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第五十九話

新章です! 今回の章は、主にメアリスが主軸となっています。

 西方にある小さな町コルブーには、誰もが忌み嫌う屋敷があった。そこの主は、夜な夜な不気味な笑いと雑音を響かせ、住民の睡眠妨害をしている。

 耐え切れない住民達は、ギルドに依頼しその屋敷の主をどうにかしてもらおうとしたが……依頼で屋敷へと向かった冒険者達は消息を絶ってしまう。


 以来、その屋敷には誰も近づくことができなくなり、屋敷周辺の住民は不眠症の者ばかりが増えていったそうだ……。


「……で、この子が屋敷の主なの?」

「そうみたいだが……子供か?」

「妖精さんじゃないかな? ほら、羽生えてるし」

「だめだよ? 人に迷惑をかけるようなことしちゃ!」


 そんなコルブーにジェイク達一行は偶然にも立ち寄っていたので、コルブーの人々を助けるため屋敷へと向かい、主らしく者を捕らえる。


 まるで、化け物のような声だった。

 何でも噛み砕きそうなデカイ口を見た。

 鋭い爪と牙、睨まれたら魔物でも怯みそうな目があった。


 などなど、コルブーの住民から聞いた話からどんな化け物かと想像しながら突撃してみれば。現実は、十歳にも満たないような小さな女の子。

 背中には、蝶のような羽が生えており、縄で縛られながらも反抗的な目で睨んでいる。


「ふーんだ。悪戯して何が悪いのよ! 人間達なんてどうせ私達妖精族にかかれば、ちっぽけな種族じゃない。この前、私を討伐に来た冒険者達も、私の幻術でちょちょいっとやっつけてやったわ!」

「その冒険者達はどこに?」

「そこから下りた地下に閉じ込めているわ」


 随分と素直に話してくれる妖精だ。

 そういうことは話さないのが普通なのだが……やはり、まだ幼いということか。冒険者が消息を絶ったのは約三日。

 食事を与えられていなければ、かなり衰弱しているはずだ。早く、牢屋から出して医者のところへと連れていかなければ。


「ユーカ、メアリス。二人は、その子を見張っていてくれ。俺とネロは、地下にいる冒険者達を救出してくる」

「はい。了解しました!」

「いってらっしゃい。早く戻ってきなさいよ。子供の相手は、苦手だから」

「あんただって、子供じゃない! なに大人ぶってるのよ!!」

「ふっふっふ。見た目で判断しないことね。私は、かなりの大人よ?」


 そういえば、メアリスは自分のことをあまり話さない。

 見た目は、ユーカよりも年下に見えるが、言動などが明らかに長生きをしているかのようなもの。


「だったら、私もそうよ! これでも私は五十年は生きているんだからね!」

「へぇ。たった五十年なの。じゃあ、まだ子供ね」

「な、なんだとー!?」


 メアリスと妖精のやり取りを背に、ジェイクとネロは木製のドアを開け、石造りの階段を下りていく。


「メアリスって、何者なの? ジェイク」


 階段を下りている最中、ネロがふと問いかけてくる。

 何者、か。

 出会った当時から何度も考えていたが、未だに何者なのかははっきりとわかっていない。ただ、闇属性を操る特殊職業を持った少女、ということしかわかっていない。


「さっきの言動からだと、かなり長生きしているってことだよね? エルフ族、には見えないよね」


 エルフであるのなら、耳が尖っているはずだ。

 だが、メアリスの耳は丸みを帯びた人間と同じ耳。獣人族も龍人族もかなり長寿な種族だが、それぞれ特徴的な部分があるため見分けがすぐつく。

 ジェイクが知っている特徴から見ても、メアリスは獣人でも龍人でもない。


「俺も、さっぱりなんだ。出会ってから、自分のことと言ったら、闇属性が好きとかそういうことばかりだったからな」


 階段を下りて、辿り着いたのは鉄のドア。

 鍵はかけられていないようだ。

 ジェイクはドアノブに手をかけ開けると、四つの牢屋の中のひとつに捕らえられたであろう冒険者達がぐったり……はしていなく、なんだか普通に元気な姿で入っていた。


「おお! 助けが来たぞ!」

「はぁ……やっと出られる。三食パンとスープの生活もお別れだな」

「食事を与えられていたみたいだね」

「根は、優しい子なんだな」


 本物の悪党ならば、食事を与えずに閉じ込めておくか拷問などをしているところだが。助け出した冒険者達は装備類などは全て取られているが、あまり衰弱している様子はない。

 あの妖精が、ちゃんとした食事ではないが食べ物を与えていたおかげでだろう。

 悪戯好きの妖精だが、そこまでの悪ではないということだ。


「ん?」

「どうしたの? ジェイク」


 次々に冒険者が出て行く中で、最後の一人。

 髪の毛が長く目が少し隠れてしまっている少女を発見。髪の毛の色、そして身長。目の色……顔つき。似ている……いや、まさかそんな。

 牢屋から出ようとする少女は、何もないところで転んでしまう。

 それをジェイクは抱きとめた。


「す、すみません」

「いや。……」


 抱きかかえたまま少女の顔をじっと見詰めるジェイク。ずっと見詰められていることに少女は、頬を赤く染め視線を逸らす。


「ちょっと、救出をしたなら早く戻ってきなさいよ。あの妖精、うるさくてしょうがないわ」

「―――あ」


 待ちきれなくなり、メアリスが地下室に下りてきてしまった。

 ネロがごめんねっと謝ると同時に、牢屋に閉じ込められていた少女がメアリスを見て声を漏らす。


「……あなた」

「……」


 二人の少女は見詰め合ったまま、動かない。

 こうして見比べると……やはり似ている。


「メアリスー! あの妖精さんは冒険者さん達に任せてきたよー! って、あれ? ……め、メアリスが二人!?」


 雰囲気や性格などは違うが、顔や体格、髪の毛、目の色など双子と言っても良いぐらい二人は似ていた。そして、二人の様子を見る限り面識がある。

 いったい、どうなっているんだ?

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