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第五十三話

ちょっと短いです。

 転移魔法陣に入り、別の場所に転移したジェイクとフランは目の前にある看板に足を止めていた。それは、そこに書かれている内容。

 前は、木に埋まっていた石版で古代文字で書かれていて雰囲気が出ていたが……今、目の前にあるものはついさっき作りました感が出ている。


「この先、左に進めば最深部にいけるよ! だって。ジェイクくん、これ本当だと思う?」

「……」


 この先で待っている人物。

 ジェイクは、予想がついてしまった。いや、予想するまでもない。なぜなら、看板の右下にはっきりと名前が書かれているからだ。


「このエルフェリアって誰なんだろうね。やっぱり、私達をこんな目に合わせた張本人って思うのが普通だけど……ねえ、ジェイクくん?」


 自分の問いかけに反応を示さないジェイクに首を傾げるフラン。

 エルフェリア。

 この名前の人物は知っている。ファルネアで事件を起した不思議な自称五歳児天使。確かに、天使ならば常人では考えられない力を使えるだろう。

 だが……ユーカ達と離れ離れになることになったあの声。あれは、なんとなくだがエルフェリアのものではないと思っている。

 もしかしたら、役になりきっていたのかもしれないが。


(そういえば、もう一人いたな。確か名前は……ルーシア)


 エルフェリアを捉えようとした時に、間に割り込んできた騎士風の少女。この先に、少なくともあの二人が待ち受けているのは高確率である。


(それでも、何か……あるような)

「ジェイクくんっ!!」

「うおっ!? ど、どうした? フラン」


 考え事に集中していたジェイクに耳元で大声をあげるフランの表情は、とても不機嫌そうだ。


「もう、さっきから何度も話しかけているのにさ。まるで耳が遠いお年寄りみたいに、無反応なんだもん」

「す、すまん。この先に居るのがどんな敵なのか考えていたんだ」


 道案内の看板が出てきたと言うことは、もうすぐ終着点。

 石版に書かれていた真実というものが知れるはず。しかし……待っているのが、あのエルフェリアだと考えると、本当に大丈夫なのか? と首を傾げてしまう。


「ジェイクくん。良いことを教えてあげるよ」

「良いこと?」


 むふふっと笑い、勢い良く飛び出していく。


「考えていてもしょうがないよ! 先に進め!!」

「お、おい! 一人で行くのは危険だぞ!」


 慌てて、フランの姿を見失わないように追いかける。しばらく進むと、三つに分かれている道が出てくる。フランは看板に書かれていた通り、左へと曲がる。

 迷いなき走りだ。

 本当に考えずに、進んでいる。


「ジェイクくん! 光が見えたよ!」


 周りの青白い光とは違う。

 虹色に輝く光の入り口。

 感じる……この先には、間違いなく何かが居る。フランが先に入る前に、ぐっと足に力を入れ隣り合わせになるように駆けた。


「おお! 私に追いつくなんてやっぱりジェイクくんはすごいね!」

「どうも。それよりも、フラン。この先には、何かがいる。気をつけるんだ」

「気をつける、ね。うん、一応わかったって言っておくね」


 意を決し光の向こうへと駆け抜けていく。


「……いた」


 光の向こうは、あの祭壇があった部屋と同じ構造をしているが中央にあったのは玉座。そこには、ジェイクが知らない男が座っている。

 そして、その両脇にはファルネアで戦ったあの二人が。


「よく来たね! 人間! このエルフェリアちゃんを襲うとした獣めー!!」

「また会ったね。ジェイク=オルフィス。私に一撃を与えた男……」


 ジェイクを獣呼ばわりする桃色ツインテールの少女天使エルフェリア。ジェイクに一撃を貰ったことで、敵意を示している少女騎士ルーシア。

 予想は当たっていた。

 さらに、あの声の正体は玉座に座っている男だろう。


 長い翡翠色の髪の毛は、一本にまとめてあり、右目だけにレンズのようなものをつけている。真っ白なスーツ姿でバッチリきめている。


「やあ、無事辿り着けたようですね」

「お前が、俺達を呼んだのか?」


 いつでも、戦えるように体勢を整えるジェイクだったが男はまあまあっと制す。


「僕は、別に争うために君を呼んだわけではない。その証拠に、道案内も完璧だっただろう?」

「何が完璧だ。罠や魔物が大量なダンジョンな挙句、最初の道案内は肝心の進むべき道が欠けていていたぞ」


 ジェイクの言葉を聞いた男は、目を丸くしルーシアに「最初の案内を書いたのは、お前だったか?」と問いかけると、首を横に振り逆サイドのエルフェリアを指差す。

 四人の視線が一斉に突き刺さったエルフェリアは、体をびくつかせた。


「エルフェリア。どういうことだ?」

「え、エルフェリアちゃんはちゃんとやりましたよ! ジルハルト様の言う通り、古い石版と文字で案内を書きましたよ!」

「待て。僕は、古代文字で書けとは言ったが。石版までも古くしろとは言っていないぞ」

「え!?」


 どうやら、エルフェリアは指示されたことを誤認していたようだ。まだ自ら名乗っていない男ジルハルトは、ルーシアと共にエルフェリアをジト目で見詰めていた。


「ねえ、ジェイクくん。あの人達と知り合いなの?」

「まあ、中央の男は初対面だが。両脇の二人とは以前とある事件で、対峙していたんだ」

「へぇ……」


 上司に睨まれる部下のようだ。

 何か言い訳をしようと必死に頭を抱え考えているエルフェリアだが、何も思いつかない。ジェイク達は、ただただ彼らのやり取りを見ているだけ。


「……しかし、結果的に彼等は辿り着いた」

「ゆ、許された……!」


 ぱあっと明るい笑顔を浮かべるも、次のジルハルトの言葉で笑顔は消えた。


「一週間、おやつ抜きの刑に処す」

「ひいいいっ!?」


 五歳児にとっては、おやつを一週間も抜きにされると苦行なのだろう。あの反応を見る限り、かなりのダメージを負ったようだ。

 一通りのやり取りを終えたジルハルトは、さてとと前置きをし表情を変える。


「ここに来たと言うことは、お前は真実を知りたいということでいいのだな?」

「真実、というのはこの世界についてか!」

「質問に質問で返すのは感心しないな。……まあいいだろう。お前の言う通り、ここで語られる真実とはこの世界についてだ。そして、僕達は! この世界を創りし創造神様の御使いである!!」


 玉座から立ち上がり、ジェイク達を見下すようにジルハルトは叫ぶ。


「御使い? なに言ってるのあの人」

「小娘! 今、僕のことを馬鹿にしただろう!」

「うわ、すごい地獄耳……」


 ジェイクにしか聞こえないぐらいの声で話したはずが、聞こえていた。ジェイク達から、彼らまでの距離は軽く見積もっても二十メートルはある。


「いいか小娘よ! 僕は、この世界の! 創造神様の! 御使いである!! 人の何十倍も聴覚はいいのだ」

「……ジルハルト様。もう一組がきた」

「ふむ、実に良いタイミングだ」


 もう一組? ジルハルト達の視線をジェイク達も釣られて追う。そこには……ゼインとネロの二人がいた。ユーカやメアリスはどうやら一緒ではないようだ。

 それにしても……。


「お兄ちゃん……」


 あの時のような殺気ではないが、ネロが現れたことで明らかにフランの雰囲気が変わった。


「フラン……」


 奇妙な空気の三つ巴。 

 この先、どうなってしまう……。

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