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第七十三話

「戦う前に、名乗っておくよ。僕は、セイジ=ローディア。君たちは?」


 メアの屋敷に侵入してきた敵。 

 その一人は、自分達とあまり歳が変わらないように見える少年。テーブルを間に、向き合っている。まずは、様子見とばかりにネロが先陣を切る。


「僕はネロ。そして、こっちがユーカだよ。セイジ。君は、どうしてここに?」

「安心してほしい。僕の狙いは、ここの主メアさんの命じゃない。まあでも、僕達を雇った人は、わからないけどね」


 セイジがネロの問いに答え終わったと同時に、二階から異様な魔力を感じ取った。二階では、もう何かが始まっている。

 それは、ユーカにもわかるほどとても強力な力。


「ネロ。メアリス達、大丈夫かな?」


 小声で、心配そうに問いかけてくるユーカ。

 気配を感じる限り、二階に居る敵は一人。そして、こちらは三人。数も質もこっちは劣っていない。むしろ、相手をするのはメア、メアリス、アリスの三人。

 簡単には、倒せない組み合わせだ。


「大丈夫だよ。僕達は、僕達の役目を果たそう」

「そうだね……」


 そうだ。あの三人の実力なら大丈夫だ。

 アリスはまだ未知数だが、メアリスの実力は理解している。そして、そのメアリスのクローン元であるメアも……。


「どうやら、他のところでも交戦が始まったようだ。僕も、役目があるから手早く君達を倒させて貰う」


 カードの束に置いた手に魔力を込める。

 それは、カード全体に伝わりテーブルに刻まれている紋様が輝く。


「さあ、どっちが僕と戦うんだい?」


 セイジは、魔力を込めたカードを五枚勢い良く引く。

 カードは空中で静止し、彼の盾かのように並んでいる。


「……私が行く」


 前に出たのはユーカだ。


「このゲームなら、友達と何度もやったことがあるからやり慣れてる。ネロ、ここは私に任せて」

「うん。任せた。正直言うと、ゲームは全然触ったことないから僕、自信がなかったんだ」


 伊達に、学生生活を謳歌していたわけじゃないとユーカは表情を引き締める。

 冒険者になると決めてからは、娯楽にはそれほど触れてはいなかった。


「これって、六年前に流行ったゲームだよね?」

「そうだよ。今では、他のゲームに圧倒されてやっている人は少ない。けど、僕は好きだ。だから、こうして専用の台もカードも持っている。あ、それと安心してほしい。用意されているデッキは、同じデッキだ。つまり、扱うプレイヤーの腕次第で勝敗が決まることになる」


 六年前に流行ったカードゲーム。

 マジック・ウォーは、発表された当時はものすごい勢いで人気が広がっていった。その理由は、コンパクトな爽快感。

 ギリギリ二人で食事ができるほどのテーブルの中で行われるのは、擬似的な魔法対戦。

 その中で行われるバトルに人々はわくわくが止まらなかった。


「準備完了だよ」


 ユーカもセイジ同様カードを五枚引いた。

 すると、二人の傍らにオレンジ色の小さな球体が五つ出現。これが、プレイヤーのライフ。そして、この後は、互いに攻撃を行うための分身である魔法使いを召喚する。

 更に、逆サイドには、青白い同じく小さな球体が五つ。これは今後カードを召喚するための魔力。自分のターンが回ってくる後とに二ずつ増えていく。

 ターンが、合計十ターンになれば、三ずつに増える。


「さあ、互いの分身を召喚しよう」


 互いに、五枚のカードの中から一枚選択。

 同時に、テーブルに刻まれている紋様。とんがり帽子の紋様に、召喚。マジック・ウォー専用のフィールドに流れる魔力とカードに込められた魔力が共鳴し、分身たる魔法使いを呼び出した。


「……僕が、先攻だね」

「むっ」


 フィールドに召喚された魔法使いは、二人に容姿が似ている。言葉道理の分身だ。頭上には、数字が浮かんでいる。

 ユーカが三。セイジが六。

 これが、魔法使いの魔法攻撃力となる。先攻後攻は、最初に召喚した魔法使いの魔法攻撃力が高い者となる。


「悪いけど、こっちは急いでいるんだ。早めに終わらさせてもらうよ!」


 カードの束から一枚引く。同時に、魔力は二つ増えた。

 一瞬の煌き。

 慣れた手つきで、右端のカードを手に取り魔法使いの後方にある剣と杖が交差している、四つの紋様のひとつに置く。

 魔法使いの背後にあるのは、魔法使いを強化するカードを置く場所。

 マジック・ウォーは基本魔法使いを強化し戦う。

 相手のライフを最初にゼロにしたほうの勝利となる。


「全ての魔力を使い、召喚。強化カード【魔界の闇機グリザルド】」


 セイジの魔力が全て弾け、召喚されたカードに宿る。

 その力は、魔法使いに宿り六あった魔法攻撃力が一気に八も上昇し十四となった。先ほどまで、魔法使いが持っていたシンプルな杖はなくなり、右手に収まったのは禍々しいオーラを纏いし、槍のような杖。

 ギョロリと、ユーカ達の方向へと動く大目玉。


「うっ……! いきなりそんな強力カードを……それに」

「まるで、生きているみたいだね。あの大目玉……」


 コンパクトだが、リアリティがあり、本当に生きているかのように動く。単純にして、爽快感があることから一気に人気は爆発的に広がった。

 それがマジック・ウォーというゲーム。


「言ったはずだよ。こっちは急いでいるんだって。まあでも、最初にターンは攻撃はできないから、一気に攻めるのは無理なんだけどね」

「た、助かったね。ユーカ」

「そ、そうだね。いきなりあんなものが出てきたからヒヤッとしたよ」


 ふいーっと、額の汗を払う。

 が、安堵している二人にセイジはふっと笑う。


「安心するのは、早いよ。魔力を七も払って攻撃力を上げただけだと思うかい?」

「まさか……!?」


 ユーカも昔は、マジック・ウォーをやっていた。だからこそ理解した。最初のターン攻撃ができないのに、相手の意味深な言葉。

 それは……。


「このカードは召喚した最初のターン。手札を三枚捨てることで相手のライフを二つ減らすことができる!!」

「ええええっ!?」


 セイジは、カードの束の逆側に三枚のカードを置く。

 瞬間。

 魔法使いが持つ武器に黒き雷が宿る。


「受けよ! 闇の雷を!!」


 槍を天に掲げる。

 黒き雷は、ユーカの魔法使いの頭上から一直線に落ちた。


「くうっ……!?」


 それは、プレイヤーに伝わりライフが二つ砕け散った。


「ユーカ! 大丈夫!?」

「う、うん。なんとか。でも、先攻なのに、いきなりライフを減らされるなんて。やっぱり、ゲームも進化していっているんだね」

「そうだ。発売した当時ほどの人気はないけど。ゲームは続いている。進化しているんだよ」


 ユーカが遊ばなくなってからも、ゲーム自体は続いている。

 初期プレイヤーには、予想もつかないカードが多く出ていたんだ。

 だけど。


「ライフは減らされちゃったけど。一気に魔力と手札を消費した。まだゲームの勝敗はわからない!」

「諦めない心は、ゲームもそうだけど。本当の戦いでも力になる。……ユーカ。僕はこれでターンを終了する。君の番だ。さあ、どう攻めてくるつもりだい?」


 いきなりライフを減らされたのには驚いた。 

 でも、ここから。

 まだゲームは始まったばかりだ。大丈夫だ、きっとできる。


「いくよ! 私のターン!!」


 そう信じて、カードを引いた。

あれ? 読む小説を間違ったかな、となってしまうのではと。心配してしまうスカルなスライムであった。

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