第六十一話
メア=ナイトゲイル。
その実体は謎に包まれているが、数々の魔機を発案し生み出した天才科学者と言われている。これは、ただの一本的な認識だ。
本来は、どうやら闇属性と風属性を得意とする魔法使いで、今年で百十にはなる長寿な存在。
「マジフォンで魔法が使えるようになったのも、彼女の提案があったからこそできたことなのよ」
「そうだったんだ……そんなすごい人のクローンってことは、メアリスも」
「あ、私は、魔機のことに関してはそこまで詳しくないわ。彼女が、魔機に興味を示したのは、私が彼女の前から離れた後だから」
とある道の悪い山岳地帯を移動しながら、メアリスはメア=ナイトゲイルに関して知っている限りを語っていく。
現在、人々が使っている魔機のほとんどをメアが発案し生み出した。その事実に、ジェイク達は驚きながらもメアリスの言葉に耳を傾ける。
本来、彼女は科学には興味がなかったと言う。しかし、突然魔機に関して詳しくなり、生活に役立つものから戦いに役立つものまで様々な魔機を発案。
開発をしている、魔法使いや科学者達も彼女に直接会ってお礼をしたいと思っているようだが、メア=ナイトゲイルとの連絡は彼女からの一歩通行なれん楽で、こちらから送っても返事が返ってこない。
どこに住み着いているのかもわからず、かなりの長生きをしていることからエルフ族で人と直接関わらないようにしているにでは? と魔機開発者達は勝手に思い始めていた。
「それで、メアって人は実際のところどんな人なの?」
「百歳を超えるなら、やっぱりエルフ族だよね。獣人だと魔法使いに向いていないし。龍人族だと、あまり人間と干渉はしないはずだし」
ユーカ、ネロが各々メアがどんな人物なのかを予想し合っているが、メアリスは首を横に振る。
「エルフもそこまで交流的な種族じゃないでしょ? まあ、その三種族のどっちでもないんだけどね、彼女は」
「え? じゃあ……人間ってこと?」
と、ユーカが問うとそれも首を横に振る。
そして、メアリスの口から出た答えは。
「魔族、よ」
「魔族って……あの魔界っていう別世界にいる?」
イルディミアには、主に人間、獣人、エルフ、龍人の四種族が存在し。その他にも、天族、魔族というに種族がいる。
エルフェリアはその天族に属しており、魔族も世界のどこかに存在しいていると言われているが発見例が極めて少ない。そのことから、二種族は別世界。つまり、天界と魔界に住み着く特別な種族だと言われえいる。イルディミアに隣り合わせているかのように、その二界はありなんらかの時空の歪みや転移によりイルディミアへやってきている。
現状は、そう言われているが実際のところは違うのかもしれない。本人に直接聞くことができれば、確実なのだが……そうもいかない。
出会うことすら稀だと言う。
とはいえ、その稀が最近は起こり二度も天族に出会った。あれは、奇跡と言ってもいいだろう。
「そう言われているわね。実際のところは、本人に直接聞いたほうが早いかもね」
そう言って、メアリスは何もないところで立ち止まった。明らかに、崖。チラッと下を見たユーカは、青ざめた顔でジェイクの傍に戻ってくる。
肌に突き刺さるような強い風を浴びながら、メアリスは魔力を込め始める。
ジェイク達は、メアリスとアリスがメアの居場所を知っていると言うことで案内をしてもらっていた。久しぶりに里帰りもいいかなっとメアリスが提案したのだ。
「……相変わらずめんどくさい術式を組み込んでるわね」
うんざりというため息を漏らしながら、魔法陣を展開。
青白い光となり集束し、人差し指に宿る。
そのまま空中で、なにか文字をなぞるように動かし……終えると、メアリスの足元から転移陣が出現。
「さ、早く入ってきなさいよ。十秒ぐらいで消えちゃうから」
「え!? ちょっ!? それを先に言ってよッ!!」
悪戯っぽく笑い先に転移していくメアリスに続き、アリス、ジェイク、ネロ、ユーカと続き何とか消える前に転移を終えた。
「はあ……間に合ったぁ。もう、メアリス! 重要なことは先に言ってよ! 下手したら、私だけ置いてけぼりだったよ!」
「転移時間が短くなっていたのよ。文句なら、転移陣を作ったメアに言って。ほら、あそこに住んでいる……というか、引き篭もっているから」
むっとしていたユーカの表情はメアが住んでいるというところを見た瞬間、驚きに変わった。
コルブーにあった屋敷とは比べ物にならないぐらい大きい。
だが、屋敷というよりも要塞? のように見える。外観の色が黒一色で、窓というものが一切ない。要塞というよりも蓋のない箱と言う表現も合っているかもしれない。
周りには、緑が溢れているが手入れをされている様子はない。
「あの中に、メア=ナイトゲイルさんが?」
「ええそうよ」
「メアリス。ここは、別空間、なのか?」
転移陣により、転移してきた場所。屋敷の周りには、草木が溢れているが山に囲まれているでもなく、壁に囲まれているでもない。
転移陣による移動でしか辿り着けないということは、誰にも知られていない孤島かこの前のようにジルハルトが造った別空間の二つ。
「そうなるわね。メアが、作り上げた彼女だけの空間。入るには、彼女が施した術式を解くしかない。解いて空間に侵入したとしても、屋敷まで辿り着くのが面倒なのよね」
「どうして?」
「屋敷に辿り着けないように色々と罠が配置されているんです。侵入者撃退用に」
かなり厳重な対策だ。
別空間に住処を作っただけではなく、屋敷まで辿り着くまでに罠を設置する。おそらく、屋敷の中にも罠が設置されていると考えていいだろう。
「でも、今回は大丈夫よ。私達しか知らないと直通の安全ルートを行くから」
さすがは、ここの出身。
彼女達の案内があれば、安全に屋敷に辿り着けるはずだ。メアリスとアリスは、互いに直通のルートをここだったかな? と話し合いながら探し回り、辿り着いたのは何の変哲のない木。
「この木にあるの?」
「ええ。この木の根元にある……あ、これね」
木の根元に生えているひとつのキノコ。
どうやら、そのキノコが道を出現させるレバーのようなものらしい。
「よかったですね、変わっていなくて」
「ええ。彼女のことだから、変えているかと思ったけれど」
安心した表情でキノコを引っ張る。
すると。
「あら? なにも起こらない」
「おかしいですね。いつもなら、この木が動いて道が開くはずなんですが」
やっぱり変わっているのだろうか? とメアリスとアリスが首を傾げていると。
「きゃっ!?」
「ひゃっ!?」
突然キノコが破裂し、白い液体が二人へとかかってしまう。
尻餅をついている二人に駆け寄るジェイク達。
「なによ、この白い液体は」
「べ、べたべたします……」
「大丈夫か二人とも?」
「タオルだよ。あ、濡らしたほうがいいかな?」
「あれ? なんか張り紙が出てきたよ」
ネロの声に、一斉に視線を向ける。
確かに、木に張り紙が一枚現れていた。書かれている内容は……。
「ざーんねん。入り口の場所は変わってるよー。さあ、どこにあるでしょーか! ちなみに、外れを引くと今みたいに大変な目に遭っちゃうぞー、だってさ」
かなりの煽りが籠もった張り紙だ。
ご丁寧に、顔文字まで書いてある。
左下には、メア=ナイトゲイルと律儀に名前まで記載しているという。
「……やってくれるじゃない、あの女……!」
メアリスには随分と効いているらしく、怒りの炎が目に宿っている。これは、簡単には辿り着けそうにはない。
メアリスがキレるのが先か、入り口を見つけるのが先か。
もし、見つけたとしてもその後も何かがありそうな気がして心配でしょうがないジェイクだった。




