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第七十四話

久しぶり? の二話投稿です。

「……」

「いいカードは引けたかい?」


 ユーカは、カードを引き自分の手札をよく確認している。昔、やっていたとはいえもうやめている。そのうちに知らないカードが増え続けていたのは明白。

 カードの特徴、効果をしっかりと知り戦略を立てる。


 相手の魔法攻撃力は、十四。

 今自分の手札にあるカードで、十四を越えれるようにするための強化カードはない。それでも、相手は魔力を全て消費し、さらには手札もわずか一枚。


 このターンで、相手にダメージを与えられなくても、次のターンでこちらがやられることもない。

 いくら魔法攻撃力が高くても……。


「よし。強化カード【要塞の盾】を装備!」


 魔力が二つ砕け、ユーカの分身たる魔法使いには剣や槍のような武器ではなく守るための盾が装備された。


「なるほど。いいカードを引いていたみたいだね」

「盾ってことは、ユーカはまず守りに入るんだね」

「うん。このカードは、相手の攻撃を一度だけ半減できるんだ。だから……さらに!」


 もう二つ魔力を使い、強化カードを装備。

 左手に盾、杖を持っていた右手には白銀の剣が変わりに装備される。これにより、魔法使いの魔法攻撃力は合計で八となった。

 元の魔法攻撃力が二倍も差があったため、そう簡単には魔法攻撃力を超えられない。

 だが、今の手札ではだ。

 次の相手の攻撃を凌ぎ、なんとしても逆転してみせる。


「私は、これで終わりだよ」


 魔力も手札もこっちが多い。

 相手のターンで、魔力が二になるが手札は二枚。召喚できるカードは限られている。


「じゃあ、僕のターンだ。カードドロー! ……ふふ」


 セイジが引いたカードを見詰め笑った。

 まさか、この状況でまだ何かをしてくるのか? 魔力はたった二。強化できても、一か二止まり。


「いくよ。攻撃だ!」


 何も召喚してこなかった? やっぱり、何もできないんだ。でも……次のターンになれば、魔力も四に回復する。さすがにそれだけ魔力があれば更なる強化もしてくるだろう。


「例え、半減をされようとも関係ない! 僕は、急がなくちゃならないんだ!!」


 セイジの分身たる魔法使いが槍を構え、突撃してくる。

 刃へと黒き雷を纏った。


「でも、要塞の盾の効果で受けるダメージは半減になる!」

「構わない!!」


 ユーカの魔法使いは盾を構え、セイジの攻撃を防ぐ。

 半透明の光が、黒き雷から守ってくれている。マジック・ウォーは、二ダメージでライフがひとつ砕ける。

 ユーカの魔法攻撃力は八。セージは十四。

 七の差があり、本来ならば三つもライフが砕ける。だが、要塞の盾の効果でダメージは半減。つまり、ユーカが受けるダメージは三となり、砕けるのは二つ半。

 最初のターンで二つ砕かれたため、ギリギリ堪えた事になる。


「ユーカのライフが、もう一つ半に……」

「本当に容赦ないね。こっちは、初期はやっていたけど。復帰したばかりだよ?」

「ごめん。だけど、何度も言うように僕は急いでいる。復帰勢でも初心者でも、容赦はしない!」


 ゲームで戦おうという提案を呑んだのは自分達だ。

 文句を言ってもしょうがないだろうが、これはきつい。僅か二ターンでもうライフがひとつ半。もし、相手が強化カードをもう一枚召喚していたらどうなっていたことか……。


「セイジ。どうして、そこまで二階にいる雇い主のところに? そんなにも、その人が大事なの?」

「……違うよ。僕は、僕達は故郷を……いいや、君達は敵だったね。僕のターンは終わりだ。次のターンで、確実に仕留める!」


 まだ出会ったばかりで、彼のことを全然知らない。

 だが、これだけはわかる。

 彼は、争いというものが嫌いだと言うことを。二階から感じる禍々しい魔力。こんな魔力を放つ者に、従う理由は……。


「ネロ。大丈夫だよ」

「ユーカ?」

「私は、負けない。だって、ここで負けたらかっこ悪いし……ジェイクさんにも顔向けできないから!」


 今、この屋敷のどこかでジェイクは他の侵入者と戦っているはずだ。

 そして、絶対勝ってこっちと合流する。

 その時に、自分が負けていたら恥ずかしくて真っ直ぐ見られないだろう。成長した自分を、ジェイクに見せてやりたい。

 出会った時とは違うってところを。


「ここから逆転をするっていうのかい?」

「もちろん。言っておくけど、私。結構、諦めが悪いんだよ。それに、こんな状況で、逆転しちゃうって考えただけでわくわくしない?」

「……確かに、絶望からの一発逆転は、気分がいい。でも、できたら、の話だけど」


 マジック・ウォーは、手札がよければ一瞬にして決着がつくことだってある。もし、ユーカが、要塞の盾を引いていなければ、あの攻撃で終わっていた。

 本当の戦いも、ゲームも、何が起こるかわからない。


「やってみせる!」


 意を決し、カードを引く。

 じっと、引いたカードを見詰め沈黙。何を引いた? と目を細めるセイジ。


「……魔力を五つ使い」


 くすっと小さく笑い、ユーカは引いたばかりの強化カードを魔法使いの背後に召喚。

 青白い粒子は魔法使いを包み込み、光の繭を形成。

 それは一瞬のうちに砕ける。

 中から現れたのは……魔法使いの新たな姿だった。


 先ほどまでは、黒いシンプルなローブととんがり帽子だったが。進化した魔法使いの姿は、白と紅が目立つ神聖なる衣服。

 とんがり帽子もなくなり、長髪だった髪の毛はツインテールに変化。

 動きやすいスカート姿になり。紅色のマントを靡かせ、剣をセイジへと突きつけた。


「強化カード【スカーレット・ナイト】」

「スカーレット・ナイト……確か、その効果は!?」


 セイジが動揺している。

 自分で作ったからこそ、カードの効果を知っているからこそ驚きを隠せない。この状況で、引いてしまうとはと。


「装備した魔法使いの魔法攻撃力を、五上昇させ……自分の強化カード一枚を取り除くことで、相手の強化カードを一枚破壊する!!」

「それって!」


 ネロも理解している。

 相手の強化カードは一枚しかない。ユーカは、剣の強化カードを取り除き。びしっと指を差す。


「そうだよ! 相手の強化カード。【魔界の闇機グリザルド】を破壊する!!」


 魔法使いは、剣を紅蓮の炎へと変換。

 狙いを定め……放った。

 炎を魔界の闇機グリザルドを焼き尽くし、破壊した。十四あった魔法攻撃力は一気に下がり、六に。ユーカの魔法攻撃力は十。


「くっ!? まさか、この状況でそんなカードを引くなんてね。正直、驚いたよ」

「ここからだよ。私の逆転は!!」


 杖を構え、魔力を集束させる。

 まだ、終わっていない。

 ここから、勝ってみせる。笑顔で、ジェイクとメアリスと合流できるように。

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