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第三十五話

「ありがとう。本当に助かったよ。仕事が終わって、何か食べようと思ったら、持っていた食料をどこかに落としちゃったみたいでさ。どこかに、食べられる薬草とかキノコとかないかって探しても運が悪いのかどこにもなくて……」

「まあ、この辺りは森がないし。ずっと広々とした野原が続くところだからな」

「あっても、岩とか魔物とか食べられそうにないものばかりですもんね」

「私達も、この【ハネトカゲ】はここに来る前の森で手に入れたものだしね。それでも、人間一日や二日だったら頑張れば耐えられるはずだけど。あなた、どれくらい食べていなかったの?」


 ジェイク達のところに現れた空腹の少女。

 ハネトカゲの丸焼きを平らげ、コップに入ったホットミルクをちびちびと飲みながら頭を下げる。そこで、倒れるほど空腹だった少女にどれぐらい食べていなかったのと尋ねた。


「えーっと、五時間ぐらい、だね」

「五時間って……半日も経っていないじゃない」

「えへへ。僕、人一倍食べるんだよね。それなのに、仕事のおかげでお昼を抜いちゃってて。仕事が終わってようやく食べれる! て思ったら……食料がどこにもない。もうだめだって思ったところに、おいしそうな香りが僕をここに導いてくれたんだ」


 だが、辿り着いたは良いが目前にして倒れた。

 人一倍食べるというのなら、あれだけでは足りないだろうとジェイクは思った。いくら、ハネトカゲが普通のトカゲよりも栄養があると言っても一匹では、また。


 ぐうぅ……。


「あっ……」


 考えていると予想通り、腹の虫が元気に鳴いた。

 恥ずかしそうに、身を小さく縮めホットミルクを飲む。


「……しょうがないわね。ほら、これも食べなさい」


 まだ二齧りほどしか食べていないハネトカゲの丸焼きをメアリスが黒髪の少女に突きつける。


「で、でも、それは君の」

「いいのよ。私は、あなたと違って定期的に食べ物を摂取しなくても大丈夫だから。食べないのなら、別に良いんだけどね」


 食べるの? 食べないの? とむすっとした顔で少女の出方を待つ。ジェイクとユーカは、もっと素直に渡せばいいのに、と苦笑い。


「……ありがとう。それじゃ、遠慮なく食べるよ。はむっ!」


 コップを置き、メアリスから受け取ったハネトカゲの丸焼きを嬉しそうに齧っていく。その食べっぷりは見ていて気持ちいいと思ってしまう。


「そうだ。自己紹介がまだだったな。俺は、ジェイク=オルフィスだ」

「私は、ユーカ! そして、こっちの素直じゃない子がメアリスだよ」

「よろしく」

「んぐっ……ふう。これはご丁寧に。僕の名前は、ネロ。よろしくね」


 ぺろっと口元についた油を舐めとり、ネロと名乗った黒髪ツインテールの少女。鈴の音のような透き通った声はつい耳を傾けてしまう。

 物腰が柔らかく、とても親しみやすい。

 全体的に、黒というイメージがある。髪の毛から服まで黒が目立っているが、それよりも目がいくのが彼女の瞳。

 右と左で、色が違い右が赤で左が青。まるで宝石を填め込んでいるかのようだ。


「……黒いわね」

「え?」


 闇が好きなメアリスにとっては、ネロの黒さ加減に注目する。


「メアリスよりも黒いよねぇ。髪の毛とか染めちゃったら?」

「ふん。わかっていないわね。全身を真っ黒にすれば良いってものじゃないの。闇とは、あるがままでいるからこそ良いのよ」

「へぇ、そうなんだ。……うーむ」


 メアリスの闇へ対する愛は、対抗心が湧きあがったとしても揺らぎはしないようだ。


「ど、どうしたのかな。ユーカ」


 突き刺さる視線を感じたネロは、ユーカに問う。彼女の視線の先には、自分よりも大きな胸がある。見た目から自分と同年代ぐらいだとユーカは思っている。

 それなのに……。


「大きいなぁ……」

「あなた。そういうことは結構気にしているのね。温泉の時もそうだったけど」

「だって、同年代の子や年下の子の胸が自分よりも大きいとさ……自然とね。メアリスは気にしないの?」


 ユーカも女の子。

 やはり、同年代や年下の子よりも小さければ気にしてしまう。中には、全然気にしていないという子もいるだろうが……胸とは女の子の魅力のひとつということもあり、やはりユーカは気にしてしまうのだろう。


「別に。気にしたことはないわね。それに、私はこれ以上成長しないから気にしたってしょうがないのよ」

「え? それってどういう」

「私のことも、胸のことも今はどうでもいいのよ。それよりも私が気になるのは……あなた。血の臭いがするわね。それも動物や魔物のものじゃない。これは、人間の血」


 ユーカにとってはメアリスの発言が気になってしょうがなかったが。それと同じぐらい気になることをメアリスが発言する。

 周りの空気が一変。

 にこにこ笑っていたネロも、表情を変えた。 


「……よく、気がついたね」

「ええ。結構鼻が利くのよ、私。もちろん、ジェイクも気がついていたでしょ?」

「ああ。それも、結構最近か? まだそんなに時間は経っていないだろう」


 まったくわからない。

 ユーカは、必死にネロに近づき嗅ぐもよくわからない。先ほど食べていた【ハネトカゲ】の匂いならばするが……。


「血の臭いの嗅ぎ分けなんて、普通は簡単にはできないはずなんだけどなぁ」

「俺は、昔の経験っていうか。戦場でよく人の血を見て、自然と嗅いでいたからな。多少はわかるようにはなったって感じだ」

「私は、ちょっとした儀式をする時に人の血が必要だったの。その時にちょちょいっとね」

「そんな軽い感じで嗅ぎ分けができるようになるものなの?」

「後は、才能ね」


 血の臭いを嗅ぎ分ける才能って……嫌だな、とユーカは心の底から思うのであった。


「命を救ってくれた恩もあるし……いいよ、特別に僕の目的を話すよ。君達は、かなりの実力者でもあるようだしね」


 より一層、張り詰めた空気になる。

 ユーカは、先ほどまでの柔らかい物腰だったネロから何か異質な力を感じ取れた。心臓の鼓動が激しく脈打つ。

 ジェイクやメアリスが間にいるが、それでも止まらない。


「っと、その前に僕の正体を教えておかないとね」

「正体?」

「そう。きっと驚くよ。いや、親や友達にしか喋ったことがないからどうかは定かじゃないけど……」


 張り詰めた空気が少し和らいだ。

 ネロは、苦笑しつつ自分の正体を……明かす。


「実はね。僕は―――元は男なんだよ」

「――――へ? 男……?」


 確かに驚いた。ジェイクやメアリスですら、言葉がすぐに出ないほどに。いや、それとよりもユーカはネロが元男だと知った瞬間、悲しみに包まれた。

 それはなぜか? 理由は簡単だ。

 自分の胸とネロの大きな胸を見比べる。


(男にすら、負けるなんてええええ……!)


 落ち込むユーカにメアリスはそっと肩に手を置いた。

意見は分かれると思いますが、胸の大きさを気にしている女の子は良いと思います、自分は。

だって、作中に書きましたが胸は女の子の魅力のひとつ。胸の大きさを気にしている姿は、個人的には可愛いと思ってしまう。ちなみに、自分は貧乳も巨乳も好きです。


では、TSはどうでしょうか? これも絶対意見が分かれるでしょう。

自分ですか? 自分は……良いと思います。ラノベにも、昔からありますもんね、TSって。自分は某ツインテールラノベが好きです。

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