第二話
ども。ちょっと短いと思いますが続きです。
ジェイクは悩んでいた。
まさか、生き返った時代が百年後だったとは。アルスは、なにも言わなかった。そもそも、自分もいつの時代に生き返るのかを聞いていなかった。
だが、さすがに百年後の世界となると自分がもっている常識が通用しない可能性が高い。
まずは自分の今の状況を確認しなくてはならない。
今の自分は、十八歳ぐらいまで若返っている。
その証拠に、あの真っ白だった髪の毛が今では金髪で、肌だってつやつやだ。衣服も最低限、黒いズボンに茶色のブーツと藍色のシャツ。
腰には、よくある両刃剣がぶら下がっている。
そして、ステータス。
公園のベンチに座ったままジェイクは体に手を当て【ステータスカード】を取り出す。
「レベルは100か。本当に、100のままスタートって。実際、これからどうするべきか」
レベルはもう限界を超えている。
レベル100以上なんてのは聞いたことがない。ジェイクは、ある程度自分のステータスとスキルを確認してカードを体の中に戻す。
確認したところ所持金はなし。
装備があるだけまだマシだと思っているジェイク。この世界は百年後とはいえ、変わっていないものがあるはずだ。
ジェイクが生きていた時代では、魔物を倒すことで手に入る素材などを換金することができた。なによりも、魔物を倒すことで金が手に入る。
魔物は経験値と同時に金や素材などを落とす貴重な存在。
強ければ強いほど、落とす金は高額になり、素材のレア度も増す。ついでに、手配書に載るほどの魔物を倒せば報酬金が手に入る。
つまり、金がないのなら魔物を倒して稼げということだ。
しかしながら、魔物もそこまであまい存在ではない。
それなりの実力がない限り、挑まないのが常識だ。
「まずは資金調達だな。この街周辺で稼ぐとするか」
日が暮れる前に宿屋に泊まれて、食料を確保できるだけの金は稼がない。まずは、この街周辺の魔物がどれほどの強さなのかを確認しておこう。
人間やエルフ、龍人、獣人など種族が違えど共通して覚えているスキルがある。それは《レベルサーチ 》というもので。
目で見た魔物のレベルを見ることができる。先ほど、ステータスカードを確認しスキルサーチは残っていることはわかった。
レベル100ということで、今の軽装備でも十分に魔物は倒せるはずだ。
周りからなんだか視線を感じるが、ジェイクは全て無視して街の外へと出て行く。
広がるは、広大な草原。
真っ直ぐ進めば、山岳地帯がある。右を向けば森があり、左を向けばまた森がある。
「さて、狩りを始めるか」
剣に手を添え、やる気十分に歩き出す。
「お? 【ゼリーム】じゃないか。懐かしいのが出てきたな」
歩いてすぐ、魔物が出現した。
ゼリーのようにぷるぷるしている魔物。攻撃力や防御力があまりなく初心者がまず世話になる魔物の一体だ。
生息している場所によってその色などが違い。草原地帯などに居るのは緑。砂漠などに居るのは赤。氷雪地帯に居るのは青と結構色んなところに生息している魔物。
ゼリームが落とす素材は、薬などにもよく使われており、肌などに塗ると艶が増すとかなんとか。魔物が落とす素材を使って大丈夫なのか? と思われているが色々と実証したうえでのやっているため心配はいらない。
「レベルは……なるほど。どうやらここは比較的初心者に優しい場所みたいだな」
レベルをサーチすると、ゼリームの頭上に2という数字が表示された。レベル的に考えるとまだここは平和な地方だと考えられる。
もっとひどいところだとレベルが七十を越えているなんて当たり前なところもあった。
それに比べればレベル2など今のジェイクの敵ではない。
「さあ、稼がせて貰うぞ」
剣を鞘から抜き、ジェイクは駆ける。
それから一時間ほどが経ち、財布の中に十分な金が入った。金自体がないのに財布があったことにはジェイクも驚いたが、これで今日の宿やちょっとした食事などには困らないだろう。
「にしても、百年も経つと値が変化するもんなんだな……」
先ほど、ゼリームが落とした素材ゼリームのゼリーを換金屋に持っていったが、ジェイクが生きていた時代よりも少しだけ値が下がっていた。
それだけ、なにか代わりになるものが開発されたということなんだろうか。もう少し稼げたと思っていたのだが、これはしょうがないことと思い今は我慢しよう。
「まだ時間的に余裕がありそうだけど……宿を探して部屋を確保しておくか」
もしかしたら、宿屋に部屋が空いていない、なんてことがあるかもしれない。
まだこの街になにがどこにあるのか把握できていないから、誰かに宿屋の場所を聞くのが手っ取り早いだろう。
そう思ったジェイクは、情報を提供してくれそうな人を探す。
「……ん?」
ふと、気になる少女を目視した。
ジェイクが生き返った時に座っていた公園のベンチに明らかに落ち込んでいる様子の少女が一人。
氷のような穢れのない水色の長い髪の毛。
白いシャツに赤いスカート。黒のニーソに髪の毛と同じ水色の上着を羽織っている。フードがついており日よけ対策もバッチリな上着だな。
生地もそれなりに薄そうだ。
「……」
悩んでいる若者を見ると助けたくなるが、今は宿探しだ。
彼女に宿の場所を聞くのは、止めておこう。ジェイクは、申し訳ない気持ちでそのまま少女の背後を通り抜けようとした。
が。
「あっ」
丁度後ろを通りかかったところで、少女が後ろを向き声を漏らす。
ジェイクもそのまま気づかないフリをして素通りすればよかったものの思わず立ち止まり少女と視線を合わせてしまった。
「……」
「そ、その装備」
「ん?」
プルプルと震え、少女は見つけた! と言わんばかりに目を輝かせジェイクの手を両手で包んだ。
「君も初心者でしょ! ね、ねえ! お願い! 一緒にパーティー組んでくれないかな!?」
ジェイクは彼女の言葉でなんとなくだが察した。
この世界では、魔物を倒したりして金を稼ぎ旅をする者のことを【冒険者】と呼ぶ。おそらく彼女もその冒険者の一人で、これからというところなんだろう。
だが、一人で旅をするのが心細く同じ初心者とパーティーを組もうと。
あの落ち込みようから察するに、一緒に組んでくれそうな初心者が中々見つからなかった。だからどうしようと悩んでいたところに、ジェイクを発見し今に至る。
(どうしよう。装備が初心者風なだけで、全然初心者じゃないって……言いづらいな)
ここで初心者じゃないと言えば、彼女は先ほど以上に落ち込むだろう。目の前で仲間を見つけた動物のようなキラキラと目を輝かせている少女にジェイクは眉を顰めた。