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第三十九話

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100人の方が自分の小説をお気に入りとして読んでいるということ……素直に嬉しいですね。次は200人目指して頑張ります!

「宿がすぐ決まってよかったな」

「はい! でも、さすが大きいところだけあって、一部屋三人で泊まれるなんて。すごいですね。ファルネアでは、ジェイクさんが一人で部屋に泊まっていましたもんね」


 カイオル到着早々に泊まる宿は決まった。それも、一部屋三人という少し広めの部屋。ユーカの言うとおり、ファルネアでは二人部屋しかなく、ユーカとメアリスが相部屋になれば必然的にジェイクは、一人で泊まるしかなかった。

 だが、今回は大き目の宿を見つけ三人で一緒に部屋に泊まれる。泊まれるが……男として、ジェイクは女子二人と一緒に部屋に泊まることが少し心配だ。


 金や他の客人達のことを考え、相部屋したがはっきり言って女子と一緒の部屋で寝泊りするのはこれが人生初。

 年甲斐もなく、ドキドキしている。

 が、一番の年上としてみっともない姿を見せるわけにはいかないと平常心を保っていた。


「嬉しそうね、ユーカ。はしゃいで他の客人に迷惑かけないでよ?」

「か、かけないよ! 私、そこまで子供じゃないし。さあ! さっそく街探索にいこうー!」


 レベル上げは今日はなし。

 長旅で疲れているだろうと自由時間にした。しかし、今のユーカの元気を見る限りレベル上げをしても良さそうだが。

 まあいいか、とジェイクは笑う。


「私は、さっそく銭湯に行って来るわ。体をゆっくり休めたいもの」

「そっか。ユーカはどうするんだ? 俺は、これから武器屋に行こうと思っているが」


 悩んだ結果、やはり武器屋に行くことにしたジェイク。

 昔はよく剣が折れては、武器屋で新しい剣を買っていたものだ。戦いにおいて、武器は大事な体の一部と言ってもいい。

 武器だけは、大事に扱っていた。とはいえ、戦い続ければ大事に扱っていても耐久力がなくなり折れてしまうのが現実。

 壊れない武器など……存在しない。


「じゃ、じゃあ私も一緒に行きます!」

「いいのか? メアリスと一緒に体を休めなくても。あんまり無茶をすると体を壊すぞ」

「いいえ! まだまだ余裕ですよ! それに、武器屋だったら近くに魔道具屋があるってさっき案内図で確認済みです! ジェイクさんに用事が終わってからでもいいので」


 新しいスキルを覚えるために、チップの確認をするということらしい。ジェイクも、案内図は確認しているため魔道具屋が武器屋の正面にあるのは知っている。

 回復の術がない剣士だったため、魔道具は回復のための道具をよく買い使っていた。ファルネアの時は、よらなかった


「そういうことか。だったら、一緒に行こう。メアリス。そういうことだから、お前はゆっくり休んでこいよ」

「私も用事が終わったら行くから! それまで待っててね!」

「無茶言わないでよ。あなたが来るのを待っていたらのぼせてしまうわ。適度に体を休めたら私もカイオルを探索することにするから。あなたは、あなたで楽しみなさい」


 それじゃあね、と小さく手を振りさっさと銭湯がある方向へと歩いていく。ユーカとしては冗談で言ったつもりだったが、メアリスのことだろう。それをわかっていてああいう返事をしたに違いない。


「メアリスって温泉好きなんですかね?」

「さあ、どうだろうな。少なくとも、嫌いではないのは間違いないだろう。とりあえず、俺達も行こう。いつまでもここに立っていても時間を無駄に費やすだけだ」

「ですね。武器屋はここから北西の方角でしたよね?」

「ああ。ちなみに北西は、こっちだからな」


 と、少し意地悪そうに言うジェイク。

 ユーカは、ファルネアの時の方角間違いのことをまだ覚えていたようで頬を赤くする。


「わ、わかってますよ! しかもそれ、さっきメアリスにやられたばっかりなんですけど!」

「ははは。悪い悪い。一応確認のために、な?」

「なんだかだんだん十代らしくなってきましたよね、ジェイクさん」

「そうか? ……まあ、俺もせっかく若返ったんだから今の十代らしいことをしてみたいっていう気持ちはなくはないからな」


 ジェイクが、レベル上げに専念し始めたのは二十代後半頃からだった。だとしても、人間であるがゆえにレベルを高くしないと多くの魔物と戦うことは難しいと十代の頃から思っていたジェイクは、適度に十代らしい遊びなどをしていなかった。

 そもそも、冒険者になってからはやることといったら、レベル上げや素材収集。そして、クエスト。全然遊んでいなかったわけじゃない。

 だが、冒険者になってからというもの故郷を離れ生活していくためには金が必要だった。宿代や、食事代、戦闘に役立つ道具など。

 最初は本当に貧乏な生活をしていた……だから、遊ぶ余裕なんて最初はなかったと記憶している。


「なるほど……だったら、今日は、十代らしいことをいっぱいしましょう! 用事を済ませたら私がジェイクさんと一緒に遊びます! いいえ、遊びましょう!! 時間を忘れるぐらい!!」

「さすがに、夕食前には宿に戻ろうな?」

「そ、そういうノリなんですよ! ノリ!」

「わかってるよ。今のは、わかったうえでの返しだったんだがな。ほら、いくぞ」


 笑顔で先に進んでいくジェイクの後ろ姿を見て、ユーカはこう思った。


(私って……もしかして弄られキャラなの?)


 メアリスには、毎回のように弄られ。いまや、ジェイクにすら弄られる始末。もはや、このまま弄られキャラが定着してしまうのではと少し不安になってしまう。


「おーい。どうしたんだー! 置いていくぞー!」

「あ、はーい! 今行きます!!」




☆・・・・・




 ジェイクとユーカの二人と分かれたメアリスはさっそく銭湯に訪れていた。マリエッタが経営していた温泉宿とは比べ物にならないぐらいの大きさがあり、受付にも男女別々に人が配置されている。

 周りを見渡せば、お土産屋や娯楽スペース、休憩場など。

 温泉の種類も分けられているようだ。

 これは今から入るのが楽しみになってきた。


「いらっしゃいませ。お一人様ですか?」

「ええ」

「……失礼ですが、親御さんなどはご一緒ではないのですか?」


 悪気があって言っているのではないだろう。メアリスの見た目から、まだ子供だと判断したからこそ周りに誰も大人の姿がないのが気になってしまった。

 これが普通の対応だとメアリスも理解している。

 理解したうえで……にこっと笑う。


「残念だけど。こう見えて、冒険者なの。だから、旅の疲れを癒すためにここに来たのよ」


 目の前に居る少女が冒険者だと知った受付のお姉さんは、驚くも証拠とばかりに見せてきた【ステータスカード】を目にし、素直に頭を下げる。


「し、失礼しました。では、お一人様五百ユリスになります」

「はい、これ。それじゃ、仕事頑張ってね」

「ご、ごゆっくり……」


 五百ユリスを受付に渡し、メアリスは優雅に女湯の脱衣所へと入っていく。脱衣所も、広々としており年齢層はさまざま。

 若い子からお年寄りまで。一番端っこで服を脱ぎさっそく温泉へと向かう。

 温泉の種類は、普通のものから滝や泡など色んな種類がある。まずは、体や髪の毛を洗ってからゆっくり浸かっていこうと思った。


「うわぁ! 温泉がいっぱいある! どれから入ろうかなぁ……よし! あの滝のやつにしよう!」


 メアリスの横を騒がしく横切っていく蒼髪の少女。騒ぎ具合がどこかユーカに似ているなと思いつつ洗い場に向かう。

 丁度ひとつだけ空いていたのでそこに座ると……隣に見知った顔がいた。

 今は髪を下ろしているが、黒い髪の毛に大きな胸。そして、左右色が違う瞳。メアリスの視線に気づいた少女ネロは、髪の毛に大量の泡を乗せたまま硬直する。


「き、奇遇だね」

「あなた……まあ、体は女の子だから普通なんだろうけど。よく入れたわね」


 ネロの正体を知っているメアリスだからこそ言えること。

 まだ髪の毛の泡を乗せたままネロはえへっと苦笑い。


「し、仕方がないんだよ。この姿じゃ、男子のほうに入るのは色々と問題があるし……なんていうか、この姿になって一年は経っているから慣れた、て言えば複雑な感じになるけど」

「別に言い訳なんて言わなくても大丈夫よ。今のあなたは、どこからどう見ても女の子なんだから。ここで再会したのも何かの縁。温泉に浸かりながら色々と話しましょうか?」


 シャワーを浴びながら、くすっと笑うメアリス。これは逃げられないと思ったネロは、やっと髪の毛の泡を流し、笑顔で返した。


「お、お手柔らかに」

やっぱり、性別が変わるとお風呂に入るにもトイレに行くにも、色々と勝手が違うから大変そうですよね……。

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