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第六話

とりあえず、毎日一話は投稿しようと思っています。

 道具屋を訪れたジェイクは、共にパーティーを組むことになったユーカの友達であるラヴィと出会う。ラヴィはどうやら、ジェイクに憧れを抱いているらしく、店番を父親に任せて店の裏にある自宅に連れ込んでいた。


「あ、ありがとうございます! 一生大事にします!」

「いや。サインなんて書いたことがなかったから拙いもので申し訳ないけど」

「それにしても、ジェイクさんがそんなにすごい人だったなんて思いませんでした」

「あたしは、ユーカがジェイクさんと一緒にパーティーを組めたことにびっくりしているけど」


 ユーカからサインのことを教えてもらい、なんとなく感覚で自分の名前はペンで書いたジェイク。今の時代、こういうことも普通に行われているんだなぁっと勉強になった。


「えへへ。公園でばったりと出会っちゃったんだよ」

「出会った、というよりは捕まったっていうのは正しいがな。俺から言わせれば」

「なるほど。容易に想像ができるわね。どうせユーカのことだから、ジェイクさんのことを装備だけで自分と同じ初心者だと思いこんで、無理やり勧誘しようしていたんでしょ?」

「うぐっ!?」


 さすがは、友達だ。

 ユーカのことはなんでもお見通しだと言わんばかりに正確に的を射ている。呆れた表情で、淡々と言うラヴィにユーカは何も言い返せないでいた。


「すみません。ユーカがご迷惑を」

「別に迷惑じゃなかったって。今の世界のことを色々と知れて楽しんでいるからな」

「ラヴィは、私のお母さんかー!!」

「ユーカのような娘は……大変そうね」


 はあっとため息を吐くラヴィ。

 そして、悔しそうに拳を握り締めているユーカ。仲のいい友人同士だからこその会話と言える光景を見て、ジェイクはくすっと笑う。


「それよりも、ジェイクさん。どういった経緯で今の時代に? この本には、レベル100になるための試練を下されてから姿を見た者はいない、と記されているのですが」


 それを聞いてやっぱりそうなのか……と自分が死んだ時のことを思い出しながら静かに語る。

 あの試練を受けてからのことを。

 この時代に転生する時のことを……。


「つまり、俺はもうあの時精神的にも体力的にもやばかった。もう、これで終わりにする。絶対レベル100になる。その一心で、どこだかわからない山脈地帯で俺はやっと金色の蚊を切り裂きレベル100になったんだ」

「おお! やっぱりなったんですね! 本には記されていませんでしたが。多くの人間達はレベル100になったのだと信じていました!」


 ラヴィの言葉を聞いて、そんなにも信じてくれていた人達がいたなんて思わなかった。自分が、希望の星になると意気込んでいた頃は、話など聞いていなかったように見えた。

 それが、本に記されるほど心に響いていた。

 ジェイクは、感動を覚えながら語り続ける。


「まあ、結局は死んでしまったんだけどな」

「ええ!? じゃあ、今ここに居るジェイクさんは……ゆゆゆ幽霊!?」

「はっはっは。もしかしたらそうなっていたかもな。でも、今の俺は幽霊じゃない。世界の守護神であるアルス様に認められ、この姿で転生したんだ」


 改めて自分の若々しい体を全身くまなく確認する。

 肌に皺がなく、引き締まった筋肉質な体。

 視力も大分落ちていたので、あの蚊がもう少し小さければ見逃していただろう。だが、今でははっきりと小さなものでも見える。


「守護神アルス様……実在していたんですね」

「私は想像だけの神様だと思っていたよー」

「レベル100になるための試練を与えるのはアルス様だからな。俺は、信じていたぞ」


 だが、思っていた姿とはかけ離れていたから驚きはした。

 もっと、神々しく落ち着いたイメージがあったのだが、出会ってみれば悪友になれそうな見た目と性格をしていて、失礼ではあるが神様という感じはしなかった。


「でもすごいです! レベル100になったのもそうですが。アルス様と直接出会って、そのうえ認められるだなんて! やっぱり、ジェイクさんは人間族の希望の星です!」

「うわー、ラヴィがここまで興奮するの初めてみた」

「けど、今の世界にはもっとすごい奴がいるんだよな?」


 ジェイクは、ここに来る間に得た情報。

 それは、魔機というものが出来上がってから人間族もバンバンレベルが上がるようになったようだ。ジェイクが得た情報だけでも、現在レベル100の人間族は三人いるとか。


 アルスは、どんな考えをもってこの時代に転生させたのかよくわかっていない。ジェイクが死んでから百年間の中で、三人も増えたとは……。

 ジェイクの生きていた時代では、レベルを八十超える辺りからきつかったと記憶している。いくら高レベルとはいえ、人間族にはエルフ族や龍人族と違い飛びぬけた能力というものがなかった。

 それが今では、数にしたら大したことがないのだろうが三人。

 現在も、八十を越える者が増え続けているとか。


「そうですね。魔機というものが生まれてから、人間でも工夫をすれば獣人にだって勝てるようになりましたからね」

「でも、龍人族には中々勝てないけどねぇ……」

「やっぱり、百年経っても龍人族は頂点に立ち続けているってことか」


 龍人族は、人間族やエルフ族などとは違い数は少ないが能力自体は他の種族よりも優れている。魔機という便利なものが生まれてもそれは簡単には覆せないようだ。


「ですが、それも時間の問題。今となってはジェイクさんがいるんですから!」

「だよね! 伝説の男がいるんだから、負けっこないよ!」

「伝説の男って……」


 そこまで崇められると、重圧で押しつぶされてしまいそうだ。





★・・・・・





 しばらくラヴィと共に会話を楽しんだ後、ジェイクは今ある資金を確認し、必要な道具の値段も確認。ラヴィには、タダで上げます! と言ってきたがさすがにそれは商売をしている身としてどうなのかと。平等に同じ冒険者としてちゃんと金を払って買うことにすると告げ、今は街の外へ。


「こ、これをやるんですか?」


 一枚の紙を見詰め、ユーカは不安そうにジェイクに聞いた。

 街の外に出る前に、危険種として指定されている【手配書魔物】というものを発見。これは、通常の魔物とは違い環境の変化や、何かしらの影響で凶暴化した魔物をギルドが危険種と定め、腕に自信のある冒険者達に【クエスト】として募集をしていたもの。


 ジェイクも、レベル上げをしている時に世話になった。

 やはり、レベルを上げるのならばより強い魔物を求め倒さなければ高い経験値は手に入らない。経験値だけではない。

 魔物を倒すことができれば、ギルドから定められた報酬金などが配られる。

 昨日ざっと街の周辺を調べたところ、出現するのは《ゼリーム》を初めとした初心者がお世話になる魔物ばかり。


 旅に出るための道具を買うために、ジェイクが考えたのは手配書の魔物を倒すこと。

 どうやら、街の北側にある森の中にある洞穴に魔物は住み着いているようだ。

 最近になって、初心者冒険者をよく襲うようになったと書かれていた。森に出現する魔物は、街周辺に出現する魔物よりもちょっとレベルが高くなった程度で、初心者でもある程度レベルが上がっていれば突破できる難易度だった。

 それが危険種が現れたせいで、頭を悩ませている冒険者が多い。ちなみに、南方面の山脈は中級者向けの魔物が多く生息している。


「もちろんだ。こいつを倒せば、報酬金も手に入るし、ユーカのように初心者冒険者達も安心して森を抜けられるだろ?」

「……ま、まあ。ジェイクさんがいるんですから大丈夫ですよね! 私は、後ろで応援しています!」

「無理してついてこなくてもいいんだぞ?」


 レベルが高いジェイクだからこそ挑めるクエスト。 

 旅をすることになれば、嫌でも危険種に出会うことがあるかもしれないから経験は積んで欲しいと正直なところはあるが。


「いえいえ! パーティーを組んでいる以上ジェイクさんの行くところに私が行くのは当然ですよ! それにほら? 道中とかで魔物と戦えばレベルも上がるかもしれませんし! まあ今のところ、一体出会っていませんけどねー」


 言われてみればそうだな。

 危険種と戦うのはジェイクで良いとして、その道中で出会った魔物と戦いユーカに経験値が入ればレベルが上がる。

 だが、忘れてはいけないユーカの固有スキル。

 威力が二倍になるが、消費魔力も二倍になるというあれ。


(威力二倍か……)

「どうしたんですか? ジェイクさん」

「いや、ちょっと考え事をな……なあ、ユーカ」

「はい、なんでしょうか」

「やっぱり、危険種と戦ってみないか?」

「――――え?」


 ジェイクのとんでもない言葉に、ユーカは森の出入り口で思わず足を止めてしまった。

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