている。

 メアリスに問いかけられたからではない。

 ずっと、悩んでいた。

 それは、ジェイクも気づいている。今の自分が、他の魔機使い達と戦ってどれくらい戦えるのか。


「私は……大会に出る。そして勝ってみたい。今までは、ただひたすらにレベルを上げるだけで、誰かと戦いたい、勝ちたいなんて思わなかった」


 自分から進んで誰かと戦う。

 そういうことは、確かになかった。自分はまだ初心者だから。未熟だから、今はレベルを上げることが大事だとよく言っていた。


「でも、今は違う。私が、どれだけ強くなったか。どれくらい戦えるのか」


 ジェイクを見詰め、はっきりと言った。


「今まで私を育ててくれたジェイクさんに、見てもらいたい! 私がどれくらい強くなったのか!!」

「……と、言うことは?」


 今一度、ウォルツが問いかけた。


「やります。もっと強くなるために、大会で勝ち抜けるように特訓……お願いします!!」

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