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エピソード・ユーカ

今回は、ユーカの過去をちょっと書きました。


 ユーカ=エルクラークは、頭を悩ませていた。

 学校を卒業後、姉と同じ帝都の学園に通うことなくそのまま冒険者としてデビューしたはいいが、中々うまくいかない。

 経験も知識も他の者達よりも劣るため覚悟はしていたが……思っていた以上に、うまくいかない。


 呪文を唱えるのがめんどくさいという理由で魔科学により生まれたマジフォンを使い【魔機使い】として、冒険者になった。

 初級魔法である《フレア》を覚え、いざ戦いへ! と張り切ったは良いが、自分にある厄介な固有スキルのせいで現魔力量では、通常の魔法使いより使用回数が少ない。


 変わりに威力はあるものの、戦闘経験がまったくと言っても良いユーカにとっては、うまく魔法を当てることでさえ一苦労だ。


「むー……中々初心者冒険者が見つからないなぁ」

「別に初心者に拘らず、経験者のパーティーに入れてもらえば良いじゃない」


 幼馴染のラヴィの家に訪れているユーカは、自分と一緒に戦ってくれそうな初心者冒険者。特に前衛職の人を探しているのだが、中々いない。

 居たとしても、他のパーティーに入っており、断念。


「そうなんだけどさぁ……やっぱり、冒険っていうものを楽しみたいの! 初心者同士で、不慣れながらも魔物を協力して倒す! そしてレベルが上がり強くなっていく……達成感が体の奥から溢れていく! そういうのが良いんだよ」

「はあ。あんたって、変な拘りがあるわね。別に経験者と戦っても魔物に勝ってレベルが上がれば、達成感は得られるでしょ?」


 ラヴィは、雑誌を読みながら変な拘りを持つ幼馴染にため息を漏らす。学校を卒業して、魔物とも戦ったことがない少女がいきなり冒険者になる。

 幼馴染としては、心配なのだろう。

 経験者と一緒なら、色々とフォローをしてくれるはずだから心配する必要はない。それなのに、変な拘りを持ち、未だにレベルが上がらない。


「じゃあさ、ラヴィが一緒に冒険者をやるっていうのは? ほら、幼馴染で一緒に戦って色んなところを冒険するってなんだか青春って感じがしない?」


 ラヴィのベッドで寝転がっていたユーカはどう? と問いかける。


「無理よ。あたしは、あんたみたいに運動得意じゃないし。魔物と戦うのだって、正直怖い。それに、あたしには店を経営していかなくちゃだし」

「だ、大丈夫だよ! 冒険者になれば、多少は身体能力は上がるって知ってるでしょ? 私も、しっかりフォローするからさ! ね! ラヴィだって、えっと……なんだっけなぁ……うーんと、じぇ、じぇいなんとかさんに憧れてるって言ってただじゃん! 伝説の冒険者っていう」

「ジェイク=オルフィスさん、ね。……確かに、憧れはしてるけど。憧れてるだけよ。あたしのような貧弱な娘が務まるような甘い世界じゃないってことぐらいわかってるわ」


 あらゆる人々が冒険者に憧れ、旅に出る。

 なるだけなら簡単だ。だが、街を出て冒険をするということは魔物と戦うことになる。それだけじゃない、野盗や犯罪をしようと考えている悪の冒険者達などにも教われる事だってある。

 冒険者になり、世界を旅をしていれば色んな未知に出会えるが……同時に死といつも隣り合わせな生活となる。


「ラヴィ……」

「ま、そういうことだからごめんね。戦い以外のことだったら幼馴染として力になってあげるから」

「ラヴィー! そろそろ店番おねがーい!!」

「はーい。じゃ、あたしは店番しなくちゃいけないから。あんたも、そろそろ考えを変えたほうがうまくいくんじゃない?」


 母親に呼ばれ、雑誌を机に置き部屋から去っていくラヴィ。

 残されたユーカは、ラヴィがいないので仕方なく街へと繰り出すことに。街を歩けば、楽しそうに会話をしている冒険者のパーティーが多く見受けられる。


(考えを変えたほうがうまくいく、か……)


 とぼとぼと街を歩きながら、ラヴィの言葉に頭を悩ませる。

 今まで、自分の拘りを貫き同じ初心者で前衛職を務める冒険者を探していた。だが、そんな拘りを持って探しもう二週間も経つ。


 冒険者になり、二週間も経つのに未だにレベルは1のまま。姉には、冒険者になっていつか強くなった自分を見せるために帝都に行く! と手紙を出したのに最初の街から全然動いていない現状。

 母親は、自分のやりたいようにやれと応援をしてくれているが……。


「はあー……後、三日ぐらい探して見つからなかったらラヴィの言うとおり経験者のいるパーティーに入れてもらおうかなぁ」


 学生時代帰りに良く通っていたケーキ屋の前でユーカは眉を顰める。いつまでも、前に進まないのはダメだ。

 冒険者になったからにはやはり冒険をしなくちゃ、何が冒険者だ。


「……うん。そうしよう。でも、とりあえずは久しぶりにおいしいケーキを食べてまったりしよう!!」


 パーティーメンバー探しは明日からだ! と気合いを入れケーキ屋に入っていく。


(なににしようかなぁ)

「なあ、聞いたか?」


 ショーケースに入っているおいしそうなケーキの数々を選んでいると話し声が聞こえてきた。別に興味があったわけではないが、レジ近くの席だったため自然と耳に届いてしまうのだ。

 話していたのは、剣士の男と槍使いの男の二人。


「なにをだよ?」

「最近、世界中で色んな異変が起きてるんだってよ。それが、噂だと転生者が多くなったせいだって言われてるんだ」

「転生者って、あの死んだ奴が蘇って~ってやつか?」


 剣士の男が、ああっと頷き話を続ける。


「大抵の転生者ってのは、すげぇ力を持ってるってのは知ってるよな? その力を与えているのが神様でさ。神の力を持つ者が増えたせいで世界にも影響を及ぼしてるって噂だなんだよ」

「マジかよ。でも、俺が最近会った転生者は、何の力もないガキだったぜ? なんだか異世界来たー! とか叫んでたけど」

(転生者、か。私は一度も会った事ないけど、どういう人達なんだろうなぁ……)

「あの、お決まりになりましたか?」


 男達の話しを聞いて、つい考えてしまい店員のお姉さんの声でハッと我に返った。慌てて、ケーキを選び空いている席に座った。


「……ま、今はケーキを食べようっと。いただきまーす!!」


 明日は、より一層メンバー探しに力を入れようと決め、買ったイチゴのショートケーキをぱくりと食べるユーカであった。

次回からは、本編に戻ります。

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