第六十八話
今更ですが、総PVが十万突破しました。
これも、いつも見てくださる読者様のおかげです。
これからも、よろしくお願いします!
メアに言われたことが気になりジェイク達はもうしばらく残ることにした。というよりも、無理やりな感じに残らされたと言ってもいいだろう。
ジェイクとしては、急ぎ創造神について知りたいことがあるため帝都に急ぎたかったが。急ぎすぎても、何にもいいことはないとメアに言われ、納得してしまう。
が、落ち着かないジェイク。
この落ち着きをどうにかしようと、剣筋の確認を込めて外で素振りをしていた。
「やあ、ジェイク」
「ネロか。どうしたんだ?」
刀を手に、ネロが笑顔で近寄ってくる。
一度、手を休めネロと向き合った。
「やっぱり、落ち着かないんだね」
「……ああ。俺は、ちょっと焦りすぎているみたいだ。そんなにすぐ奴らの居場所がわかるわけでもないのに、な」
頭では理解しているつもりだ。
けど、わかっていても創造神を倒すという重役から体が反応してしまう。剣を振っていないと、どうも落ち着かない。
「だったら、僕が相手になってあげる」
「ネロが?」
ジェイクの目の前に立ち、鞘から刀を抜き放つ。
「対人戦のほうが燃えるでしょ? それに、一度、ジェイクとは結構本気な打ち合いをしてみたいって思っていたからね」
ジェイクのため半分、自分のため半分というところか。
だとしても、素直に嬉しい。ジェイク自身も、ネロとは打ち合いをしてみたいとずっと思っていた。どんな形であれ……今は。
小さく笑み、ジェイクは剣を構えネロと対峙する。
照りつける日差し、青々とした空の下で睨み合う二人。
「あわわわ……ど、どうなっちゃうの? あの二人」
二人が対峙している場面に偶然にも見てしまったユーカ。どういう理由で、二人が対峙しているのかわからず玄関の扉越しであわあわするしかない。
「いくよ、ジェイク」
「いつでも、こいっ」
息を吸い込み、色違いの双眼を見開き距離を詰めてきた。
一度のステップで、最良の距離まで。
しかし、それも一瞬。
ジェイクの目の前から姿を消し、背後へと回り込んだ。静かに、風を切るような鋭くも激しい動きで相手を翻弄し……一閃。
「ハッ!」
弾く。
一瞬の判断がものを言う戦い。焦ることなく、冷静に背後へと回り込んだネロの剣を弾き、体勢を崩したところへ今度はこちら側から。
背後へは回り込まない、真正面からジェイクは切り込んだ。
魔力刃を使うことなく、素の剣で斜め上から振り下ろす。
「まさか、僕の初撃を防ぐなんて……さすがだよ、ジェイク!」
「その褒め言葉、素直に受け取っておく!!」
両者一歩も引かない打ち合い。
鉄と鉄がぶつかり合う鈍い音が鳴り響き、火花がさらに散る。軽い打ち合いではない。互い相手の本気を見たいかのように打ち合っていた。
「み、見えない……!? 二人の剣筋が全然見えない……!?」
扉の後ろに隠れていたユーカはいつの間にか隠れることを忘れ二人の打ち合いに目が釘付けだった。釘付けだが、目を凝らし二人の姿を追うもどう打ち合っているのか正確に見えないでいる。
「二人とも、結構本気で打ち合っているみたいね」
「メアリス……来てたんだ」
気づかぬうちに、横に並んでいたメアリス。
彼女には、ジェイク達の剣筋が見えているのだろうか?
「さっきね。それにしても、よくやるわね、あの二人」
「食後の運動にしては、激し過ぎるよね……」
「いいね。すごくいいよ!」
「俺も自分で驚いている。ここまで打ち合えるなんてな!」
戦いの中で、互いに高揚している。
いや……特にネロが明らかにジェイクとの戦いを心から楽しみ、笑っている。刀を握る手の力も自然と強くなり、さらに速度が上がった。
「―――ッ!?」
咄嗟の判断だった。
ジェイクは次にネロの剣を受ける瞬間、魔力を込め魔力刃を発現。刃をぶつけ合いながら、ネロの動きは止まる。
「ネロ、お前……」
刃をよく見れば、電気を帯びていた。
あのまま魔力刃を発現していなければ、おそらくジェイクは感電していたかもしれない。ジェイクの声にネロはハッと我に返り、刀を引っ込める。
「ご、ごめん! つい興奮しちゃって……」
「いや、大丈夫だ。それにしても、ネロ。お前、《付与》を使えたのか」
付与とは、主に武器や防具などにスキルで色々な効果を付け足すことを言う。付け足すと言っても簡単なことじゃない。
付与などの補助を主なスキルを覚えた【付与師】という魔法使いの発生職業がある。他の職業は属性つきのスキルを使用する場合、一瞬だが武器に付与する時があるが……一瞬だけ。
ずっと武器、防具に付与し続けるには付与師などの専門職でない限り難しいことだ。
「うん。僕は剣士からの発生で【付与剣士】っていうのになったからね」
「付与剣士……また聞いたことがない職業だな」
「【魔機使い】みたいなものだよ。新しい職業ってところだね。主に、武器や防具、身体に何かしらの効果を付与して自らの体で戦う。もちらん、仲間にも付与はできるよ。でも、まだそこまでいい付与効果がないから今まで、皆に使えずにいたんだよね」
新職業だけあって、まだいつどれくらいのレベルで何を覚えるのか判明していないのだろう。
「いやぁ、せめて回復系を覚えられたらいいって思っているんだけどね」
「やっぱり、この子に覚えさせちゃえば?」
打ち合いが終わり、入り込めると見たメアリスがジェイク達に提案。
それは、魔機使いであるユーカに回復系統を覚えさせたほうがいいというものだった。今のユーカはもそろそろレベル20になる。
他の魔法使いと比べると、魔力量が比べ物にならないぐらい上昇しているためもっとスキルを増やしても大丈夫なんじゃないかという判断だ。
「パーティー構成としては、ジェイクとネロが前衛。私とユーカが後衛。私は、広範囲魔法で敵を殲滅して、ユーカは攻撃魔法で敵を倒し、時には回復魔法で味方を支援。ネロの付与もあることだし。結構バランスがいいパーティー構成になるんじゃないかしら?」
確かに、メアリスの言うとおりだ。
ユーカが回復魔法を覚えることで、今までは攻撃一点なパーティーだと思っていたが、ネロが付与効果をかけられるとわかった以上、バランスとしてはいいパーティーになるかもしれない。
「ユーカ。お前はどうだ?」
「回復魔法、ですか……。覚えてみたいとは思っていますが、回復魔法系統のスキルチップって売っているところが限られているんですよね」
「そういえば、この前の町でも回復系統のスキルチップはなかったね」
やはり、回復はレアなスキルということか。
専門店でもない限り、売られてはいないのだろう。
『あー、あー。皆の衆。話がある。至急、食堂に集まってくれ。遅刻は許さんぞー。一分以内に集まるように!!』
どうするかと考えていたところ、メアの声が響き渡った。
話? いったいなんだろう。まさか、朝食時に話した来訪者についてだろうか?
「便利だよね、本当に。遠くの人に声を届ける魔機。これが広がれば、世界はもっと進化するよね!」
「そうね……めんどくさいけれど。何をしでかすかわかったものじゃないし。早く行きましょうか」
「すでに、十五秒は経ってるよ。食堂は一階だけど急がないとね」
足早に、三人は屋敷の中へと入っていく。
ジェイクも遅れず、後に続こうと剣を鞘に収め歩き出した。
「ん?」
一瞬、空間が揺れたような気がした。
足を止め、周りを見渡すも特に変わった様子はない。
「気のせい、だったか?」
「ジェイクさーん! 急がないと、遅れちゃいますよー!」
「ああ! 今行く!」
ユーカの呼びかけに、ジェイクは屋敷へと入っていく。何かが……起こっているのか? 窓から景色をチラ見しつつ、ジェイクは食堂へと急いだ。