第三話
遅れました! 続きです!!
魔法都市グリードゥアへと向かうジェイク達は、その途中にある湿地地帯へと訪れていた。
「ここを通るんですか?」
湿地地帯出入り口で、ユーカがしゃがみこみジェイクへと問いかける。
ジェイクは、地図に目を通しながらああっと短く頷く。
「この『バイラ湿地草原』を通るのが一番なんだ。まあ、多少通り難いところはあるだろうが」
「多少、なんですかね? 私の靴。底が薄いから水が入りまくりですよー」
ジェイクの靴は水が入りにくい皮製の靴であり底も厚いほうなので湿地もなんのその。だが、ユーカやメアリスの靴は底が薄いために少し動いただけでも水が靴の中に入ってしまうかもしれない。
「大丈夫だ。そんなこともあろうかと、底が厚い靴を買ってある」
異次元リングから、二足の靴を取り出す。
それをユーカとメアリスの足元へと置いた。
「わー、さすがジェイクさん!」
「あの時靴のサイズを聞いてきたのは、このためだったのね」
「本来なら、凡用性がある靴を常備履くのが一番なんだが……」
今までの靴から、ジェイクが買っていた厚底の靴を履いていく二人。冒険者は、世界中を旅をする。そのため、さまざまな環境の場所へと訪れるため凡用性のある靴を履くのが一番。
とはいえ、ジェイクは人の服や靴などを強制させるつもりはない。
今では異次元リングという便利な収納道具があるため、別の靴を買っておくこともできる。もし、異次元リングがなければ、靴を二足あると荷物が嵩張ってしまう。
「ちなみにこの湿地草原には、ゼリーム系の魔物が多く出現する。他にも、擬態植物も多いため気をつけたほうがいい」
「さすがに詳しいな」
「まだレベルが低い頃はここでレベル上げをしていたからな」
ジェイクの肩で、懐かしいなぁっと呟くウォルツ。
「ゼリーム系は、色んなところでも出るけど。ここにしかいないゼリームも居るって噂だよ」
「その通りだ。ここには、通常のゼリームよりもぬめぬめしたゼリームが出現する! その名も……ゼリーヌメ!!」
通常のゼリームは、ゼリーのようにぷるぷるしている。
しかし、ここは湿地地帯。
そのせいもあって、その環境に合わせた生態になってしまっているのだろう。
「出会いたくない相手ね……」
「メアリスは、グリードゥアに行ったことがあるって事はここを通ったんだよね?」
「私は、他のルートを通ったわ。こんなところ通りたくなかったから」
が、今は普通に通っている。
やはり旅をしたことで心境が変化したのか。通る度に、ぴちゃぴちゃと音を聞こえる。こんな音を聞くと、子供の頃水溜りで遊んでいたのを思い出す。
「なるべく最短でここを抜けれるようにはする。ウォルツ。すまないが、道案内を頼めるか?」
「仕方ない。俺としては、ゼリーヌメに出会い女子達がぬめぬめになった姿を見てみたかったのだが……」
「そんなの私は嫌よ。早く案内しなさい」
「と、姫は言っているのから、頼むウォルツ」
本当に、本当に残念な表情をするもウォルツはわかったと頷き、最短で抜けれるルートをジェイクの耳元で教えてくれる。
その通りに進むこと数分。
丁度半分ほど進んだところで、向こう側から近づいてくるローブを羽織った人物を発見。
「誰かこっちにくるな」
「グリードゥアから来た人でしょうか?」
方向的にはそう予想できる。
ローブを羽織っているが、下のほうからちらちらと見える布。ズボンではない。あれは、スカートの裾のように見える。
そして、ローブの上からでもわかる大きく膨らんだ胸部。
どうやら女性のようだ。
「失礼します、冒険者の皆様。少々、お話を聞いてもよろしいでしょうか?」
女性は、ジェイク達の目の前で立ち止まりフードを外す。
現れたのは、めがねをかけ髪の毛をきっちりと結び、フリルが目立つカチューシャを頭部につけた……メイドだった。
「わあ、メイドさんだ」
「話、というのは?」
「ご協力感謝します。まずは自己紹介をさせて頂きます。私は、魔法都市グリードゥアにある賢者ウォルツ様のご自宅でメイドを勤めさせて頂いております。エレナです」
深々と頭を下げ、自己紹介を丁寧にしてくれるメイドのエレナ。
話、というのはもう全員が察しがついてしまった。
魔法都市グリードゥア。
ウォルツ。
この二つのキーワードで、彼女がウォルツを探してここまでやってきたのだと。
「ご丁寧に。俺は、ジェイク。そして、こっちがユーカ、メアリス、ネロだ」
「よろしくお願いします!」
「よろしく」
「よろしくね、エレナ。ところで、エレナの聞きたい事って……ウォルツのこと?」
ネロの言葉に、エレナは目を見開き驚いたもののすぐに冷静になりゆっくりと口を開く。
「まさか、ウォルツ様のことをご存知なのですか?」
「ご存知もなにも……ねえ?」
メアリスがジェイクの肩に乗っている獣となったウォルツを見詰める。エレナも釣られて、視線を送るも首を傾げる。
「見かけない動物ですね。……いや、これは……」
何かに気づいたのか。
エレナは、じっとウォルツを見詰め続けた。
「もしや、この動物が……」
「ああ、お前の主人賢者ウォルツだ! 一週間ぶりだな、エレナ。元気そうでなによりだ」
「わ、私は元気ですが。どうなされたのですか、ウォルツ様!? 突然一週間も屋敷を空けたと思えば、こんな奇妙な動物に……」
やはり、自分の主人がこんな姿になってしまっては冷静ではいられなくなってしまうだろう。エレナを落ち着かせるため、ウォルツはジェイクの肩よりエレナの肩へと飛び移り、その小さな手で頭に触れる。
「落ち着くんだ、エレナ。俺は、確かに奇妙な動物になってしまったが。俺という存在は消えたりはしていない」
「は、はい。申し訳ございません。取り乱してしまい」
「別に構わん。それよりも、こんなところまで捜索ご苦労だったな。他のメイド達も、俺を今も探しているのか?」
落ち着いたところで、ウォルツはエレナへと問いかける。
エレナの他にもまだまだメイドはいるようだ。これは、ウォルツが住んでいるところは相当な屋敷だと考えられる。
「はい。他のメイド達は、都市内とその近辺を捜索しています」
「ここまできたのはお前だけなのか?」
「あ、いえ。もう一人、セレナもきていたのですが……」
どうやら、二人でここまで捜索しに来ていたようだ。
しかし、そのセレナという人物が見当たらない。
分かれて探しているか、それとも。
「また、迷子か?」
「申し訳ございません。少し考え事をしているうちに……」
「仕方ない。お前達。すまんが、俺のメイドの捜索に付き合ってくれ」
この辺りには、魔物も多く出現する。
それに、足場が悪いため逃げる時も足を取られてしまい転んでしまうこともある。早めに見つけ出し、合流するのがいいだろう。
「わかった。俺達に任せてくれ。ユーカ達も、それでいいか?」
「もちろんです。困った人がいれば助けるのが私です!」
「セレナ、か。あの子は、なんとなく放っておけない子だから、探すわ私も」
「僕も当然探すよ」
「というわけだ。エレナ。そのセレナって子とどの辺りではぐれたか教えてくれるか?」
「はい。畏まりました。では、ご案内させて頂きます」
合流したエレナと共に、ジェイク達はもう一人のメイドセレナを捜索することになった。エレナの様子から察するに、セレナというメイドはよくはぐれてしまうようだ。
町の中などとは違い、ここは足場も悪く魔物も出現する。
無事であるよう願い、ジェイク達はエレナの後をついていく。




