ハロウィンパーティー
一日遅れのハロウィンネタです。
とはいえ、短いです。
「なんか、変なところに迷い込んじゃいましたね……」
「霧が深いな……はぐれないように気をつけろ。皆」
帝都へ向け旅を続けていたジェイク達は、霧が深い森の中に迷い込んでしまった。はぐれないように、いつもよりも密集して進んでいると、向こう側に光が見えた。
「なにかしら、あの光」
「僕たち以外に人がいる、のかな?」
まるで、ランプのような小さな光がゆらゆらと動いている。
「な、なんだか近づいてきていません?」
「……確かに、近づいているな」
もしかすれば、本当に自分達と同じくこの森に迷い込んだ人々かもしれない。じっと、その場に待機し近づいてくる光を待っていると……。
「え!? な、なんですかあれ!?」
「なにって……かぼちゃ?」
「かぼちゃの頭をした人だね」
姿を現したのは、子供のように小さな身長をし、顔が刻まれているかぼちゃを被った奇妙な生物。良く見ると、手はあるが胴体から離れている。
同様に、足もそうだ。
明らかに、人間ではないことは確実。
「何者なんだ?」
と、ジェイクが先陣を切り、問いかける。
「……」
かぼちゃの生物は、何も言わずついて来いとばかりにこちらの様子を伺いながら奥へと進んでいく。
「どうする?」
「……後をついて行ってみよう」
「私は面白そうだから、賛成」
「なるようになれです!」
幽霊の類はどうやら苦手なユーカだったが、勇気を振り絞ってジェイク達についていく。かぼちゃの生物は、ドンドン森の奥へ奥へと進んでいき、止まった。
そこにあったのは、何かを引っ掛ける棒状のもの。
もう一度ジェイク達を見た後、手に持ったランプを引っ掛けた。
すると霧が晴れ、森の中だというのに……立派な屋敷が現れた。
「屋敷、だね」
「あのかぼちゃはこの屋敷に私達を案内してどうするつもりなのかしらね」
すでに、かぼちゃの生物は扉の前ジェイク達を待っている。
「行ってみよう」
「そうだね。もしかしたら、楽しいパーティーとかやっていたりするかもだし」
「いやいや、こんな森の中にある屋敷だよ? 絶対なにか出るよ……」
各々屋敷の中で何が待ち受けているのかと想像しあい、扉の前まで辿り着く。
ジェイク達が来たのを確認し、かぼちゃの生物は扉を開けた。
「……おぉ」
「こ、これは……!」
「あら、なかなか素敵ね」
「わー! やっぱり、パーティーをしていたんだよ!」
屋敷の中では、仮面を被った者、とんがり帽子を被った者、明らかに魔物ような格好をした者達がテー物を囲い、楽しそうにパーティーをしていた。
「ん? これを、付ければいいのか?」
入り口で立ち往生しているジェイク達に、かぼちゃの生物は獣耳がついているカチューシャや被り物など色々と用意してくれていた。
どうやら、このパーティーに参加するにはこういうものをつけないといけない決まりのようだ。
「そういうことなら、私はこれで!」
マジフォンを取り出し、ユーカは自分の頭に猫耳を生やした。
「僕はどれにしようかな?」
「私もつけなくちゃだめなの?」
「どれをとってもいいのか?」
かぼちゃに問いかけると、無言で首を縦に振る。
パーティーに参加できように無料で提供している代物なのだろう。せっかく招待してくれたんだ。参加しないのも悪いだろう。
真面目に何をつけようかと悩んだ結果。顔の上部だけを隠す仮面を被り、メアリスはユーカによりウサギ耳を生やされ、ネロは犬耳と尻尾をつけた。
これで、パーティーに参加できる。
そう思い回りの雰囲気を見ていると……子供達が集まってきた。
「お菓子頂戴!」
「お菓子くれないと悪戯しちゃうぞ!」
「え? お、お菓子?」
そうは言われても、手持ちに菓子類はない。どうしようかと悩んでいると、かぼちゃが籠に大量のお菓子を入れて持ってきた。
その中から、適当に選び手を差し出している子供達に渡す。
「えっと……お菓子だ」
「わーい!!」
「よーし、次はあっちだー!!」
お菓子を貰い、元気に走り去っていく子供達。他の者達からも、お菓子を恵んで貰おうと走り回っているようだ。
「なんだったんでしょうね、あの子達」
「さあ……俺達にはわからないことがここにはあるみたいだな」
「ま、私達は私達でパーティーを楽しみましょう」
それもそうだ。
どんなパーティーであれ、楽しまないのは損と言うもの。
「むふふ。こういう仮装をしてパーティーをするっていうのはいいものですね。パーティーって、大体窮屈そうな服を着てやるようなイメージがあったから、こういうパーティーだったらすごく楽しいよ!」
「僕もユーカの意見に同意かな。やっぱり、パーティーは楽しいものじゃないとね! あ、あっちにおいしそうな料理があるよ。行ってみよう!」
「いえーい!!」
「本当に楽しそうね、あの二人」
前は、つけるのを拒んでいたウサギ耳を今では普通に生やしているメアリス。なんだかんだ言って、付き合いは良い。
が、ちょっと不機嫌そうなメアリスにジェイクは、近くのテーブルから持ってきた料理を手渡す。
「俺達も、俺達なりにパーティーを楽しむとしよう」
「……ええ。そうしましょうか」
パーティーを楽しむこと、数時間。
あのかぼちゃの生物が、ジェイク達の前にまた現れる。
「どうです? 楽しんで頂けていますか?」
「しゃ、喋った!?」
しかし、今度はしっかりと会話をする。空洞に響く声のようなものがかぼちゃから聞こえてくる。
「ああ。こういう格好をするのもそうだが。実はパーティー自体も初体験だったりする」
「おや? では、どうですか? 初体験のご感想は」
「楽しい。その一言につきるな」
「それはよかった。ですが、そろそろお開きの時間。申し訳ありませんが、楽しいパーティーは、閉会となります」
丁寧にお辞儀をすると、今まで居た人々がパーティー会場から居なくなっていた。
「あ、あれ? 皆はどこ?」
「それでは、また次回のハロウィンでお会いしましょう。その時は、更なるご奉仕をさせて頂きます」
指を擦る。
会場内に音が鳴り響き、眩い光が広がった。
「……外?」
「屋敷も……霧もないね」
目を開けるといつの間にか、屋敷もなく、森中に漂っていた霧もすっかり晴れていた。
「夢、だったんでしょうか?」
「……いや」
そっと、手を開く。
手に握られていたのは、小さなかぼちゃ。いつ自分の手の中に入ったのかはわからないが。さっき出来事は決して夢じゃない。
次回からは、新章かと思います。